[PD39] コーチングを取り入れた教育の実践と効果
プロジェクト学習の中でのコーチング教育の検討
キーワード:コーチング, 学生, 教育
はじめに
コーチングによるクライアントの目的達成には,それぞれの個性や能力,つまりその人自身と真っ向から向き合い,コミュニケーションをとる必要が生じる1)。その中では,画一的な指導や統一的な仕組みは重要視されない1)。学習者個々がもつ能力や個性を十分に引き出す関わりは,学習者の自己肯定感や学ぶ姿勢等にも影響を与えるのではないかと考える。このことからプロジェクト学習の中で,教育者が行うコーチング教育の効果を検証し,課題を見出していく。
概 要
1.対象:1学年8名,2学年2名の合計10名。
2.プロジェクト学習の目的:自ら求め学ぶという学修法を身につけ,大学における学習者としての基盤となる力を養うことを目的とする。
3.学習計画:第1段階は,1)導入:自己紹介,文献検索。第2段階は,2)~5)情報収集と課題設定,第3段階は,6)~8)課題分析,第4段階は9)~13)問題解決,第5段階は14)15)成果発表,振り返りである。2単位,60時間である。
4.コーチング教育を目指した関わりの工夫
1)コーチングスキルを用いたメンタル(活動に対する動機付けや持続的活動のための意識付け)への関わり方
2)教育者と学生が共に目標達成に向け活動していくための関わり方。
実践内容,結果7
1.第1段階:学生の個性を見つけ出し,観察日記をつけ,学生が孤立しないような他者との交流を図った。積極的に意見を言える子ばかりへの発言ではなく,言えない学生にも自然に機会を与え,じっくり耳を傾けた。小さな声や考えがまとまらない場合も,聞いてくれるという実感がもてるようにし,その後は努力して話していた。
2.第2~4段階:試行錯誤が続き,スランプ状態に陥いり,グループダイナミックスも崩れかけていた。しかし,なぜ自分達がこのテーマを設定したのかの原点に戻るアドバイスや個別の面談を行うことで,徐々に心理面に変化していった。この時から,教員という立場だけではなく,1製作員として参加し,作成しながら個々の学生のメンタルを確認し,対応することで学生の笑顔が増えた。
3.第5段階:作品を自信をもって他者に伝える訓練を先に行い,自信をもって紹介することができていた。笑顔や達成感から来る涙もあった。
結果の検証,まとめ
1.集団的な関わりの中でのコーチング教育
コーチング教育の有効性として学生の振り返りから「喜びの共有」「主体性の育成」「想像力の向上」「思いやり」のキーワードがあげられた。「喜びの共有」では,共通した認識での福祉用具の制作を通じ,達成感が生じ,「喜びの共有」が認識された。また,完成した作品を他学生との意見交換や作品を実際に使用してもらうという機会を作ったことで,他者に受け入れられた感覚や高評価により一層集団としての「喜びの共有」になったといえる。また,「主体性の育成」では,自ら発言しなかったり,行動しなければ,メンバーシップを損なうことを痛感していた。これにより,どの学生においても,振り返りシートでは,与えられた時間内に自らの意見を言えたのか,今日の役割が遂行できたのかを振り返っていた。「想像力の向上」「思いやり」では,グループの目指す目標は1つだが,各自が完成させたい作品が異なっていた。しかし各発達段階に起こり得る問題に対して,各自が真摯に向き合い,想像力を高め,思いやりをもって対象の生きていく上での不具合について向き合っていた。「喜びの共有」「主体性の育成」「想像力の向上」「思いやり」を育て上げた作品は,コーチングによる教育の成果物であったと考える。
個別や集団での学生に合わせた対応による目的達成等,コーチング教育に可能性を見出すことができたのではないかと考える。学生の心理面やレディネス等の関連性も考慮したコーチングについて,今後の課題とする。
2.個別的な関わりの中でのコーチング教育
講義開始当初は,集団の中で,交じることができずに,1人で作業する学生もみられた。教育は人間と人間のふれあいによる営みであり1),自ら主体的に発言したり,行動できない学生に対して,教員としてではなく,1人の仲間として多く交流を持つように心がけた。共に笑ったり,泣いたり,怒るという感情をあらわにした関わりをもつことで,そうした学生も制作活動に活発に行えるように変化した。コーチングを用いる上で達成する目標の一つ,「自己肯定感の獲得」1)が,学生個々の中に芽生え,学習への喜びに結びついたと考える。
参考文献
1) 末次弘明:造形教育におけるコーチングを取り入れた学習の実践と研究, 北方圏学術情報センター年報 Vol4, 2012.
