[PE26] 青年期女子の自己教育力を規定する要因の検討
居場所意識との関連性から
Keywords:居場所意識, 自己教育力, 青年期女子
目 的
自己教育力とは,主体的に学ぶ意志・態度・能力を示すものである。本研究では,青年期女子を対象として,居場所意識と自己教育力との関連性について検討した。
方 法
調査対象者 保育者養成校に所属する女子短期大学生99名(1年生53名,2年生46名)であった。
手続き 質問紙を用いた無記名式の調査を実施した。質問紙は,学年を問う項目と①居場所の心理的機能尺度35項目 (杉本・庄司, 2006),②自己教育力尺度42項目 (森・清水・石田, 2000)で構成された。①については4件法で回答を求め,②に関しては森ら (2000) を改変し,5件法で回答を求めた。
結果と考察
1.居場所の心理的機能,自己教育力における学年差 居場所の心理的機能についての6下位尺度および自己教育力についての7下位尺度に関して,t検定を用いて学年差を検討した。分析の結果,いずれの下位尺度に関しても有意な学年差は確認されなかったため,以降の分析では学年差を考慮しないものとする。
2.居場所意識が自己教育力に及ぼす影響 自己教育力と居場所の心理的機能との関連性を検討するために,自己教育力の各下位尺度得点を目的変数,居場所の心理的機能の下位尺度得点のそれぞれを説明変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った (Table 1)。
1)課題意識 課題意識得点を目的変数として分析を行ったところ,調整済みR2が有意であり,6つの居場所の心理的機能のうち,「自己肯定感」からの正のパスが見られた (β = .46, p < .05)。
2)主体的思考 主体的思考得点を目的変数として分析を行った結果,調整済みR2が有意であり,「自己肯定感」からの正のパス (β = .82, p < .01) と,「精神的安定」からの負のパス (β= -.50, p < .01) が確認された。
3)学習の仕方 学習の仕方得点を目的変数として分析を行った結果,調整済みR2が有意であり,「自己肯定感」からの正のパス (β= .39, p < .05) が見られた。
4)自主性 自主性得点を目的変数とした分析の結果,調整済みR2が有意であり,「自己肯定感」からの正のパス (β = .59, p < .01) と「精神的安定」からの負のパス (β= -.47, p < .05) が確認された。
5)自己実現 自己実現得点を目的変数とした重回帰分析の結果,調整済みR2が有意であり,「自己肯定感」からの正のパス (β= .71, p < .01) と,「他者からの自由」からの負のパス (β= -.35, p < .05) が有意であった。
「自己評価」と「計画性」に関しては,居場所の心理的機能についてのいずれの下位尺度とも関連性が示されなかった。
自己教育力の最も多くの側面に自己肯定感が影響するという結果が得られた理由として,限られた学業領域における自己価値の随伴性の高さや (Crocker & Park, 2004),両親,友人からの道具的,情緒的,共行動的サポートの存在があげられた。また,主体的思考,自主性と精神的安定の低さとの間に見られる負の関連性については,独自性意識の強さやライバルの認知によるものであると考察された。
自己教育力とは,主体的に学ぶ意志・態度・能力を示すものである。本研究では,青年期女子を対象として,居場所意識と自己教育力との関連性について検討した。
方 法
調査対象者 保育者養成校に所属する女子短期大学生99名(1年生53名,2年生46名)であった。
手続き 質問紙を用いた無記名式の調査を実施した。質問紙は,学年を問う項目と①居場所の心理的機能尺度35項目 (杉本・庄司, 2006),②自己教育力尺度42項目 (森・清水・石田, 2000)で構成された。①については4件法で回答を求め,②に関しては森ら (2000) を改変し,5件法で回答を求めた。
結果と考察
1.居場所の心理的機能,自己教育力における学年差 居場所の心理的機能についての6下位尺度および自己教育力についての7下位尺度に関して,t検定を用いて学年差を検討した。分析の結果,いずれの下位尺度に関しても有意な学年差は確認されなかったため,以降の分析では学年差を考慮しないものとする。
2.居場所意識が自己教育力に及ぼす影響 自己教育力と居場所の心理的機能との関連性を検討するために,自己教育力の各下位尺度得点を目的変数,居場所の心理的機能の下位尺度得点のそれぞれを説明変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行った (Table 1)。
1)課題意識 課題意識得点を目的変数として分析を行ったところ,調整済みR2が有意であり,6つの居場所の心理的機能のうち,「自己肯定感」からの正のパスが見られた (β = .46, p < .05)。
2)主体的思考 主体的思考得点を目的変数として分析を行った結果,調整済みR2が有意であり,「自己肯定感」からの正のパス (β = .82, p < .01) と,「精神的安定」からの負のパス (β= -.50, p < .01) が確認された。
3)学習の仕方 学習の仕方得点を目的変数として分析を行った結果,調整済みR2が有意であり,「自己肯定感」からの正のパス (β= .39, p < .05) が見られた。
4)自主性 自主性得点を目的変数とした分析の結果,調整済みR2が有意であり,「自己肯定感」からの正のパス (β = .59, p < .01) と「精神的安定」からの負のパス (β= -.47, p < .05) が確認された。
5)自己実現 自己実現得点を目的変数とした重回帰分析の結果,調整済みR2が有意であり,「自己肯定感」からの正のパス (β= .71, p < .01) と,「他者からの自由」からの負のパス (β= -.35, p < .05) が有意であった。
「自己評価」と「計画性」に関しては,居場所の心理的機能についてのいずれの下位尺度とも関連性が示されなかった。
自己教育力の最も多くの側面に自己肯定感が影響するという結果が得られた理由として,限られた学業領域における自己価値の随伴性の高さや (Crocker & Park, 2004),両親,友人からの道具的,情緒的,共行動的サポートの存在があげられた。また,主体的思考,自主性と精神的安定の低さとの間に見られる負の関連性については,独自性意識の強さやライバルの認知によるものであると考察された。