日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

2016年10月9日(日) 13:30 〜 15:30 展示場 (1階展示場)

[PE04] 両親との関係が大学生のキャリア発達に与える影響の性差(2)

性別の組み合わせによるキャリア発達への影響に着目して

高田治樹1, 水本深喜2, 正木澄江#3, 池上真平#4 (1.立教大学, 2.国立成育医療研究センター, 3.立教大学, 4.青山学院大学)

キーワード:親子関係, キャリア発達, 性差

問題と目的
 大学生のキャリア形成では,大学からの教育・支援だけではなく,親による教育・支援も重要と考えられる。たとえば,就職活動に関して相談したい相手では,多くの学生が「両親」を挙げており(リクルート,2010),自身のキャリア形成に最も身近な存在であることが示唆される。また,親の職業(佐藤,2015)や,親子関係(鹿内,2007),親とのコミュニケーション(高橋,2008)など両親からの様々な影響が,大学生のキャリア形成・発達に影響を及ぼすことが明らかにされている。したがって,大学生のキャリア形成・発達では,大学からの教育・支援だけではなく,親からの教育・支援も重要と考えられる。
 しかし,親子関係が大学生のキャリア形成に及ぼす影響は,親の性別と子の性別の組み合わせによって差が見られることが明らかにされているが(Buri, 1991; 鹿内, 2004, 2007; 高橋, 2008),組み合わせに関する一貫した結果は得られていない。
 そのため,本研究では,親子関係が大学生のキャリア形成に及ぼす影響が,親子の性別の組み合わせによって異なるかを検討する。
方   法
 大学生361名(M= 19.4歳)に対して,調査を実施した。調査は,(a) 親からの精神的自立尺度(「信頼感」と「分離」で構成;水本・山根, 2015),(b) CAVT(「アクション」と「ビジョン」で構成;下村他, 2009),(c) 主体的自己尺度(福島,1992),(d)心理的Well-Beling尺度より,自律性尺度(西田,2000)を用いた。
結果と考察
 CAVTのアクションとビジョン,主体的自己,自律性を従属変数とする階層的重回帰分析を実施した。独立変数は,性別,母親への信頼感,母親からの分離,父親への信頼感,父親からの分離ならびに,性別と各親子関係との交互作用項を投入した。その結果(Table 1),父親への信頼感は,アクションを高め,父親からの分離は,ビジョンと主体的自己を高めていた。一方,交互作用項では,母親への信頼感と性別との交互作用項からアクションと自律性それぞれに有意なパスがみられた。そのため,単純主効果の検定を実施した。その結果,男性は,母親への信頼感が高いほど,アクション(B = .156, p = .080)と自律性が高く(B = .1891, p = .016),女性は母親への信頼感が低いほど,アクションが高まっていた(B = -.190, p = .073)。
 以上の結果より,「父親からの分離」は,大学生の性別に関わらず,大学生のキャリア形成を促進していた。一方で,「母親への信頼感」は,アクションや自律性などの,学生生活を前に踏み出すことに対して,男性では正の関連がみられ,女性では負の関連がみられた。