日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

2016年10月9日(日) 13:30 〜 15:30 展示場 (1階展示場)

[PE12] 青年期の友人への欲求・期待と慰められた時の感情の関連(2)

友人への欲求・期待のクラスター分析を用いた検討

小川翔大 (神戸学院大学)

キーワード:慰め, 友人関係, サポート

目   的
 小川(2016)は,友人への欲求や期待と友人から慰められた時に生じる感情の関連を検討した。その結果,心理的サポート希求(「一緒にいてほしい)など)が高いと,友人が自分の気持ちを理解・心配していると評価して感謝(ありがたさなど)が高く,反発(友人への怒りや苛立ち)が低くなった。他にも,ライバル心(「友人より優位に立ちたい」など)が高いと脅威を感じて自責(情けなさなど)や反発が高くなった。しかし,これらの欲求を複雑に抱いた場合,慰めの受け手がどのような感情になるのかは明らかでない。本研究では,小川(2016)で検討した友人への欲求・期待のクラスター分析を行い,欲求・期待の組み合わせによる慰められた時の感情の違いを検討する。
方   法
 小川(2016)と同じ,中学生183名,高校生297名,大学生232名。対象者は親しい友人1名について友人への欲求・期待を評定した。次に,テストの失敗でその友人から慰められる話(「今は上手くいかなくても,きっと大丈夫だよ」と言われる)を読み,慰められた時の感情を評定した。質問項目:(1)友人への欲求・期待尺度(小川,2016)の心理的サポート希求5項目,ライバル心4項目,閉鎖的関係の希求3項目(「二人だけで仲良くしたい」など),ふれあい回避欲求3項目(「お互いの領分に踏み込みたくない」など)。(2)慰められた時の感情尺度(小川,2014)の感謝3項目,自責4項目,反発2項目。全て6件法で回答を求めた。
結果・考察
 友人への欲求・期待の下位尺度の平均値でクラスター分析(Word法)を行った(Figure 1)。CL1は特定の友人への心理的サポート希求や閉鎖的関係希求が高く,心理的に依存しつつもライバル心が高いため「依存・葛藤型」とした。CL2は心理的サポート希求が高く,ライバル心が低いため「サポート希求型」とした。CL3は閉鎖的関係希求が低く,ライバル心や心理的サポート希求を適度に抱いたため「バランス型」とした。CL4は閉鎖的関係の希求とライバル心が低く,心理的サポート希求とふれあい回避欲求を適度に抱き,友人を頼るが領分に踏み込み過ぎない心理的距離を保っていると考えられるため「自立型」とした。学校段階別のクラスターの人数(Table 1)についてχ2検定を行った結果(χ2(6)=90.3, p <.01),依存・葛藤型とサポート希求型は中学生で多く,バランス型は中学生で少なかった。また,自立型は大学生で多く,中学生で少なかった。
 次に,感情尺度の平均値を算出し,CLを独立変数とした一要因分散分析を行った(Table 2)。感謝は全てのCLで理論的中央値(3.5点)を上回り,特に依存・葛藤型とサポート希求型で高かった。また,自責は依存・葛藤型とバランス型が高く,自立型が低かった。反発はバランス型が最も高かったが,得点は2.36点と低かった。依存・葛藤型やバランス型は,慰めによって自分の駄目な部分を認識して自責を感じつつも,友人への感謝が高く反発が低くなった。以上より,友人に複雑な欲求・期待を抱いた状態でも,友人の慰めは受け手にポジティブな影響を与える可能性が示唆された。
引用文献
小川翔大(2016).青年期における友人への欲求・期待と慰められた時の感情の関連:テスト失敗場面で生じる慰めの検討.日本発達心理学会第27回大会発表論文集,389.
小川翔大(2014).青年期における友人の慰め方が受け手の感情に与える影響:励ましや共感の言葉かけと何もせずそっと離れる行動の比較.発達心理学研究,25,279-290.