The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PE22] 自己説明におけるプロンプトと音声化の効果

統計学テキストを教材に用いて

佐藤浩一1, 茂木鮎子#2 (1.群馬大学, 2.安中私立原市小学校)

Keywords:自己説明, プロンプト, 音声化

 自己説明をしながらテキストを学習する状況で,説明内容に関するプロンプトの有効性を検討する。また自己説明研究では学習者に思考の音声化(発話思考)を求めるが,このことが学習に及ぼす影響は不明である。本研究ではプロンプトと音声化を操作し,統計学テキストの学習への効果を検討する。
方   法
 実験計画 プロンプト(有無)と思考の音声化(有無)の2要因を参加者間で操作した。
 参加者 大学生63名が参加した。テキストの内容について既知だった3名を除き,各群15名ずつであった(平均20.3歳,男性26名,女性34名)。
 材料 本試行用テキストと事後テストには,伊藤・垣花(2009)が作成したものを,許諾を得て用いた。本試行用テキストは分散と標準偏差に関するものであった。事後テストは基本問題6題と応用問題10題であった。
 プロンプト テキスト内容を意味づけたり,既有知識と関連づけたりすることを促すため,「初めての言葉や難しい言葉をわかりやすく自分の言葉に変えてください」,「文を『こういう意味があって~している』『これは~ということ』と自分の意味づけや解釈を加えて説明し直してください」,「今読んでいる箇所と他の部分や図表とのつながりを考えてください」という3つのプロンプトが与えられた。
 手続き 黙読群(プロンプト無・音声化無)の参加者はテキストを黙読して理解するよう求められた。発話群(プロンプト無・音声化有)の参加者はテキストを黙読して理解すること,頭に浮かんだことをすべて声に出すことを求められた。黙読プロンプト群(プロンプト有・音声化無)の参加者は3つのプロプトを意識しつつテキストを黙読して,理解するよう求められた。発話プロンプト群(プロンプト有・音声化有)の参加者はテキストを黙読して理解すること,プロンプトを意識して考えたことを声に出すことが求められた。
参加者は実験者から手本を示され,練習,本試行(10分間),事後テスト,質問紙に取り組んだ。質問紙では学習中の思考について,「初めての言葉や難しい言葉をわかりやすく自分の言葉に変えた」,「文を『こういう意味があって~している』『これは~ということ』と自分の意味づけや解釈を加えて説明し直した」,「読んでいる箇所と前の部分とのつながりを考えた」,「読んでいる箇所と図表とのつながりを考えた」程度を1~4で問うた。
結   果
 事後テストの結果(Table 1)について分散分析を行った。基本問題で音声化の主効果が有意(F(1, 56)=6.19,p < .05),応用問題で音声化の主効果が有意傾向(F(1, 56)=3.22,p < .10)であり,学習中に考えたことを音声化しない方が成績が良かった。プロンプトの主効果,プロンプト×音声化の交互作用は有意ではなかった。
 質問紙の評定結果では,どの群でもほぼすべての項目の評定平均が3.0を越えており,プロンプトの有無にかかわらず,参加者は言い換えや意味づけ,内容同士の関連づけをしながら学習していたことが示唆された。
 4群をまとめて事後テストの成績と質問紙評定との相関を検討した。応用問題の得点と質問紙評定合計との間にr =.385(p < .01),応用問題の得点と「自分の意味づけや解釈を加えて説明し直した」の評定の間にr =.352(p < .01)と,有意な相関が認められた。この質問項目に1・2と評定した12名と3・4と評定した48名の応用問題の得点を比較した。前者は平均6.67(SD = 2.02),後者は平均8.19(SD = 2.39)であり,差が有意であった(t(58)=2.03,p <.05)。テキストの内容を意味づける自己説明が学習に有効であることが示された。
*本研究は第二著者による平成27年度群馬大学教育学部卒業研究『プロンプトを意識した自己説明が科学的文章の学習に及ぼす影響-統計学テキストを用いた検討-』に基づく。材料の使用をご許可くださった伊藤貴昭氏(明治大学)に深謝いたします。