[PE14] 小学校低学年児の独特の計算方略による加減算の誤答事例
キーワード:計算方略, 加減算, 小学校低学年
研究の目的
小学校低学年段階の算数においては,加減算の理解と習熟は重要な学習内容であり,問題への誤答が多ければ,児童のありように適した指導を行うことが望まれる。そのためには,誤答に一貫するパターンを見出し,これを手がかりにして加減算問題を解く認知方略を推測することがまず求められよう。
本研究は自身の学年よりも低い学年配当の加減算問題でも多くの誤答を示す児童の誤答パターンを分析し,この児童の数の認知の一面を明らかにすることを目的とする。
方 法
(1) 対象者
B県内のH教室に通う小学生1名(調査時の学年は3年生。2年生のときH教室に通い,くり上がり・くり下がりの前段階となる10までの数の分解・合成から学習を始めている。本発表については,保護者より承諾を得ている。
(2) 期間
2014年7月。
(3) 手続き
H教室内で対象者が取り組んだ算数学習課題プリントの誤答を分析し,また課題に取り組む際の対象者の行動を参考とした。
結果と考察
(1) 式による加減算
Fig.1 は学習課題プリントの計算問題のうち,式による加減算への解答を例示したものである。加算問題では,1-(1)は正答しており,同じプリントの20+80,52+30など,第1項and/or第2項の右側の数字が0の問題にはすべて正答している。これに対し,1-(2)は3ケタの誤答をしているように見えるが,5+6を計算した答の右に4を追記,同じプリントの48+6=108も同様に4+6の答に8を追記したと考えられる。
これらの加算の正答・誤答から推測される計算方略は,第1項の左側の数字と第2項の(2ケタなら左側の)数字とを足し,残った第1項の右側の数字をそのまま追記する(第2項の右側の数字が0なら「なし」として無視する)というものと考えられる。
減算問題では,1-(3)は正答しており,加算問題の場合と同様に,同じプリントの100‐60,84‐40,59‐50など,第1項and/or第2項の右側の数字が0の問題には1問を除きすべて正答している。これに対し,1-(4)は加算問題の1-(2)と同様に6-5の答に4を追記,同じプリントの52-4=12,64-5=14もそれぞれ5-4の答に2を,6-5の答に4を追記したと考えられる。さらに1-(5)は3-6を計算しようとしてできず,同じプリントの40-8=0も同様に4-8はできないため減算をせず,残る第1項の数字を記したと推測できる。これは,同じプリントの84-8=4は8-8ができたため,残った第1項の数字を記した,との推測と符合する。
したがって,減算の正答・誤答から推測される計算方略も,加算の方略と基本は同じと考えられる。
(2) 筆算による加減算
Fig.2 は学習課題プリントの計算問題のうち,筆算による加減算への解答を例示したものである。同じプリントの加減算の問題も含め,筆算による計算問題はすべて正答しており,式による加減算の誤答の多さとは対照的である。
(3) 本児の数の認知
式による加減算の問題では,個々の数字と加減の記号が並んでいる(たとえば54+6は5,4,+,6)と認知し,2つ並ぶ数字の左側が10の位,右側が1の位という数字と量の対応の理解の不十分さが誤答に露わとなるが,筆算では数字の位置がそろえて提示されるため覆い隠されると推測される。本児は計算時に,たとえば4なら1,2,3,4と1から順に指を折って序数性に頼る計算を頻繁にしており,量(基数性)の理解が十分でないと考えられる。
小学校低学年段階の算数においては,加減算の理解と習熟は重要な学習内容であり,問題への誤答が多ければ,児童のありように適した指導を行うことが望まれる。そのためには,誤答に一貫するパターンを見出し,これを手がかりにして加減算問題を解く認知方略を推測することがまず求められよう。
本研究は自身の学年よりも低い学年配当の加減算問題でも多くの誤答を示す児童の誤答パターンを分析し,この児童の数の認知の一面を明らかにすることを目的とする。
方 法
(1) 対象者
B県内のH教室に通う小学生1名(調査時の学年は3年生。2年生のときH教室に通い,くり上がり・くり下がりの前段階となる10までの数の分解・合成から学習を始めている。本発表については,保護者より承諾を得ている。
(2) 期間
2014年7月。
(3) 手続き
H教室内で対象者が取り組んだ算数学習課題プリントの誤答を分析し,また課題に取り組む際の対象者の行動を参考とした。
結果と考察
(1) 式による加減算
Fig.1 は学習課題プリントの計算問題のうち,式による加減算への解答を例示したものである。加算問題では,1-(1)は正答しており,同じプリントの20+80,52+30など,第1項and/or第2項の右側の数字が0の問題にはすべて正答している。これに対し,1-(2)は3ケタの誤答をしているように見えるが,5+6を計算した答の右に4を追記,同じプリントの48+6=108も同様に4+6の答に8を追記したと考えられる。
これらの加算の正答・誤答から推測される計算方略は,第1項の左側の数字と第2項の(2ケタなら左側の)数字とを足し,残った第1項の右側の数字をそのまま追記する(第2項の右側の数字が0なら「なし」として無視する)というものと考えられる。
減算問題では,1-(3)は正答しており,加算問題の場合と同様に,同じプリントの100‐60,84‐40,59‐50など,第1項and/or第2項の右側の数字が0の問題には1問を除きすべて正答している。これに対し,1-(4)は加算問題の1-(2)と同様に6-5の答に4を追記,同じプリントの52-4=12,64-5=14もそれぞれ5-4の答に2を,6-5の答に4を追記したと考えられる。さらに1-(5)は3-6を計算しようとしてできず,同じプリントの40-8=0も同様に4-8はできないため減算をせず,残る第1項の数字を記したと推測できる。これは,同じプリントの84-8=4は8-8ができたため,残った第1項の数字を記した,との推測と符合する。
したがって,減算の正答・誤答から推測される計算方略も,加算の方略と基本は同じと考えられる。
(2) 筆算による加減算
Fig.2 は学習課題プリントの計算問題のうち,筆算による加減算への解答を例示したものである。同じプリントの加減算の問題も含め,筆算による計算問題はすべて正答しており,式による加減算の誤答の多さとは対照的である。
(3) 本児の数の認知
式による加減算の問題では,個々の数字と加減の記号が並んでいる(たとえば54+6は5,4,+,6)と認知し,2つ並ぶ数字の左側が10の位,右側が1の位という数字と量の対応の理解の不十分さが誤答に露わとなるが,筆算では数字の位置がそろえて提示されるため覆い隠されると推測される。本児は計算時に,たとえば4なら1,2,3,4と1から順に指を折って序数性に頼る計算を頻繁にしており,量(基数性)の理解が十分でないと考えられる。