The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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Cancelled

ポスター発表 PD(01-64)

ポスター発表 PD(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PD05] 親からみた成人の子との関係(3)

移行期の展望

松岡陽子 (大同大学)

Keywords:親子関係, 生涯発達, ケア

目   的
 子の養育=ケアを終え,親の介護=ケアが中心課題となる前の中期親子関係(春日井,1997)について検討してきた(松岡,2012,2015)。50歳代母親の娘との関係に焦点をあてた研究(1),“役割逆転”の可能性を踏まえて70歳代母親の語りの内容を検討した研究(2)に続き,ここではいずれも60歳代,そして配偶者(健在)とふたり暮らしで2人の子をもつという女性=母親3名の語った内容に注目し,考察する。
方   法
研究(1)(2)同様,回答者は43-81歳(M=62.6,SD=10.5)の女性10名,男性7名。「子(ら)との現在の関係」「過去から現在に至る関係変化のポイント(の有無)」「将来の関係の展望」を主な項目とする半構造化面接を実施し,各トランスクリプト(・フェイスシート)をKJ法(川喜田,1967 1970)に準じて整理した。
結果・考察
事例F 66歳。フルタイムで仕事をしながら,激務の夫も遠距離に暮らす自身の親も頼れないまま,長女(38歳,既婚{子ども:有}),長男(31歳,未婚{子ども:無})を育てた。学校行事にもなかなか行けず,「子どもには寂しい思いをさせたと思うけど」,振り返って「あんまり大変だったと思わない」,「楽しかった」と,Fさんは彼らの幼少期からの様々なエピソードを語った。長男は学校卒業,長女は結婚と同時に家を離れ,遠方で暮らす。普段,長男はこちらから電話をしても仕事で「いつっでもいない(出られない)」。長女との間では「電話はもうしょっちゅうかける」し,孫たちとも話す。(育児に関する話を聞くことも含めて)孫を通した交流は多いが,「(向こうにも)生活サイクルがあるし」,孫の行事等に招かれるようなときを除いて「あんまり行かない方がいいなと思って」「行かない」。長女も普段の育児を手伝いに来てくれと言ったりはしない。今後については「別に取りたててああしようこうしようなんてことは私は思ってない」。ただ,夫が急に倒れたとき「娘に言ったら即,家族で飛んで来」た。その後も「電話かけたりなんかすると“お父さんは?”って必ず聞くし」,心配してくれているようだ。
事例G 65歳。長男(40歳,既婚{子ども:有})は進学に伴い,遠方へ。会えるのは年に1回ほどだが,「1週間に1回か2回は必ず電話」で「元気でいるかって」「声かけてくる」。「そういう点では私たちは恵まれてる」。長女(39歳,既婚{子ども:有})の一家は比較的近いので,「1週間に1回(は)必ず」全員で来て,Gさんが「食事を作って」食べさせる。そして「私も1週間たまった相談事とか」いろいろと「しゃべったり,聞いたり」する。夫が「病気したときも」インターネットで調べたり,「先生の話を聞いてとか,娘が全面的に」やってくれて,「忙しいからあんまり頼れないんだけど」,「頼もし」かった。「何か重大なことがあったら」「あの子に相談しなきゃとか」「相談すればいいわって思ってる」。ただ,長女はGさんたちの「老後は私が面倒見るからって言」うが,「今(は)元気だからね,できる限りは」「頼りたくないっていうのか」「負担かけたくない」。夫の定年退職を機にこれからの生活の仕方を「どうしようって,もうそれは真剣に考え」,「家の中でくすぶらないようにしよう」と娘も含め「3人で話し合っ」て,「娘の電話」や「訪ねてくるのを待つことのな」い,今の活動的なスタイルができた。「近くにい」る娘には「こんなことしてちゃダメだよとか」「叱られることがあるけど」,「息子はそういう面がないから」か,「離れている分かわいそうかなって」感じるからか,「娘に内緒で」とにかく何か「送りたくてしょうがない」といったところもあるそうだ。
事例H 60歳。長女(35歳,既婚{子ども:無})・次女(32歳,既婚{子ども:有})とも結婚と同時に別居(現在は同市内)。次女には子どもがいるので「こっちも出向くし,向こうもよく来てくれ」,メール・電話も。「子ども(孫)の話が多」いが,「こっちも自分たちの体の悪くなったりとか,そういうこと聞いて欲しくて,健康について話して,アドバイス貰うときもあ」る。長女は有職で子どももないため頻繁な行き来はなく,やりとりは「メールが多い」ものの,やはり「健康のこととか」,「(夫の)愚痴言ったり(笑)」。たとえば就職や結婚(・離家)の時よりも,2人ともむしろ結婚してから「年数(が)経つと,考え方がだいぶん離れていったような気がし」て「ちょっと悲しいときがあり」,「仕方がないな」「そうなっていくのかなと(も)思」うが「やっぱり母親として寂しい」。また「長女には特に」「結婚した当時は」「(いずれ)一緒に暮らしてくれるのかなと」「期待してた」が,「自分たちからは言い出しにくく」,また「もし一緒に暮らした場合に何かもめていざこざができるとその時はやっぱり悲しいから今のままのほうがいいのかな」,「両方から愚痴が出るのかなぁなんて思って」,こちらからは「言わないでおこうかなと思って」いる。「子ども(長女)の方はどう思ってるのかな,なんていつも思う」が,今のところは「どうもその気配がないから,自分たちだけで将来は暮らさなきゃいけないなと思って」いるし,夫とは「そういう話はよくする」。
 FさんとGさんは夫の病気に対する娘の反応を語った。両者は将来の関係展望について一見,対照的だが,ともに子の(親への)caregiver的な態度・振る舞い方を冷静に捉えているようにもみえる。そしてGさんとHさんには,将来caregiver-caretakerとして子-親(自分たち夫婦)間に安定的な関係を維持していけるのかどうかといったことを,生じうる状況変化を念頭において懸念している(いた)ところもあるように思われた。
【付記】科学研究費(no.16730330)の補助を受けた。