[PD61] 「居場所」(安心できる人)を規定する媒介要因の検討
“自分ひとり”の居場所に注目して
キーワード:「居場所」(安心できる人), 自分ひとり, 間接効果(媒介効果)
問題と目的
豊田・岡村(2001)は,これまでの居場所に関する先行研究(中谷, 2011; 杉本・庄司, 2007; 矢作, 2005)から,「居場所」を「安心していられる場所」と定義した。また,「居場所」は“時間(安心できる時)”,“空間(安心できる場所)”及び“人間(安心できる人)”という3つの要素があり,「居場所」の構造は“時間”,“空間”及び“人間”の要因は並列的ではなく,人との関係が基礎になり,そこに時間・空間の要因が入ってくるのではないかと考えられた。すなわち,「安心できる人」が「居場所」における重要な要因であることを示した。
岡村・豊田(印刷中)は,安心できる人を規定する要因を検討した。その結果,男女ともに“自分ひとり”を志向する場合は“孤独・不安”が予測変数として有意であったことを見いだした。一方,岡村・豊田(印刷中)は,安心できる人を規定する要因には何らかの媒介要因が介在している可能性も指摘したが,今後の課題として残された。
そこで本研究は,安心できる人を規定する要因に媒介要因が介在している可能性を検討することを目的とする。
方 法
調査対象 近畿圏内に在住の大学生260名(男子111,女子149)。平均年齢は19.57歳(SD2.57)。
調査内容 a)「居場所」(安心できる人)ごとの安心できる程度の評定 “あなたは以下の人と居る時に安心できますか。ここで用いている「安心できる」とは,ホッとする,落ち着く等という意味です。”という教示を行い,“自分ひとり”“父親”“母親”“きょうだい”“現学校以前の友人”“現学校以降の友人”といる場面を設定。 b)ひとりで過ごすことに関する感情・評価尺度(ひとり感情・評価尺度)(増淵(海野), 2014) ひとりで過ごすことに関して,どのような感情や評価を行っているかを測定する尺度。“孤独・不安”11項目(例 「ひとりの時間」はさみしい),“自立・理想”8項目(例 友達と一緒でなくても行動できるようになりたい),“充実・満足”4項目(例 「ひとりの時間」を有効に使っていると思う),“孤絶願望”3項目(例 できることなら,だれもいないところに住みたい)の計26項目。
調査手続 著者が担当する授業終了後に上述の調査用紙を配布し,以下に示す調査を集団的に実施。1)安心できる人ごとの評定 調査内容a)に記述した調査項目について,“自分ひとり”“父親”“母親”“きょうだい”“現学校以前の友人”“現学校以降の友人”といる場面において安心できる程度をそれぞれ“5:非常に安心できる”から“1:あまり安心できない”の5件法で実施。2) ひとり感情・評価尺度 調査内容b)に記述した調査項目について“6:とてもそう思う”から“1:まったく思わない”の6件法で実施。
結果と考察
ひとり感情・評価得点の相関(r) 男女ともに“孤独・不安”と“充実・満足”は負の相関であった。増淵(海野)(2014)は,ひとり感情・評価尺度を作成する際に因子間相関を検討した結果,“孤独・不安”と“充実・満足”に中程度の負の相関を見いだしており,本研究の結果はそれを追証するものと言えよう。
安心できる人の評定値とひとり感情・評価得点の相関(r) 男女ともに,“自分ひとり”と“孤独・不安”は中程度の負の相関,“自分ひとり”と“充実・満足”は中程度の正の相関,“現学校以降の友人”と“孤絶願望”は弱い負の相関であった。ひとりでいることを志向する者は,ひとりでいることに孤独感や不安感を感じていないだけではなく,充実感や満足感も得ていることが明らかになった。
安心できる人を規定する媒介要因の検討 “自分ひとり”の居場所を志向する要因を検討するため,“自分ひとり”と“充実・満足”に“孤独・不安”が媒介しているモデルを仮定し,ブートストラップ法(リサンプリング回数は2000回)を用いて間接効果(媒介効果)の95%信頼区間を算出した結果,男女ともに“充実・満足→孤独・不安→自分ひとり”の標準化した間接効果の95%信頼区間は.01~.08(標準化した点推定値は男子で.04,女子で.05)であり,有意な間接効果が認められた。自分ひとりの居場所を志向する要因は,ひとりで過ごすことによる充実感や満足感によって規定されており,さらに両者の関係には孤独感や不安感のなさが媒介していることが考えられた。
