[PD47] 達成目標促進と授業実践型相互教授の効果(1)
課題理解の質に及ぼす影響
Keywords:熟達目標促進, 遂行目標促進, 算数グループ学習
問題と目的
学習場面において児童がもつ達成目標は,課題達成に大きく影響する。先行研究からは,遂行目標よりも,熟達目標を促すことの重要性が指摘されているが,実際の授業場面,特にグループ学習という相互作用場面における達成目標の効果についての実証的研究はほとんどない (中谷, 2013)。本研究では,算数グループ学習に効果をもたらした相互教授法 (町・中谷,2014) に,動機づけ促進を組み込んだ授業実践型相互教授 (Reciprocal Teaching in the Classroom; 以下RTC) を用いて異なる動機づけによるRTC介入効果を検討する。
方 法
対象と時期 都内公立小学校6年生A学級40名 (男子23名,女子17名),B学級39名 (男子21名,女子18名) の,計79名 (男子44名,女子35名) の児童を対象に,2015年9月に実施した。A学級を熟達目標促進型RTCを行う熟達目標群,B学級を遂行目標促進型RTCを行う遂行目標群とした。
授業デザイン 6年生の算数「拡大図と縮図」(8時間扱い) の単元で,4回RTC介入を行う。グループ学習は,約15分間の集団検討場面で取り入れ,説明役と質問役の役割を交替することとした。
達成目標介入 熟達目標群では,誤答モデルを示し,「〇〇さんが次に間違えないようにするためのアドバイスを考えよう」とした。遂行目標群では,「早く正確に答を求めよう」とし,早く答を求めた順に,回答を提出させた。誤答モデルを示した熟達目標群の方が,答を導き出すプロセスに焦点を当てた話し合いが行われるだろう。
予備調査 単元開始前に,「レディネステスト」(東京書籍,2011) を実施した結果,t(67)=.54で両群の習熟度に差はみられなかった。
課題達成度テスト 本時の学習課題に対する達成度を測定するために,学習のまとめの場面で,学習課題の類題を出題した。類題は,(1)正誤判断課題 (複数の選択肢から1つの答えを選ぶか,立式によって1つの答えを求める) と,(2)理由づけ課題 (答の求め方や,その答になる理由を記述する) の2問からなる構成とした。
結果と考察
正誤判断課題 学習課題達成度を比較するために,4回の介入実践ごとに,2 (正解・不正解) ×2 (群) のフィッシャーの直接確率計算 (両側検定) を行った。結果は, 順にp=1.0, p=.051, p=.239, p=1.0で有意差は認められなかった。
理由づけ課題 同じく4回の介入実践ごとに,3 (ABC3段階評価/Aが最高) ×2 (群) のフィッシャーの直接確率計算 (両側検定) を行った (Table 1)。結果は,順にp=.034, p=.006, p=.068, p=.006で,第1,2,4回で有意差が認められた。
ライアン法による多重比較の結果,熟達目標群の児童の割合は,第1・2回テストでは,B,Cに比べてAが高く (p<.05),第4回では,Cに比べてAが高かった (p<.05)。これらのことから,熟達目標群では,遂行目標群と比較して,全体的にA評価の出現頻度が高いといえる。
考察 正誤判断課題では,課題達成度の差がなかったことから,熟達・遂行目標を促進する教示の差はなかったといえる。しかし理由づけ課題では,4回中3回で熟達目標群のA評価の出現頻度が高いという結果が得られた。これは遂行目標群では,早く正解を求めようという教示により,理解よりも正しい答えを出すことに努力が向けられた反面,熟達目標群では,課題の理解を促す教示により,答えを導き出す過程についての発話が促進されたためと考えられる。
学習場面において児童がもつ達成目標は,課題達成に大きく影響する。先行研究からは,遂行目標よりも,熟達目標を促すことの重要性が指摘されているが,実際の授業場面,特にグループ学習という相互作用場面における達成目標の効果についての実証的研究はほとんどない (中谷, 2013)。本研究では,算数グループ学習に効果をもたらした相互教授法 (町・中谷,2014) に,動機づけ促進を組み込んだ授業実践型相互教授 (Reciprocal Teaching in the Classroom; 以下RTC) を用いて異なる動機づけによるRTC介入効果を検討する。
方 法
対象と時期 都内公立小学校6年生A学級40名 (男子23名,女子17名),B学級39名 (男子21名,女子18名) の,計79名 (男子44名,女子35名) の児童を対象に,2015年9月に実施した。A学級を熟達目標促進型RTCを行う熟達目標群,B学級を遂行目標促進型RTCを行う遂行目標群とした。
授業デザイン 6年生の算数「拡大図と縮図」(8時間扱い) の単元で,4回RTC介入を行う。グループ学習は,約15分間の集団検討場面で取り入れ,説明役と質問役の役割を交替することとした。
達成目標介入 熟達目標群では,誤答モデルを示し,「〇〇さんが次に間違えないようにするためのアドバイスを考えよう」とした。遂行目標群では,「早く正確に答を求めよう」とし,早く答を求めた順に,回答を提出させた。誤答モデルを示した熟達目標群の方が,答を導き出すプロセスに焦点を当てた話し合いが行われるだろう。
予備調査 単元開始前に,「レディネステスト」(東京書籍,2011) を実施した結果,t(67)=.54で両群の習熟度に差はみられなかった。
課題達成度テスト 本時の学習課題に対する達成度を測定するために,学習のまとめの場面で,学習課題の類題を出題した。類題は,(1)正誤判断課題 (複数の選択肢から1つの答えを選ぶか,立式によって1つの答えを求める) と,(2)理由づけ課題 (答の求め方や,その答になる理由を記述する) の2問からなる構成とした。
結果と考察
正誤判断課題 学習課題達成度を比較するために,4回の介入実践ごとに,2 (正解・不正解) ×2 (群) のフィッシャーの直接確率計算 (両側検定) を行った。結果は, 順にp=1.0, p=.051, p=.239, p=1.0で有意差は認められなかった。
理由づけ課題 同じく4回の介入実践ごとに,3 (ABC3段階評価/Aが最高) ×2 (群) のフィッシャーの直接確率計算 (両側検定) を行った (Table 1)。結果は,順にp=.034, p=.006, p=.068, p=.006で,第1,2,4回で有意差が認められた。
ライアン法による多重比較の結果,熟達目標群の児童の割合は,第1・2回テストでは,B,Cに比べてAが高く (p<.05),第4回では,Cに比べてAが高かった (p<.05)。これらのことから,熟達目標群では,遂行目標群と比較して,全体的にA評価の出現頻度が高いといえる。
考察 正誤判断課題では,課題達成度の差がなかったことから,熟達・遂行目標を促進する教示の差はなかったといえる。しかし理由づけ課題では,4回中3回で熟達目標群のA評価の出現頻度が高いという結果が得られた。これは遂行目標群では,早く正解を求めようという教示により,理解よりも正しい答えを出すことに努力が向けられた反面,熟達目標群では,課題の理解を促す教示により,答えを導き出す過程についての発話が促進されたためと考えられる。