コーチングによるクライアントの目的達成には,それぞれの個性や能力,つまりその人自身と真っ向から向き合い,コミュニケーションをとる必要が生じる1)。その中では,画一的な指導や統一的な仕組みは重要視されない1)。学習者個々がもつ能力や個性を十分に引き出す関わりは,学習者の自己肯定感や学ぶ姿勢等にも影響を与えるのではないかと考える。このことからプロジェクト学習の中で,教育者が行うコーチング教育の効果を検証し,課題を見出していく。
概 要
1.対象:1学年8名,2学年2名の合計10名。
2.プロジェクト学習の目的:自ら求め学ぶという学修法を身につけ,大学における学習者としての基盤となる力を養うことを目的とする。
3.学習計画:第1段階は,1)導入:自己紹介,文献検索。第2段階は,2)~5)情報収集と課題設定,第3段階は,6)~8)課題分析,第4段階は9)~13)問題解決,第5段階は14)15)成果発表,振り返りである。2単位,60時間である。
4.コーチング教育を目指した関わりの工夫
1)コーチングスキルを用いたメンタル(活動に対する動機付けや持続的活動のための意識付け)への関わり方
2)教育者と学生が共に目標達成に向け活動していくための関わり方。
実践内容,結果7
1.第1段階:学生の個性を見つけ出し,観察日記をつけ,学生が孤立しないような他者との交流を図った。積極的に意見を言える子ばかりへの発言ではなく,言えない学生にも自然に機会を与え,じっくり耳を傾けた。小さな声や考えがまとまらない場合も,聞いてくれるという実感がもてるようにし,その後は努力して話していた。
2.第2~4段階:試行錯誤が続き,スランプ状態に陥いり,グループダイナミックスも崩れかけていた。しかし,なぜ自分達がこのテーマを設定したのかの原点に戻るアドバイスや個別の面談を行うことで,徐々に心理面に変化していった。この時から,教員という立場だけではなく,1製作員として参加し,作成しながら個々の学生のメンタルを確認し,対応することで学生の笑顔が増えた。
3.第5段階:作品を自信をもって他者に伝える訓練を先に行い,自信をもって紹介することができていた。笑顔や達成感から来る涙もあった。
結果の検証,まとめ
1.集団的な関わりの中でのコーチング教育
コーチング教育の有効性として学生の振り返りから「喜びの共有」「主体性の育成」「想像力の向上」「思いやり」のキーワードがあげられた。「喜びの共有」では,共通した認識での福祉用具の制作を通じ,達成感が生じ,「喜びの共有」が認識された。また,完成した作品を他学生との意見交換や作品を実際に使用してもらうという機会を作ったことで,他者に受け入れられた感覚や高評価により一層集団としての「喜びの共有」になったといえる。また,「主体性の育成」では,自ら発言しなかったり,行動しなければ,メンバーシップを損なうことを痛感していた。これにより,どの学生においても,振り返りシートでは,与えられた時間内に自らの意見を言えたのか,今日の役割が遂行できたのかを振り返っていた。「想像力の向上」「思いやり」では,グループの目指す目標は1つだが,各自が完成させたい作品が異なっていた。しかし各発達段階に起こり得る問題に対して,各自が真摯に向き合い,想像力を高め,思いやりをもって対象の生きていく上での不具合について向き合っていた。「喜びの共有」「主体性の育成」「想像力の向上」「思いやり」を育て上げた作品は,コーチングによる教育の成果物であったと考える。
個別や集団での学生に合わせた対応による目的達成等,コーチング教育に可能性を見出すことができたのではないかと考える。学生の心理面やレディネス等の関連性も考慮したコーチングについて,今後の課題とする。
2.個別的な関わりの中でのコーチング教育
講義開始当初は,集団の中で,交じることができずに,1人で作業する学生もみられた。教育は人間と人間のふれあいによる営みであり1),自ら主体的に発言したり,行動できない学生に対して,教員としてではなく,1人の仲間として多く交流を持つように心がけた。共に笑ったり,泣いたり,怒るという感情をあらわにした関わりをもつことで,そうした学生も制作活動に活発に行えるように変化した。コーチングを用いる上で達成する目標の一つ,「自己肯定感の獲得」1)が,学生個々の中に芽生え,学習への喜びに結びついたと考える。
参考文献
1) 末次弘明:造形教育におけるコーチングを取り入れた学習の実践と研究, 北方圏学術情報センター年報 Vol4, 2012.