[PE03] 両親との関係が大学生のキャリア発達に与える影響の性差(1)
父母への職業感情,親密性,精神的自立に着目して
キーワード:親子関係, キャリア発達, 性差
問 題
青年期から成人期への移行期は,成人生成期(Arnett,2000)とされるほどに長期化し,青年の親からの精神的自立も遅延化している。この時期にある青年も,大学卒業後に向けて就職活動,進学準備などキャリア形成に取り掛からざるを得ない。親から精神的に自立しないまま,青年はいかにキャリア形成を試みているのであろうか。
方 法
大学1~4年生(男性158名,女性203名,平均年齢19.37歳)に質問紙調査を実施した。質問紙は,「親からの精神的自立尺度(水本・山根,2011/2015)」「親との親密性尺度(水本,2015/2016)」「キャリア意識の発達に関する効果測定テスト(下村・八幡・梅崎・田澤,2009)」「親の職業に対する忌避感情(佐藤,2015)」であった。分析には,インタクトデータのみを使用した。
結果と考察
まず,「親の職業に対する忌避感情」の性差を混合2要因分散分析で検討すると,忌避感情は女性よりも男性で高く,母親に対してよりも父親に対して高かった。交互作用はみられなかった(Table 1)。「キャリア意識の発達」には,性差はみられなかった(Table 2)。次いで「親の職業に対する忌避感情」が「親との親密性」「親からの精神的自立」を媒介して「キャリア意識の発達」に影響を与えるモデルについて,共分散構造分析の多母集団同時分析を用いてその性差を検討し,許容範囲の適合度を得た(Figure 1)。親の職業忌避感情が親への親密性に与える影響は男性より女性で高かった。女性では,父親への絶対的安心感がキャリア意識の発達を促し,男性では,母親の職業忌避感情,母親への心づかい,父親への絶対的安心感,父親からの心理的分離がキャリア意識の発達を促すと考えられた。モデルの説明力は女性より男性で高く,男性は,親,特に父親の職業への忌避感情を高く持ちながらも,親との関係により大きな影響を受けてキャリア意識を高めていると示唆された。
青年期から成人期への移行期は,成人生成期(Arnett,2000)とされるほどに長期化し,青年の親からの精神的自立も遅延化している。この時期にある青年も,大学卒業後に向けて就職活動,進学準備などキャリア形成に取り掛からざるを得ない。親から精神的に自立しないまま,青年はいかにキャリア形成を試みているのであろうか。
方 法
大学1~4年生(男性158名,女性203名,平均年齢19.37歳)に質問紙調査を実施した。質問紙は,「親からの精神的自立尺度(水本・山根,2011/2015)」「親との親密性尺度(水本,2015/2016)」「キャリア意識の発達に関する効果測定テスト(下村・八幡・梅崎・田澤,2009)」「親の職業に対する忌避感情(佐藤,2015)」であった。分析には,インタクトデータのみを使用した。
結果と考察
まず,「親の職業に対する忌避感情」の性差を混合2要因分散分析で検討すると,忌避感情は女性よりも男性で高く,母親に対してよりも父親に対して高かった。交互作用はみられなかった(Table 1)。「キャリア意識の発達」には,性差はみられなかった(Table 2)。次いで「親の職業に対する忌避感情」が「親との親密性」「親からの精神的自立」を媒介して「キャリア意識の発達」に影響を与えるモデルについて,共分散構造分析の多母集団同時分析を用いてその性差を検討し,許容範囲の適合度を得た(Figure 1)。親の職業忌避感情が親への親密性に与える影響は男性より女性で高かった。女性では,父親への絶対的安心感がキャリア意識の発達を促し,男性では,母親の職業忌避感情,母親への心づかい,父親への絶対的安心感,父親からの心理的分離がキャリア意識の発達を促すと考えられた。モデルの説明力は女性より男性で高く,男性は,親,特に父親の職業への忌避感情を高く持ちながらも,親との関係により大きな影響を受けてキャリア意識を高めていると示唆された。