日本教育心理学会第58回総会

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ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

2016年10月9日(日) 13:30 〜 15:30 展示場 (1階展示場)

[PE13] 関係性挑発場面における児童の反応行動レパートリーと社会的行動の関連

挑発に対する無視と攻撃行動の機能の差異の検討

関口雄一1, 濱口佳和2 (1.筑波大学, 2.筑波大学)

キーワード:攻撃行動, 社会的情報処理モデル, 児童

問題と目的
 児童の社会的認知の歪みを測定する場面想定法で用いられる場面は,仲間の挑発のタイプによって関係性挑発場面と道具的挑発場面に分類されている(河端,2015)。関係性挑発場面とは,友だちに挨拶をしたが返事をしてもらえなかったが,相手の意図が曖昧な場面など,関係性に特化した仲間挑発場面のことを指す(Crick, 1995)。一方で,道具的挑発場面とは,図工の時間に友だちが自分の机にぶつかって,自分の描いていた絵に,バケツの水がかかってしまったが,相手の意図が曖昧な場面などの挑発場面を指す。この道具的挑発場面に遭遇した場合に,児童がどのような反応行動のレパートリーを示すのか検討した先行研究では,無罰的行動,合理的主張行動,感情表出的主張行動,攻撃的行動,驚愕困惑落胆の表明,その他の非攻撃的行動の6種類の反応行動レパートリーに分類できることを示している(濱口・新井,1992)。そして,産出した反応行動レパートリーにおける攻撃的行動の占める割合の高さが攻撃行動傾向と関連することが明らかにされている(濱口・新井,1992)。しかし,道具的挑発場面と違い,目に見える明らかな被害がない関係性挑発場面において,子ども達がどのような反応行動レパートリーを持つのかは明らかにされていない。幼児を対象にした研究でも,関係性挑発場面における反応行動レパートリーとして攻撃行動が選択される率が低く,未検討に終わったままである(畠山・畠山,2012)。よって,本研究では,児童が関係性挑発場面において示す反応行動レパートリーを自由記述調査によって明らかにし,その産出率と社会的行動との関連を検討することを目的とする。
方   法
(1)調査対象者 小学4,5,6年生434名(男子224名,女子210名)であった。
(2)調査内容 関係性挑発場面における反応行動レパートリー・社会的行動質問紙:関係性挑発場面を2場面提示し,各場面において想定した反応行動を自由記述させ(セリフ・行動の記述),表情(怒った顔・ふつうの顔・笑った顔)も選択させた。また各場面において,関係性攻撃・外顕的攻撃・主張的行動をどの程度とるか5件法で質問した(1場面につき各行動×3項目で全18項目,α=.74,78,81)。得られた得点はエピソード間で対応する項目を加算平均した。
結果と考察
 濱口・新井(1992)を参考に,得られた記述について心理学を専攻する大学生4名が分類し,先行研究の6カテゴリと,道具的挑発場面ではみられなかった抑制的回避行動という新たなカテゴリの7種類の反応行動レパートリーが得られた。抑制的回避行動は,「相手のことを無視する」など関係性攻撃的な記述群によって構成されたが,相手を傷つけようとする意図がないと判断され,攻撃的行動とは別に分類された。なお,7カテゴリの分類における2者間のk係数は.76~.94であった。そして,回答者の記述総数に対して各カテゴリの記述が占める割合を算出した。
 Amos 22を用いて共分散構造分析を行った。まず,7種類の反応行動レパートリーの産出率を第1水準に設定した。次に,3つの社会的行動(関係性攻撃・外顕的攻撃・主張的行動)を第2水準に設定し,第1水準からパスを引いた。また,反応行動レパートリーの産出率間に相関を想定し,3つの社会的行動に誤差項を設定した。最初,上述のモデルの適合度の検証から出発し,有意でなかったパスや変数を削除し,適合度が最適となるモデルを探索した。その結果,最終的なモデルの適合度はχ2(8)=8.96(p =.346), GFI=.994,AGFI=.973,CFI=.999, RMSEA=.018であった(Figure 1)。この結果から,関係性挑発場面においても攻撃的行動の産出率の高さと攻撃行動の関連が示された。さらに,関係性挑発場面で新たに得られた抑制的回避行動は,関係性攻撃に似た内容であるが,攻撃的行動とは別の機能を持つ可能性が示唆された。