The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PE17] 養育者の被援助志向性に関する探索的検討

身近な人と保育者で援助を求める(求めない)内容と理由に違いはあるのか

永井知子1, 浜崎隆司#2 (1.四国大学短期大学部, 2.鳴門教育大学大学院)

Keywords:養育者, 援助要請, 被援助志向性

問題と目的
 近年,必要に応じて他者に援助を求める「援助要請」が注目されており,子育て支援領域においても,その観点をとりいれることが求められている。ただし,周囲が支援の必要性を感じていても,養育者が必要としていないケースは多い。専門的な支援が必要な人ほど支援を要請しない状況があるなかで,どのように養育者支援を行うかが問われている。本研究では,養育者が援助を求める(求めない)内容とその理由を,家族などの身近な人と保育者に分けて整理し,養育者の被援助志向性(援助を求めるかどうかについての認知的枠組み)を探索的に検討する。
方   法
調査対象者:A県内の保育所,幼稚園,地域子育て支援教室に在籍している養育者296名。
調査内容:属性,被援助志向性:身近な人と保育者に対する被援助志向性を自由記述で回答を求めた。教示文は水野(2007),本田ら(2009)を参考にし,子育てに関する悩みや困ったことがあった時に援助を求める(求めにくい)内容と理由について4つの記述欄を設けた。
倫理的配慮:学内倫理審査委員会の承認後,依頼状に明記して調査を行った。
結果と考察
 自由記述の分析には計量テキスト分析ソフトウェアKH Coderを使用し,前処理,複合語の検出,語の抽出状況を確認したのち,共起ネットワークを実行し,語の共起関係を把握した。
1.身近な人に対する被援助志向性
(1) 援助を求める内容と求めにくい内容
 援助を求める内容は,「子ども-病気」,「自分-体調」,「子育て-悩み」の関連が示された(例:「子育てについての悩み」,「子どもが病気の時」「自分の体調が悪い時」)。援助を求めにくい内容は,「悪い-体調・自分・子ども」の関連が示された(「急に子どもや自分の体調が悪くなった時」)。

(2) 援助を求める理由と求めにくい理由
 援助を求める理由(図1)としては,「相手-預ける・安心・信頼」,「意見-聞く」との関連が示された(例:「最も信頼・安心できる相手だから」,「様々な人の意見や経験をきいて参考にしたい」。援助を求めにくい理由としては,「仕事-忙しい・申し訳ない」との関連が示された(例:「仕事や介護などでそれぞれ忙しいため,自分の理由で,子育てを頼むのは気がひけ申し訳なく思う」)。
2.保育者に対する被援助志向性
(1) 援助を求める内容と求めにくい内容
 助けを求める内容は,「関係-トラブル」,「子ども-様子・成長」の関連等が示された(例:「子どもの友人関係でトラブルがあった時」,「子どもの様子,成長段階で気になった時」)。援助を求めにくい内容は,「子ども-聞く・先生」との関連が示された(例:「先生と子どもの相性が合わず,先生にあまりなついていない時」)。
(2) 援助を求める理由と求めにくい理由
 援助を求める理由(図1)には,「子ども-たくさん・プロ・見る・アドバイス」との関連が示された(例:「たくさんの子どもを見ているプロの助言を聞きたい」)。援助を求めにくい理由は,「思う-相談・申し訳ない・忙しい」と関連が示された(例:「忙しいのが分かっているので,たいしたことではないと思うことを相談するのは申し訳ない」)。
 信頼している身近な人に対しては,自分や子どもの体調不良に関すること,専門家である保育者に対しては,子どもの発達や園でのトラブルなどに関することで援助を求めることが示唆される。また,どちらに対しても相手の仕事の状況や大変さを考えて申し訳なさを感じることが,援助を求めにくくさせていることが示唆された。