[PD51] 高校生は心理学の情報をどこから入手しているか?
心理学の情報源と心理学イメージの関連
キーワード:心理学教育, 心理学の情報源, 心理学イメージ
問題と目的
日本では中等教育段階まで,学問分野として体系的に「心理学」を学習する機会は実質的にない。高等学校の「倫理」で青年心理学を学んだり,学校設定科目の形式で入門的な内容の「心理学」科目が設定されたりはするが,それらは一部の学校や学習内容に限られている(高橋・仁平,2010)。
こうした中,世の中には雑誌記事やWeb上の心理テスト,血液型性格判断やメンタリズム関連本などが広く出回っている。心理学の体系的な学習機会が乏しい高校生にとって,それらの情報は学問としての心理学を背景としたものだと認識されている可能性は高く,誤解や偏りのある「心理学」イメージが形成されているものと考えられる。
折しも,日本学術会議の心理学教育プログラム検討分科会が,その対外報告(2008)の中で心理学を中等教育にも導入することが急務であることを指摘している。しかし,高校生たちが心理学を何から学び,どのような学問と捉えているかについて,日本での実証的研究はほとんど見られない。
そこで本研究では,高校生が心理学についての情報をどこからどの程度入手し,それらがどのような心理学イメージを形成することに繋がっているかについて明らかにすることを目的とする。
方 法
調査協力者 沖縄県内3校の県立高校生,計184名(女子93名,男子91名)。筆者の出前授業を受講した1年生88名,2年生44名,3年生52名を対象に,講義の10日程前に担任教諭の協力の下,無記名の質問紙調査を郵送法で依頼・実施した。
質問紙構成 (1)自己および不思議現象認識欲求の測定:泊(2015)の大学生調査とほぼ同様の19の項目を用い,自分の考えとの一致度を5件法で尋ねた。各項目は,上瀬(1992)の自己認識欲求尺度と松井(2001)の不思議現象の論文に基づく。
(2)心理学の情報源:泊(2015)で用いた11項目の心理学情報源(家族,高校教員,ホンマでっかTV,情報・バラエティ番組,専門書,受験雑誌記事,映画等の心理学者,メンタリストDaiGo,大学案内等のパンフ…等)を設定し,多重回答を求めた。(3)心理学イメージ:泊(2015)と同一の16項目を多重回答で選択するよう求めた。項目例は,科学的な,神秘的な,不思議な,生活に役立つ,社会に役立つ,オカルト的な,等である。
結 果
心理学の各情報源の入手度(選択率) 心理学の各情報源の入手度はFigure 1の通りであった。これを泊(2015)の大学生調査データと比較すると,選択率が最も高い情報源は「ホンマでっかTV」で約70%(大:78%),第2位がメンタリストDaiGoで約33%(大:30%),以下,TVの情報・バラエティ番組が約29%(大:40%),心理学者が登場する映画等が約26%(大:47%)となっていた。
心理学のイメージ 上位項目は,「人間的な」69%(大:77%),「不思議な」約39%(大:45%),「生活に役立つ」約30%(大:44%)であった。泊(2015)では,「科学的な」が約48%で第2位であった。
心理学の情報源とイメージの関連 両変数をクロス集計しχ2検定を行った結果,生き方に関する自己認識欲求や不思議現象認識欲求が高いほどメンタリストDaiGoを情報源とし,心理学を「不思議な」,「オカルト的な」イメージで捉えていた。
考 察
泊(2015)の大学生データと概ね一致する結果が得られ,心理学への興味・関心の背景には自他理解や問題解決,娯楽機能があり,それらのニーズを通俗心理学的な情報源が充たしていることが示唆された。また,心理学は科学性よりも不思議でオカルト的な機能を有する学問と見なされており,今後より一層,科学的な心理学教育や高大接続教育を行うことの重要性が示唆された。
日本では中等教育段階まで,学問分野として体系的に「心理学」を学習する機会は実質的にない。高等学校の「倫理」で青年心理学を学んだり,学校設定科目の形式で入門的な内容の「心理学」科目が設定されたりはするが,それらは一部の学校や学習内容に限られている(高橋・仁平,2010)。
こうした中,世の中には雑誌記事やWeb上の心理テスト,血液型性格判断やメンタリズム関連本などが広く出回っている。心理学の体系的な学習機会が乏しい高校生にとって,それらの情報は学問としての心理学を背景としたものだと認識されている可能性は高く,誤解や偏りのある「心理学」イメージが形成されているものと考えられる。
折しも,日本学術会議の心理学教育プログラム検討分科会が,その対外報告(2008)の中で心理学を中等教育にも導入することが急務であることを指摘している。しかし,高校生たちが心理学を何から学び,どのような学問と捉えているかについて,日本での実証的研究はほとんど見られない。
そこで本研究では,高校生が心理学についての情報をどこからどの程度入手し,それらがどのような心理学イメージを形成することに繋がっているかについて明らかにすることを目的とする。
方 法
調査協力者 沖縄県内3校の県立高校生,計184名(女子93名,男子91名)。筆者の出前授業を受講した1年生88名,2年生44名,3年生52名を対象に,講義の10日程前に担任教諭の協力の下,無記名の質問紙調査を郵送法で依頼・実施した。
質問紙構成 (1)自己および不思議現象認識欲求の測定:泊(2015)の大学生調査とほぼ同様の19の項目を用い,自分の考えとの一致度を5件法で尋ねた。各項目は,上瀬(1992)の自己認識欲求尺度と松井(2001)の不思議現象の論文に基づく。
(2)心理学の情報源:泊(2015)で用いた11項目の心理学情報源(家族,高校教員,ホンマでっかTV,情報・バラエティ番組,専門書,受験雑誌記事,映画等の心理学者,メンタリストDaiGo,大学案内等のパンフ…等)を設定し,多重回答を求めた。(3)心理学イメージ:泊(2015)と同一の16項目を多重回答で選択するよう求めた。項目例は,科学的な,神秘的な,不思議な,生活に役立つ,社会に役立つ,オカルト的な,等である。
結 果
心理学の各情報源の入手度(選択率) 心理学の各情報源の入手度はFigure 1の通りであった。これを泊(2015)の大学生調査データと比較すると,選択率が最も高い情報源は「ホンマでっかTV」で約70%(大:78%),第2位がメンタリストDaiGoで約33%(大:30%),以下,TVの情報・バラエティ番組が約29%(大:40%),心理学者が登場する映画等が約26%(大:47%)となっていた。
心理学のイメージ 上位項目は,「人間的な」69%(大:77%),「不思議な」約39%(大:45%),「生活に役立つ」約30%(大:44%)であった。泊(2015)では,「科学的な」が約48%で第2位であった。
心理学の情報源とイメージの関連 両変数をクロス集計しχ2検定を行った結果,生き方に関する自己認識欲求や不思議現象認識欲求が高いほどメンタリストDaiGoを情報源とし,心理学を「不思議な」,「オカルト的な」イメージで捉えていた。
考 察
泊(2015)の大学生データと概ね一致する結果が得られ,心理学への興味・関心の背景には自他理解や問題解決,娯楽機能があり,それらのニーズを通俗心理学的な情報源が充たしていることが示唆された。また,心理学は科学性よりも不思議でオカルト的な機能を有する学問と見なされており,今後より一層,科学的な心理学教育や高大接続教育を行うことの重要性が示唆された。