[PE18] 学校に対する教育心理学的支援(1)
養護教諭にできる環境デザイン
Keywords:適応, 養護教諭
問題と目的
岡田(2015)は学校適応を「主体と環境との調和的関係」と定義し,①生徒の内的欲求と行動の調和②認知された外的環境からの要請と行動の調和③学校システムと生徒の間の調和,という三つの側面から捉えるべきだとした。
本研究では③の学校システムと生徒間の調和の視点から高校を概観する。学校教育法によると,中学校の卒業要件は成績のみなのに対し,高校は学則や単位など,より厳格なものになっている。③よりシステムの枠が厳格であるほど,子供の個性に合わせた教育は難しく,システムに適応できない生徒が現れると考えられる。現在,高校進学率は97%を超えるため,学校に適応しにくい生徒に対する支援が必要不可欠である。
松嶋(2015)は,「教室に入っていることが一概に適応しているとは言い難いのはもちろん,問題行動が個的なリスク要因のみによってひきおこされているわけではない」と述べている。つまり,学校不適応は生徒のリスク要因によってのみ引き起こされるのではなく,学校の諸環境との不調和によって引き起こされる可能性がある。そこで本研究では,教師を成績評価や服装指導を行う学校システムの一部として捉え,生徒と教師の双方から学校不適応について検討したい。本研究の目的として(1)教員はどのような生徒が学校に適応し,どのような生徒が不適応であると考えているのか(2)生徒は学校に適応している状態と適応していない状態をどのように考えているのか(3)不適応感を持つ生徒と担任に対して,養護教諭ができる支援の方法はどのようなものかという3点を挙げる。
方 法
(1)は,九州地方の公立高校教員に対し「どのような生徒が学校(もしくは教室)に適応していると思うか。またどのような生徒が適応していないと思うか」というインタビュー調査を行った。(2)は同校生徒に対し「なぜ学校に居たくないと思う(思った)のか」というインタビュー調査を行った。(3)は学校不適応により保健室登校をした生徒及び同生徒の担任に対し,養護教諭のどのような支援が有効であったかについてインタビュー調査を行い養護教諭の支援方法を検討した。
結果と考察
(1)では教員は「適応している子は目標があり,我慢して頑張ることができる生徒である。適応していない生徒は,我慢できずに逃げ出す性質がある子だと思う」と考える傾向にあった。(2)では生徒は「クラスの雰囲気が嫌だ。クラスに入った時に皆の目が気になる」と考える傾向にあった。このように両者とも適応を個人の資質の問題と捉えていた。(3)では教員は「生徒の様子や連絡を伝えてもらえて助かった」「生徒とじっくり話す機会を持てて生徒理解が深まった」生徒は「保健室では安心して過ごすことができた」「先生が保健室に来てくれたので話せてよかった」と考える傾向にあった。養護教諭は適応を個人の資質というより個人と集団の調和の問題として捉え,調和を構成する支援を行った。また,保健室を担任と生徒の交流の場とし,両者に交流を働きかけ,相互的な変化を促した。その結果,子供はクラスに行けるようになった。養護教諭は,両者の状況理解を積極的に交渉させ,理解を発達させる役割を担っているのではないかと考えられる。
以上より学校不適応に関する問題は,養護教諭が媒介になり担任と生徒が交流することが重要であると考えられる。加藤(2008)は,実際の現場において「問題の解決」は,教師・生徒を含めた「状況の成長」であると述べている。養護教諭の媒体は両者のすれ違いを埋め,「状況の成長」を促すことが可能なのではないかと推察される。
岡田(2015)は学校適応を「主体と環境との調和的関係」と定義し,①生徒の内的欲求と行動の調和②認知された外的環境からの要請と行動の調和③学校システムと生徒の間の調和,という三つの側面から捉えるべきだとした。
本研究では③の学校システムと生徒間の調和の視点から高校を概観する。学校教育法によると,中学校の卒業要件は成績のみなのに対し,高校は学則や単位など,より厳格なものになっている。③よりシステムの枠が厳格であるほど,子供の個性に合わせた教育は難しく,システムに適応できない生徒が現れると考えられる。現在,高校進学率は97%を超えるため,学校に適応しにくい生徒に対する支援が必要不可欠である。
松嶋(2015)は,「教室に入っていることが一概に適応しているとは言い難いのはもちろん,問題行動が個的なリスク要因のみによってひきおこされているわけではない」と述べている。つまり,学校不適応は生徒のリスク要因によってのみ引き起こされるのではなく,学校の諸環境との不調和によって引き起こされる可能性がある。そこで本研究では,教師を成績評価や服装指導を行う学校システムの一部として捉え,生徒と教師の双方から学校不適応について検討したい。本研究の目的として(1)教員はどのような生徒が学校に適応し,どのような生徒が不適応であると考えているのか(2)生徒は学校に適応している状態と適応していない状態をどのように考えているのか(3)不適応感を持つ生徒と担任に対して,養護教諭ができる支援の方法はどのようなものかという3点を挙げる。
方 法
(1)は,九州地方の公立高校教員に対し「どのような生徒が学校(もしくは教室)に適応していると思うか。またどのような生徒が適応していないと思うか」というインタビュー調査を行った。(2)は同校生徒に対し「なぜ学校に居たくないと思う(思った)のか」というインタビュー調査を行った。(3)は学校不適応により保健室登校をした生徒及び同生徒の担任に対し,養護教諭のどのような支援が有効であったかについてインタビュー調査を行い養護教諭の支援方法を検討した。
結果と考察
(1)では教員は「適応している子は目標があり,我慢して頑張ることができる生徒である。適応していない生徒は,我慢できずに逃げ出す性質がある子だと思う」と考える傾向にあった。(2)では生徒は「クラスの雰囲気が嫌だ。クラスに入った時に皆の目が気になる」と考える傾向にあった。このように両者とも適応を個人の資質の問題と捉えていた。(3)では教員は「生徒の様子や連絡を伝えてもらえて助かった」「生徒とじっくり話す機会を持てて生徒理解が深まった」生徒は「保健室では安心して過ごすことができた」「先生が保健室に来てくれたので話せてよかった」と考える傾向にあった。養護教諭は適応を個人の資質というより個人と集団の調和の問題として捉え,調和を構成する支援を行った。また,保健室を担任と生徒の交流の場とし,両者に交流を働きかけ,相互的な変化を促した。その結果,子供はクラスに行けるようになった。養護教諭は,両者の状況理解を積極的に交渉させ,理解を発達させる役割を担っているのではないかと考えられる。
以上より学校不適応に関する問題は,養護教諭が媒介になり担任と生徒が交流することが重要であると考えられる。加藤(2008)は,実際の現場において「問題の解決」は,教師・生徒を含めた「状況の成長」であると述べている。養護教諭の媒体は両者のすれ違いを埋め,「状況の成長」を促すことが可能なのではないかと推察される。