[PE31] ノイズの少ない集団式ストループ課題の開発
キーワード:ストループ課題, D-CAT, 選択的注意
集団に対して実施可能なストループ課題のひとつに,箱田・渡辺 (2005) の新ストループ検査Ⅱがある。この検査の特徴は,ストループ干渉率とともに逆ストループ干渉率も測定できる点にある(松本・箱田・渡辺, 2012)。
しかしながら,新ストループ検査Ⅱは,色単語リストから適切なものをひとつ選ぶといったマッチングによる反応を求めるため,例えば,ストループ干渉率を測定する課題3と4では色単語によって検査紙がおおわれてしまっている。八木・菊池 (2003) は,知覚的負荷が大きい条件においては,ストループ様課題における干渉量が消失するといった結果を報告している。新ストループ検査Ⅱに見られるようなノイズの多い条件では,本来えられるはずの干渉率よりも低い干渉量にとどまっている可能性があるといえる。そこで,本研究では,ノイズの少ない条件で干渉量を測定できる課題の開発を目的とした。
予備調査
本研究では,後述の通り統制条件,実験条件といった複数の課題があるが,その課題順序が正答数に及ぼす効果を検討した。大学生 (N=111) に対して調査した結果,順序効果は認められなかった。
調 査
本研究で開発したテストが選択的注意を測定しているといえるか,前頭葉機能検査として用いられている D-CAT(八田・伊藤・吉崎,2001) を外的基準に検討した。
課 題 実験条件では,ターゲットとして線画の上に色単語を重ねて印字した刺激を用いた。参加者は色単語を無視して,線画の典型色を回答する。線画の下に3つ水平にならんでいる丸のうちひとつに鉛筆でチェックをいれる(左端の丸が「しろ」,中央が「き」,右端が「あか」)。検査用紙の左半分と右半分にそれぞれ6×6のターゲットを印刷した。ターゲットの配置については,試行間でネガティブプライミングが起きないなど考慮した。統制条件では,実験条件で線画の上に印字していた色名の各文字をXに置き換えた条件であり,それ以外は実験条件と同一である。回答時間は30秒間であった。
手続き 大学生 (N=149) に対し,本研究で作成した集団式ストループテスト,箱田・渡辺 (2005) が開発した新ストループ検査Ⅱ,加えて,八田・伊藤・吉崎 (2001) の開発した D-CATを実施した。D-CATは数字抹消課題であり,前頭葉機能検査として用いられている課題である。
結果と考察
D-CATの第3試行作業量 (TP3) について,参加者の平均値を求め,その平均値を基準に作業量高群,低群に参加者をわけた。集団式ストループの正答数について,作業量の高低(高群,低群)と集団式ストループの条件(統制条件,実験条件)を要因とした分散分析を行った。結果,条件の主効果が有意水準に達し (F(1, 147)=18.09, MSe=14.4 p <.001),実験条件の正答数は統制条件の正答数よりも少ないこと,つまり干渉が生じていることがわかった。さらに,作業量の高低の主効果が有意水準に達し (F(1, 147)=12.71, MSe=117.8, p<.001),作業量が高い群は低い群に比べ,ストループ課題での正答数が高いことがわかった。この結果は,本研究で開発したストループ課題を遂行する際には前頭葉機能のうち,おそらく選択的注意のはたらきが関わっていることを示唆している。
一方,新ストループ検査のうちストループ課題の正答数について,同様の分散分析を行ったところ,干渉は生じていたが (F(1, 146)=28.9, MSe=16.4, p<.001),作業量の高低の主効果は有意水準に達しなかった (F(1, 146)=12.71, MSe=107.3, p=.127)。
しかしながら,新ストループ検査Ⅱは,色単語リストから適切なものをひとつ選ぶといったマッチングによる反応を求めるため,例えば,ストループ干渉率を測定する課題3と4では色単語によって検査紙がおおわれてしまっている。八木・菊池 (2003) は,知覚的負荷が大きい条件においては,ストループ様課題における干渉量が消失するといった結果を報告している。新ストループ検査Ⅱに見られるようなノイズの多い条件では,本来えられるはずの干渉率よりも低い干渉量にとどまっている可能性があるといえる。そこで,本研究では,ノイズの少ない条件で干渉量を測定できる課題の開発を目的とした。
予備調査
本研究では,後述の通り統制条件,実験条件といった複数の課題があるが,その課題順序が正答数に及ぼす効果を検討した。大学生 (N=111) に対して調査した結果,順序効果は認められなかった。
調 査
本研究で開発したテストが選択的注意を測定しているといえるか,前頭葉機能検査として用いられている D-CAT(八田・伊藤・吉崎,2001) を外的基準に検討した。
課 題 実験条件では,ターゲットとして線画の上に色単語を重ねて印字した刺激を用いた。参加者は色単語を無視して,線画の典型色を回答する。線画の下に3つ水平にならんでいる丸のうちひとつに鉛筆でチェックをいれる(左端の丸が「しろ」,中央が「き」,右端が「あか」)。検査用紙の左半分と右半分にそれぞれ6×6のターゲットを印刷した。ターゲットの配置については,試行間でネガティブプライミングが起きないなど考慮した。統制条件では,実験条件で線画の上に印字していた色名の各文字をXに置き換えた条件であり,それ以外は実験条件と同一である。回答時間は30秒間であった。
手続き 大学生 (N=149) に対し,本研究で作成した集団式ストループテスト,箱田・渡辺 (2005) が開発した新ストループ検査Ⅱ,加えて,八田・伊藤・吉崎 (2001) の開発した D-CATを実施した。D-CATは数字抹消課題であり,前頭葉機能検査として用いられている課題である。
結果と考察
D-CATの第3試行作業量 (TP3) について,参加者の平均値を求め,その平均値を基準に作業量高群,低群に参加者をわけた。集団式ストループの正答数について,作業量の高低(高群,低群)と集団式ストループの条件(統制条件,実験条件)を要因とした分散分析を行った。結果,条件の主効果が有意水準に達し (F(1, 147)=18.09, MSe=14.4 p <.001),実験条件の正答数は統制条件の正答数よりも少ないこと,つまり干渉が生じていることがわかった。さらに,作業量の高低の主効果が有意水準に達し (F(1, 147)=12.71, MSe=117.8, p<.001),作業量が高い群は低い群に比べ,ストループ課題での正答数が高いことがわかった。この結果は,本研究で開発したストループ課題を遂行する際には前頭葉機能のうち,おそらく選択的注意のはたらきが関わっていることを示唆している。
一方,新ストループ検査のうちストループ課題の正答数について,同様の分散分析を行ったところ,干渉は生じていたが (F(1, 146)=28.9, MSe=16.4, p<.001),作業量の高低の主効果は有意水準に達しなかった (F(1, 146)=12.71, MSe=107.3, p=.127)。