豊田・岡村(2001)は,これまでの居場所に関する先行研究(中谷, 2011; 杉本・庄司, 2007; 矢作, 2005)から,「居場所」を「安心していられる場所」と定義した。また,「居場所」は“時間(安心できる時)”,“空間(安心できる場所)”及び“人間(安心できる人)”という3つの要素があり,「居場所」の構造は“時間”,“空間”及び“人間”の要因は並列的ではなく,人との関係が基礎になり,そこに時間・空間の要因が入ってくるのではないかと考えられた。すなわち,「安心できる人」が「居場所」における重要な要因であることを示した。
岡村・豊田(印刷中)は,安心できる人を規定する要因を検討した。その結果,男女ともに“自分ひとり”を志向する場合は“孤独・不安”が予測変数として有意であったことを見いだした。一方,岡村・豊田(印刷中)は,安心できる人を規定する要因には何らかの媒介要因が介在している可能性も指摘したが,今後の課題として残された。
そこで本研究は,安心できる人を規定する要因に媒介要因が介在している可能性を検討することを目的とする。
方 法
調査対象 近畿圏内に在住の大学生260名(男子111,女子149)。平均年齢は19.57歳(SD2.57)。
調査内容 a)「居場所」(安心できる人)ごとの安心できる程度の評定 “あなたは以下の人と居る時に安心できますか。ここで用いている「安心できる」とは,ホッとする,落ち着く等という意味です。”という教示を行い,“自分ひとり”“父親”“母親”“きょうだい”“現学校以前の友人”“現学校以降の友人”といる場面を設定。 b)ひとりで過ごすことに関する感情・評価尺度(ひとり感情・評価尺度)(増淵(海野), 2014) ひとりで過ごすことに関して,どのような感情や評価を行っているかを測定する尺度。“孤独・不安”11項目(例 「ひとりの時間」はさみしい),“自立・理想”8項目(例 友達と一緒でなくても行動できるようになりたい),“充実・満足”4項目(例 「ひとりの時間」を有効に使っていると思う),“孤絶願望”3項目(例 できることなら,だれもいないところに住みたい)の計26項目。
調査手続 著者が担当する授業終了後に上述の調査用紙を配布し,以下に示す調査を集団的に実施。1)安心できる人ごとの評定 調査内容a)に記述した調査項目について,“自分ひとり”“父親”“母親”“きょうだい”“現学校以前の友人”“現学校以降の友人”といる場面において安心できる程度をそれぞれ“5:非常に安心できる”から“1:あまり安心できない”の5件法で実施。2) ひとり感情・評価尺度 調査内容b)に記述した調査項目について“6:とてもそう思う”から“1:まったく思わない”の6件法で実施。
結果と考察
ひとり感情・評価得点の相関(r) 男女ともに“孤独・不安”と“充実・満足”は負の相関であった。増淵(海野)(2014)は,ひとり感情・評価尺度を作成する際に因子間相関を検討した結果,“孤独・不安”と“充実・満足”に中程度の負の相関を見いだしており,本研究の結果はそれを追証するものと言えよう。
安心できる人の評定値とひとり感情・評価得点の相関(r) 男女ともに,“自分ひとり”と“孤独・不安”は中程度の負の相関,“自分ひとり”と“充実・満足”は中程度の正の相関,“現学校以降の友人”と“孤絶願望”は弱い負の相関であった。ひとりでいることを志向する者は,ひとりでいることに孤独感や不安感を感じていないだけではなく,充実感や満足感も得ていることが明らかになった。
安心できる人を規定する媒介要因の検討 “自分ひとり”の居場所を志向する要因を検討するため,“自分ひとり”と“充実・満足”に“孤独・不安”が媒介しているモデルを仮定し,ブートストラップ法(リサンプリング回数は2000回)を用いて間接効果(媒介効果)の95%信頼区間を算出した結果,男女ともに“充実・満足→孤独・不安→自分ひとり”の標準化した間接効果の95%信頼区間は.01~.08(標準化した点推定値は男子で.04,女子で.05)であり,有意な間接効果が認められた。自分ひとりの居場所を志向する要因は,ひとりで過ごすことによる充実感や満足感によって規定されており,さらに両者の関係には孤独感や不安感のなさが媒介していることが考えられた。