[PE21] 大学への帰属感高揚プログラムの探索的開発(9)
キーワード:大学生活充実度, 帰属感, 特別授業
目 的
大学生活に対する充実感を感じるためには,学生の大学への帰属感が高まることが重要である(佐久田他,2008)。筆者らはこれまで心理学科所属の1回生を対象にした帰属感高揚プログラム(特別授業)を実施し,その効果を測定してきた(川上他,2010,2011)。その結果,所属学科の先輩の学びに関する語りをVTRで呈示することと,複数教員による自身の学びに関する対談を組み合わせたプログラムにより,受講生の帰属感が高揚することが示された。
さらに筆者らは,このプログラムを特定学科に閉じたものとしておかず,大学全体に広げていくために,複数学科に所属する学生を対象にした全学的プログラム「大学と私」の開発を目指してきた。坂田他(2015)では複数学科に所属する学生を対象に,同大学VTRと,複数学科の教員による対談を組み合わせた全学向け帰属感高揚プログラムを実施し,プログラム全体として受講生の「やる気」が高まるものであることが示された。
そこで本研究では,こうした複数学科教員による同大学VTRを用いたプログラムが,受講生の学科への帰属感や大学生活充実度に与える影響を吟味する。
方 法
実験参加者 大阪樟蔭女子大学全学部学科の1~4回生52名(平均年齢19.5歳,SD = 1.18)が実験に参加した。
質問紙の構成 ①帰属感尺度:所属学科への帰属感を測定する川上他(2009)の帰属感尺度(14項目,5件法)。②大学生活充実度尺度短縮版(SoULS-21):大学生活の充実度を“大学へのコミットメント”“交友満足”“学業満足”“不安のなさ”の4つの下位尺度(21項目,5件法)によって測る尺度(奥田他,2010)。
刺激材料 (1)専門領域を学ぶきっかけと学んでからの印象変化,(2)所属大学に来て良かったこと,(3)一回生の頃はどう過ごしていたか,(4)大学生活で楽しかったこと,心に残っていること,(5)学科のお薦めポイント,(6)1回生へのメッセージ,等のトピックについて,所属大学の様々な学科の上回生や卒業生が一問一答形式で語るVTRが作成された。
帰属感高揚プログラム プログラムでは,上記VTRを呈示した後,複数の教員による自身の大学の学びの語りと教員同士の対談を行った。
手続き 本プログラムは,一般教養科目の授業の一環として実施された。11月の授業内で帰属感尺度およびSoULS-21を実施(Pre)し,翌年1月の授業内でプログラムを実施した。プログラム終了時に,再度,帰属感尺度およびSoULS-21を実施(Post)した。
結 果
プログラム前後の,受講生の帰属感や大学生活充実度得点を算出し,これをTable 1に示した。プログラム前後で各得点が向上するかどうかをt検定により吟味した。その結果,“大学へのコミットメント”(t(43)= 2.433, p < .01)に関して調査時点の効果が有意であり,帰属感(t(41)= 1.925, p < .10)に関してはその傾向が認められた。いずれもプログラム後に得点が上昇している。“交友満足”,“学業満足”,“不安のなさ”については調査時点の効果は認められなかった。
考 察
本研究における結果から,帰属感高揚プログラム「大学と私」も,受講生の帰属感や大学へのコミットメントを高揚させる効果をもつことが示唆された。プログラムとしての「大学と私」の有する効果が,川上他(2011)や坂田他(2013)において認められた,同学科VTR,同学科教員による対談を用いた特定学科向けプログラムが有する効果と同程度のものであるか否かは再検討の必要がある。
大学生活に対する充実感を感じるためには,学生の大学への帰属感が高まることが重要である(佐久田他,2008)。筆者らはこれまで心理学科所属の1回生を対象にした帰属感高揚プログラム(特別授業)を実施し,その効果を測定してきた(川上他,2010,2011)。その結果,所属学科の先輩の学びに関する語りをVTRで呈示することと,複数教員による自身の学びに関する対談を組み合わせたプログラムにより,受講生の帰属感が高揚することが示された。
さらに筆者らは,このプログラムを特定学科に閉じたものとしておかず,大学全体に広げていくために,複数学科に所属する学生を対象にした全学的プログラム「大学と私」の開発を目指してきた。坂田他(2015)では複数学科に所属する学生を対象に,同大学VTRと,複数学科の教員による対談を組み合わせた全学向け帰属感高揚プログラムを実施し,プログラム全体として受講生の「やる気」が高まるものであることが示された。
そこで本研究では,こうした複数学科教員による同大学VTRを用いたプログラムが,受講生の学科への帰属感や大学生活充実度に与える影響を吟味する。
方 法
実験参加者 大阪樟蔭女子大学全学部学科の1~4回生52名(平均年齢19.5歳,SD = 1.18)が実験に参加した。
質問紙の構成 ①帰属感尺度:所属学科への帰属感を測定する川上他(2009)の帰属感尺度(14項目,5件法)。②大学生活充実度尺度短縮版(SoULS-21):大学生活の充実度を“大学へのコミットメント”“交友満足”“学業満足”“不安のなさ”の4つの下位尺度(21項目,5件法)によって測る尺度(奥田他,2010)。
刺激材料 (1)専門領域を学ぶきっかけと学んでからの印象変化,(2)所属大学に来て良かったこと,(3)一回生の頃はどう過ごしていたか,(4)大学生活で楽しかったこと,心に残っていること,(5)学科のお薦めポイント,(6)1回生へのメッセージ,等のトピックについて,所属大学の様々な学科の上回生や卒業生が一問一答形式で語るVTRが作成された。
帰属感高揚プログラム プログラムでは,上記VTRを呈示した後,複数の教員による自身の大学の学びの語りと教員同士の対談を行った。
手続き 本プログラムは,一般教養科目の授業の一環として実施された。11月の授業内で帰属感尺度およびSoULS-21を実施(Pre)し,翌年1月の授業内でプログラムを実施した。プログラム終了時に,再度,帰属感尺度およびSoULS-21を実施(Post)した。
結 果
プログラム前後の,受講生の帰属感や大学生活充実度得点を算出し,これをTable 1に示した。プログラム前後で各得点が向上するかどうかをt検定により吟味した。その結果,“大学へのコミットメント”(t(43)= 2.433, p < .01)に関して調査時点の効果が有意であり,帰属感(t(41)= 1.925, p < .10)に関してはその傾向が認められた。いずれもプログラム後に得点が上昇している。“交友満足”,“学業満足”,“不安のなさ”については調査時点の効果は認められなかった。
考 察
本研究における結果から,帰属感高揚プログラム「大学と私」も,受講生の帰属感や大学へのコミットメントを高揚させる効果をもつことが示唆された。プログラムとしての「大学と私」の有する効果が,川上他(2011)や坂田他(2013)において認められた,同学科VTR,同学科教員による対談を用いた特定学科向けプログラムが有する効果と同程度のものであるか否かは再検討の必要がある。