[PE29] 教育実習における実習指導教師の学び
指導内容との関連に着目して
Keywords:教育実習, 実習指導教師, 学び
問題と目的
学校現場で実践を行う教育実習は,実践的な指導力を培うだけでなく,自身の課題を発見したり進路を決定する契機となるなど,教員養成において重要な学びの機会である (三島・一柳・坂本, 2014ほか)。一方,実際の実習指導にあたる教師にとっても,自身の実践を振り返るなど学びの機会となっていることが指摘されている (池田他, 2014)。しかし,実習指導教師がその中でなにをどのように学んでいるのかの詳細を,数週間の教育実習の流れの中に位置づけて具体的に検討した研究はない。そこで,本研究では指導教師がなにをどのように学んでいるのかを,実習における流れとその際の指導と結びつけて明らかにすることを目的とする。
方 法
1)協力者 小学校に勤務し,教育実習をはじめて受け持つ清水先生(仮名,男性,教職8年目,5年生担当)。配属された実習生は1名(男性),実習期間は4週間と2日であった。
2)半構造化面接 実習前,実習中の各週末,実習後の計5回,半構造化面接を実施した。実習前には実習に対する思いや現時点での計画,実習中ではその週にあったことや感じたこと,実習後ではその週の内容に加え,実習全体の振り返り,実習イメージをそれぞれ清水先生に尋ねた。得られた語りはすべて文字化した。このうち,本研究では実習中と実習後(最終週後)の半構造化面接の実習内容に関わる語りを分析対象とする。
3)分析方法 まずa)実際に教育実習においてどのような指導を行ったのか,b)指導を通して何を学んでいるのか,という2つの視点から文字化した語りを精読した。次に,それぞれに該当する意味内容の語りを抽出し,コーディングしていった。最後に,語りの文脈からa)およびb)の関連を解釈的に分析した。
結果と考察
コーディングの結果,清水先生の学びの特徴をTable 1に示すカテゴリーに分類することができた。第1週目,清水先生は実習生の意欲的な姿を認めると同時に,自身も意欲が喚起されていた。そして,やりとりの中で実習生の持つ既有知識や直面しているつまずきを捉えていた。それを受け,児童との関わりや授業,学級経営について提案したり自身の実践の意図を説明したりしていた。そうした提案や説明が,自身の実践を振り返る機会となっていることがうかがえた。第2週目には,児童同士のトラブル対応や実習授業の開始があり,実習生はそれぞれ課題に直面していた。それに対し,清水先生は共感的に自身の実践を振り返っていた。そして,授業や児童対応について提案したりモデル提示を行うだけでなく,協働して考えていた。そうした中で,清水先生は実習生の成長を実感していた。一方では,伝えるべきことを伝え忘れていないかといった,自身の実習指導のあり方を再考したり,学校の実習サポート体制へ疑問を持つなどしていた。第3週目になると,清水先生は授業における実習生の成長の認識に加え,頑張りを認識するようになっていた。それを踏まえ,さらなる方法等を教示していた。また,当初から実習で取り組みたいと考えていた学級経営の活動について,2週目に実習生から提案があった活動を,実際に協働して進めていった。こうした教示や協働の中で,自身の実践の意味を振り返っていた。第4週目には,実習生の課題やつまずきを認識しつつも,成長や頑張りを認め,実習生の経験の意味を振り返って推察していた。また,3週目から継続して行った学級経営の活動を通して変化した子どもの姿を捉え,活動の影響を認識すると同時に,活動内容を提案した実習生を自身と対等な立場として認めるような見方も生まれていることがうかがえた。
総合考察
以上より,実習内容およびその指導に応じて清水先生が学ぶ内容が変化していること,その内容が多岐にわたっていることが示された。とりわけ,指導を通した自身の実践の振り返りだけではなく,実習生と協働して実践を創ることで,実習生との関係性が変化し,同じ実践者として実習生から学
んでいることが示唆された。
学校現場で実践を行う教育実習は,実践的な指導力を培うだけでなく,自身の課題を発見したり進路を決定する契機となるなど,教員養成において重要な学びの機会である (三島・一柳・坂本, 2014ほか)。一方,実際の実習指導にあたる教師にとっても,自身の実践を振り返るなど学びの機会となっていることが指摘されている (池田他, 2014)。しかし,実習指導教師がその中でなにをどのように学んでいるのかの詳細を,数週間の教育実習の流れの中に位置づけて具体的に検討した研究はない。そこで,本研究では指導教師がなにをどのように学んでいるのかを,実習における流れとその際の指導と結びつけて明らかにすることを目的とする。
方 法
1)協力者 小学校に勤務し,教育実習をはじめて受け持つ清水先生(仮名,男性,教職8年目,5年生担当)。配属された実習生は1名(男性),実習期間は4週間と2日であった。
2)半構造化面接 実習前,実習中の各週末,実習後の計5回,半構造化面接を実施した。実習前には実習に対する思いや現時点での計画,実習中ではその週にあったことや感じたこと,実習後ではその週の内容に加え,実習全体の振り返り,実習イメージをそれぞれ清水先生に尋ねた。得られた語りはすべて文字化した。このうち,本研究では実習中と実習後(最終週後)の半構造化面接の実習内容に関わる語りを分析対象とする。
3)分析方法 まずa)実際に教育実習においてどのような指導を行ったのか,b)指導を通して何を学んでいるのか,という2つの視点から文字化した語りを精読した。次に,それぞれに該当する意味内容の語りを抽出し,コーディングしていった。最後に,語りの文脈からa)およびb)の関連を解釈的に分析した。
結果と考察
コーディングの結果,清水先生の学びの特徴をTable 1に示すカテゴリーに分類することができた。第1週目,清水先生は実習生の意欲的な姿を認めると同時に,自身も意欲が喚起されていた。そして,やりとりの中で実習生の持つ既有知識や直面しているつまずきを捉えていた。それを受け,児童との関わりや授業,学級経営について提案したり自身の実践の意図を説明したりしていた。そうした提案や説明が,自身の実践を振り返る機会となっていることがうかがえた。第2週目には,児童同士のトラブル対応や実習授業の開始があり,実習生はそれぞれ課題に直面していた。それに対し,清水先生は共感的に自身の実践を振り返っていた。そして,授業や児童対応について提案したりモデル提示を行うだけでなく,協働して考えていた。そうした中で,清水先生は実習生の成長を実感していた。一方では,伝えるべきことを伝え忘れていないかといった,自身の実習指導のあり方を再考したり,学校の実習サポート体制へ疑問を持つなどしていた。第3週目になると,清水先生は授業における実習生の成長の認識に加え,頑張りを認識するようになっていた。それを踏まえ,さらなる方法等を教示していた。また,当初から実習で取り組みたいと考えていた学級経営の活動について,2週目に実習生から提案があった活動を,実際に協働して進めていった。こうした教示や協働の中で,自身の実践の意味を振り返っていた。第4週目には,実習生の課題やつまずきを認識しつつも,成長や頑張りを認め,実習生の経験の意味を振り返って推察していた。また,3週目から継続して行った学級経営の活動を通して変化した子どもの姿を捉え,活動の影響を認識すると同時に,活動内容を提案した実習生を自身と対等な立場として認めるような見方も生まれていることがうかがえた。
総合考察
以上より,実習内容およびその指導に応じて清水先生が学ぶ内容が変化していること,その内容が多岐にわたっていることが示された。とりわけ,指導を通した自身の実践の振り返りだけではなく,実習生と協働して実践を創ることで,実習生との関係性が変化し,同じ実践者として実習生から学
んでいることが示唆された。