[PD40] 教育プログラムに学生は何を求めているのか
博士課程教育プログラム履修生のインタビューから
キーワード:大学院, 教育プログラム, インタビュー
問題と目的
今日,社会の変容が進み,それに応じて高等教育においても変革が求められている。とくに細分化された専門分野の枠を超えて全体を俯瞰し,社会的課題の解決に取り組む人材を育成するため,文部科学省は平成23年度より「博士課程教育リーディングプログラム」事業を推進している。社会や行政,大学側がプログラムに求める事柄については,各種調書や報告書にて述べられているが,履修学生らは,何を求めてプログラムに参加しているのであろうか。あらゆる場面においてプログラム提供側の視点だけではなく,教育の受け手である学生の視点からの検討は必要不可欠である。そこで,本調査では,リーディングプログラムのうち,「オールラウンド型」プログラムの1つに出願・受験・履修開始した学生らが,何に魅力を感じ,何を求めてプログラムを履修したのかを明らかにすることを目的とした。なお,本発表ではプログラムを履修している大学院生のことを,以降では「履修生」とする。
方 法
対象:2014年,2015年度よりプログラム履修を開始した大学院生33名。所属研究科は人文社会学系15名,理工学系15名,生命科学系3名であった。実施時期:プログラムの学生が履修を開始した年の2014年4-5月ならびに2015年4-5月。手続き:それぞれ履修を開始して一ヶ月が経過したころ,メールにてインタビューを依頼し,個人が特定できる情報を除外して分析した内容を会議ならびに学会にて発表することについて承諾を得た上で調査を実施した。具体的には,自由度の高い半構造化面接の手法を用いて,インタビュー調査を行った。実施の際,パソコンでの発話記録を行うことについてインタビュイーの了承を得たうえで,調査の中断や記録の停止に付いていつでも申し出ることが可能なことを口頭で伝えた。調査内容:アイスブレイクとして大学院進学前の学校活動について尋ねた後,進学並びにリーディングプログラム出願についての意思決定までの流れ,プログラムに関する情報収集の中で魅力に感じた点について,インタビュー中の会話が不自然とならないよう順序を入れ替えながら聞き取りを行った。調査時間は平均60分程度であった。
結果と考察
インタビューの発話を意味内容が同一のものを1つの単位として,発話された文章を分割した。結果,103の発話が分析対象となった。そのうえで,KJ法に類似した手法を用いて,似た内容をカテゴリ化し,分析を行なった。
プログラムへの出願前または履修前に魅力的だと感じていた点についての発話を分類した結果をFigure1に示す(横軸は発話件数)。
提示した図の通り,最多となったのは奨励金 (27件)であった。学生にとって経済的支援が大きな魅力となっていることが示された。また,所属研究科では自己にまかされている語学教育や海外研修についての発話(13件)や,整備されたコースワークへの発話(8件)も多く見られた。その他,オールラウンド型の特長である多様な研究科から集まる履修生同士のつながり(研究科外の仲間:10件)や,「何か大きいことができる」「いろんなことがしたい」といった漠然としたポジティブなイメージ(7件)についての発話が抽出された。しかし,リーディングプログラムが教育のすえに育成しようとしている社会的課題解決に取り組む人材への言及は見られなかった。本検討は履修前時点での認知を対象としているため,共同学習の手法を多く取り入れた本カリキュラムや諸活動を通して,履修生たちが魅力と感じる事柄の変容について追って検討することが今後の課題といえる。
今日,社会の変容が進み,それに応じて高等教育においても変革が求められている。とくに細分化された専門分野の枠を超えて全体を俯瞰し,社会的課題の解決に取り組む人材を育成するため,文部科学省は平成23年度より「博士課程教育リーディングプログラム」事業を推進している。社会や行政,大学側がプログラムに求める事柄については,各種調書や報告書にて述べられているが,履修学生らは,何を求めてプログラムに参加しているのであろうか。あらゆる場面においてプログラム提供側の視点だけではなく,教育の受け手である学生の視点からの検討は必要不可欠である。そこで,本調査では,リーディングプログラムのうち,「オールラウンド型」プログラムの1つに出願・受験・履修開始した学生らが,何に魅力を感じ,何を求めてプログラムを履修したのかを明らかにすることを目的とした。なお,本発表ではプログラムを履修している大学院生のことを,以降では「履修生」とする。
方 法
対象:2014年,2015年度よりプログラム履修を開始した大学院生33名。所属研究科は人文社会学系15名,理工学系15名,生命科学系3名であった。実施時期:プログラムの学生が履修を開始した年の2014年4-5月ならびに2015年4-5月。手続き:それぞれ履修を開始して一ヶ月が経過したころ,メールにてインタビューを依頼し,個人が特定できる情報を除外して分析した内容を会議ならびに学会にて発表することについて承諾を得た上で調査を実施した。具体的には,自由度の高い半構造化面接の手法を用いて,インタビュー調査を行った。実施の際,パソコンでの発話記録を行うことについてインタビュイーの了承を得たうえで,調査の中断や記録の停止に付いていつでも申し出ることが可能なことを口頭で伝えた。調査内容:アイスブレイクとして大学院進学前の学校活動について尋ねた後,進学並びにリーディングプログラム出願についての意思決定までの流れ,プログラムに関する情報収集の中で魅力に感じた点について,インタビュー中の会話が不自然とならないよう順序を入れ替えながら聞き取りを行った。調査時間は平均60分程度であった。
結果と考察
インタビューの発話を意味内容が同一のものを1つの単位として,発話された文章を分割した。結果,103の発話が分析対象となった。そのうえで,KJ法に類似した手法を用いて,似た内容をカテゴリ化し,分析を行なった。
プログラムへの出願前または履修前に魅力的だと感じていた点についての発話を分類した結果をFigure1に示す(横軸は発話件数)。
提示した図の通り,最多となったのは奨励金 (27件)であった。学生にとって経済的支援が大きな魅力となっていることが示された。また,所属研究科では自己にまかされている語学教育や海外研修についての発話(13件)や,整備されたコースワークへの発話(8件)も多く見られた。その他,オールラウンド型の特長である多様な研究科から集まる履修生同士のつながり(研究科外の仲間:10件)や,「何か大きいことができる」「いろんなことがしたい」といった漠然としたポジティブなイメージ(7件)についての発話が抽出された。しかし,リーディングプログラムが教育のすえに育成しようとしている社会的課題解決に取り組む人材への言及は見られなかった。本検討は履修前時点での認知を対象としているため,共同学習の手法を多く取り入れた本カリキュラムや諸活動を通して,履修生たちが魅力と感じる事柄の変容について追って検討することが今後の課題といえる。