The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PE09] 高齢者の社会的活動への自律的動機づけと他者との関係性の関連

活動内の仲間関係,家族からのサポートに着目して

堀口康太1, 大川一郎2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

Keywords:高齢者, 自律的動機づけ, 社会的活動

問題と目的
 近年,介護予防を強調するような社会的風潮があること(竹中,2011)や過度に活動的であることを強調すると高齢者の多様性が無視される可能性があること(Martinson & Minkler, 2006)から,高齢者個人の視点を重視する必要性が指摘されている(岡林,2011)。
 自律性(autonomy)は,自己決定や選択から高齢者本人の視点に着目した研究領域であり,近年では特に,自律的動機づけの観点から研究を実施する方向性が提案されている(堀口・大川,2016)。先行研究では運動などの社会的活動への自律的動機づけがwell-beingと関連することが報告されている(堀口・小玉, 2014; Solberg, Halvari, & Ommurdsen,2013)。しかし,自律的動機づけに関連する要因に関する研究はまだ少ない。そこで本研究では,自律性に関連する要因として先行研究(Montenko & Greenberg, 1995)で指摘された,他者との関係性に着目し,特に活動内の仲間関係,および家族からのサポートと高齢者の社会的活動への自律的動機づけの関連を検討する
方   法
 関東地方の人口50万人程度の中核市で活動する老人クラブ参加者498名の協力によって実施された。調査は2015年8月から10月の間に実施した。各支部長から会員に質問紙を配布してもらい,郵送で筆者に返送してもらう方法をとった。配布した498名のうち,回収数が239名(47.9%)であり,そのうち質問紙の3分の1以上に無回答や重複回答がある回答を無効票(n=14)とした結果,有効回答数は225名(94.1%)となった。有効回答者の属性は,男性が58.7%(n=132),女性が38.7%(n=87),不明が2.7%(n=6)であった。研究協力者の平均年齢は75.48歳(SD=4.89, レンジ60歳‐90歳)であった。
 測定された変数は①社会的活動参加動機づけ尺度(堀口・小玉,2014),②活動内の仲間関係(堀口,2013),③配偶者からの活動サポート(野口,1991; Sheldon, Underwood, & Gottlieb, 2000/2005から作成),④子供からの活動サポート(野口,1991;Sheldon, Underwood, & Gottlieb, 2000/2005から作成),⑤孫との親密さ(Aron, Aron, & Smollan, 1992から作成)であった。①~④は5件法で測定し,⑤は7件法で測定した。
結果および考察
 各関係性の指標(活動内の仲間関係,配偶者から活動サポート,子供からの活動サポート,孫との親密さ)を独立変数とし,社会的活動参加動機づけを従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を実施した。なお,各関係性の指標,社会的活動参加動機づけ双方に性差,年齢差が認められたため,重回帰分析は層別の結果を示すこととした(Table 1, 2)。
 その結果,「活動内の仲間関係」については,一部例外はあるものの,性や年齢に関わらず,ほぼ自律的動機づけに関連する傾向が認められた。一方で,家族からのサポートに関しては,性や年齢によって自律的動機づけとの関連の様相が異なっていた。例えば,「配偶者からの活動サポート」に着目すると,男性においては,自律的動機づけとの関連が認められ,逆に女性においては,他律的動機づけとの関連が認められた。したがって,性や年齢などの属性によって家族からのサポートが動機づけに及ぼす影響は異なる可能性があると考えられる。