The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PD(01-64)

ポスター発表 PD(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PD43] 反転授業における学生の学びの多様性

教育統計学の授業を例に

森朋子1, 山田剛史#2, 杉澤武俊3, 本田周二4, 溝上慎一5 (1.関西大学, 2.岡山大学, 3.新潟大学, 4.大妻女子大学, 5.京都大学)

Keywords:反転授業, 知識の再構築, 発話分析

はじめに
 20世紀後半にアメリカで生まれ,草の根で広まった反転授業は,欧米ではeラーニングを活用したブレンディッドラーニングの発展版として反転授業を位置づけている。しかし森らの研究グループでは,反転授業だからこその対面でのアクティブラーニングに注目を置いている。
 反転授業のデザインには,主に1)知識の習得を目的とするものと,2)事前に動画で得た知識を活用するものと2タイプある。その中でもは1)は,学習時間の増加から知識理解に大きな効果があるとされ,基礎知識定着を目指す授業に多く導入されてきた。しかしどのようなプロセスで知識理解に至るのか,また対面授業で何が起きているのかについては明らかになっていない。
 本研究では,教育統計学の基礎の授業をフィールドに,学生が内容理解を試みるプロセスを明らかにすることで,より効果的な反転授業の授業デザインを考える。
調査フィールドと調査方法
対象授業:国立A大学教育学部開講
     「教育統計学」
調査対象者:授業受講者 38名
調査期間:2015年10月~2016年2月
本研究に用いたデータ:
1. 反転授業形態導入後と学期末に実施した質問紙調査データ
2. 授業での協調場面における発話データ
3. TAと調査者によるフィールドノーツ
4. 受講者の小テスト等も含む成績データ
5. 学期末に実施されたフォーカス・グループインタビュー・データ
分析方法
 反転授業導入前と導入後の試験結果を基盤として,4つの学生のタイプ化を図った(Figure 1参照)。それぞれのタイプの学生がどのような授業内活動を行ったのか,2.によって発話分析を行い,その内容によって理解のプロセスを分析した。また上記データの2.と4.を除くデータでエスノグラフィカルに記述した。
結   果
 反転授業を導入した結果,いずれのタイプも,対面授業における協調的活動の中で,知識の再構築が認められた。つまり事前の動画視聴により個々の学生が「わかったつもり」を構築し,対面授業のアクティブラーニング部分において,その理解のバリエーションを協調活動にてすり合わせをしていくプロセスの中で,「わかったつもり」が「わかった」に再構築されていくことが,知識の定着と深い理解につながっていると考えられる。4つのタイプすべてにその傾向がみられることは,知識の内化とアクティブラーニングによる外化を限られた授業の中で往還できる授業デザインだからこその効果といえる。しかしその効果が表れているにも関わらず,学生が学習方法に関して多様な嗜好性を持つことも明らかになった。これらの調査の結果を受けて,発表ではさらに学習者中心の授業デザインのあり方を検討していく。