The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PD(01-64)

ポスター発表 PD(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 10:00 AM - 12:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PD44] 授業における複数の考え方の共通点・相違点検討の影響

倍と差を用いた表現の場合

鈴木豪 (東京大学)

Keywords:算数, 複数解法, 小学生

問題と目的
 鈴木(2015)は,個別面接により,算数の課題において,「最も良い考え方を選ぶ」という比較検討方法と,「共通点・相違点を考える」という比較検討方法が及ぼす影響の違いを検証した。
 その結果,複数の代表値を用いた考え方について,事前に「共通点・相違点を考える」群の方が,既習の考え方以外を用いて回答する,また,より多くの考え方を用いて回答する傾向が見られた。本研究では,多様な考え方の比較検討方法の違いによる影響が授業場面でも見られるかを検討する。順序づけをする方が,一貫して同じ方法を用い,また他の選択肢との比較をした説明を行わないのではないかと推察される。
方   法
 公立小学校5年生の1学級を無作為に2群に分け,一方を共通相違群(N=17),もう一方を順序づけ群(N=18)に割り当てた。
 それぞれの群において,20分間の授業が実施された。また,その前後に課題が実施された。
 授業内容は,ある大きさを別なものとの比較で表す際に,「倍」を使う考え方2種類と,「差」を使う考え方2種類について検討するものであった。共通相違群では,共通点と相違点が,児童の個別でのワークシート記入の後に,学級全体で検討された。順序づけ群では,4つの考え方のうち,良いと思うもの2つを,個別に順位づけした後,学級全体でどれがなぜ良いかが検討された。
 その翌日,参加児童は事後課題に取り組んだ。事後課題(1)は,「東京スカイツリーの高さを,フランス人に伝えるとき」の方法について,2種類の比較対象について,それぞれ倍・差で表した4つの選択肢から選び,選択理由を回答するものであった。事後課題(2)は,「横浜ランドマークタワーの高さを浜松市の人に伝えるとき」の方法について,(1)と同様の4つの選択肢から選び,理由を回答するものであった。
結果と考察
 事後課題(1)(2)において倍と差のいずれかを一貫して選択したかについて,Table 1に集計結果を示した。群間の偏りは見られなかった(正確確率検定(両側)でp=.500,φ=.149)。
 また,他の選択肢の良い点や悪い点など,他の選択肢への言及を含めて理由を述べた人数の集計結果をTable 2に示した。群間の偏りは有意であった(事後課題(1)でp=.019,φ=.420; 事後課題(2)でp=.012,φ=.450)。
 複数の考え方を比較検討する際に,共通点・相違点を考える場合の方が,ある選択肢を選ぶ際に他の選択肢への言及を行いながら説明をすることを促進する可能性が示唆された。