The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD(01-64)

ポスター発表 PD(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PD08] 保育士による担当クラス集団の認識と保育の困難さに関する研究

平川昌宏 (東北福祉大学)

Keywords:保育, クラス集団, アセスメント

問題と目的
 保育の場において,保育者には子どもたちへの個別的かかわりと同時に,子どもたちの発達を促す集団づくりが求められる。また,障害児や「気になる」子などの特別な配慮が必要な子どもに対する保育でも,その子の属するクラス集団のアセスメントと支援の必要性が指摘されている(本郷;2006)。そこで本研究では,質問紙調査を通して保育者が認識するクラスの状態を捉え,集団活動や他児との関係づくりの困難さとの関連について検討する。
方   法
Ⅰ.調査日 2016年4月下旬~5月上旬
Ⅱ.調査協力者 調査時に3歳以上児クラスの担当経験のある,S市内の私立保育園の女性保育士10名(在職年数:平均:15.40年,SD: 7.17年)。
Ⅲ.質問紙の内容 1)クラスへの保育の困難さ 調査時もしくは,過去担当していた場合は5・6月ごろを想起してもらい,保育者のクラスに対するかかわりを示す6項目(Table 1参照)それぞれについて,どの程度困難さを感じたかを5件法で尋ねた。
2)クラスの状態 集団活動での子どもたちの様子14項目(A~D)と他児との関わり15項目(E~H)それぞれについて,項目に示す子どもたちの姿がクラスの中でどの程度見られたかを5件法で尋ねた。 
 なお,本調査での対象となったのは3歳児クラス4ケース,4歳児クラス1ケース,5歳児クラス5ケースであった。
結   果
Ⅰ.保育の困難さとクラスの状態についての評定結果(Table 1)保育の困難さについては,クラス全体での集団遊びやルール遊びの実施,障害児や「気になる」子と他児との関係づくりにおいて,比較的評定値が高くなっていた。また,クラスの状態については集団活動や当番活動に意欲・関心を示す姿や他児の頑張りや長所等を認める姿が学年当初の時期においても多く見られること、逆に、活動の切り替えに困難を示す子どもの姿が見られることが明らかとなった。
Ⅱ.保育の困難さとクラスの状態との関連(Table 2)
 クラスの状態として活動の切り替えが困難な状態(B)の場合,保育における幾つかの活動で保育者が困難を感じる傾向にあること,逆に活動意欲が高い状態(C)や子ども同士の認め合いが見られる状態(E)では困難さが軽減される傾向にあることが明らかとなった。一方で,本調査では障害児や「気になる」子どもと他児との関係づくりの困難さとクラスの状態との関連は明らかとならなかった。
考   察
 保育の困難さとクラスの状態について幾つかの関連が示唆された。今後、縦断研究や事例研究を通して両者の関連について詳細に検討する必要があると考えられる。また、障害児や「気になる」子どもと他児との関係づくりとクラスの状態との関連については、クラスの状態を捉える質問項目を見直すと同時に、障害児や「気になる」子どもの特徴を考慮しながら検討する必要があると考えられる。