The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PE32] 性教育指導における自己関与性

教員志望の学生に着目して

郡司菜津美 (国士舘大学)

Keywords:性教育, 教員養成, 自己関与性

はじめに
 学校教育の基盤となる学習指導要領には,性教育に関する指導内容が体系的に明記されており,教員の指導の基礎となる生徒指導堤要には「すべての教育活動を通して実施するもの(文部科学省,2010)」と記されている。しかし,実際の現場教員は性教育について,その必要性を高く認識しているにもかかわらず(野坂,2011),「指導法がわからない」といった困難や課題を抱えていることが明らかになっている(佐光ら,2014)。
 こうした課題の背景には,大学の教員養成の段階で,性教育の十分なカリキュラム編成が組まれておらず,性教育に関する指導スキルを十分に身につけていないまま現場に出ていくこと(天野ら,2001:西田ら,2005:児島,2015:長田ら,2016)があげられる。そこで,本研究では,教員志望の学生が実質的な性教育を実施できるプログラムを開発するための基礎研究として,教員志望の学生が性教育指導に対してどのような認識を持っているのかを自己関与性(学習内容に対する自分ごとの程度:郡司,2013)との関連から検討することを目的とした。
方   法
 首都圏の私立A大学の教職に関する講義を受講する学生165名を対象に,2016年4月,Web上のアンケートフォームを利用した調査を行った。アンケートへの協力は事前に(1)授業・成績とは無関係 (2)匿名 (3)データは研究以外の目的に使用されないことを確認した。質問項目は以下の6点,①教員志望度,②取得予定の免許の種類,③性教育への自己関与性の高さ,④③のように回答した理由(自由記述),⑤学年,⑥性別,であった。
結果と考察
 以下,①と③及び②と③の結果をそれぞれ表1・表2に示す。また,④性教育への自己関与性の高さを選択した具体的な理由についてKJ法を用いて分類したところ(カッコ内は切片数),「取得免許の専門性(51)」「子供の発達段階(38)」「正しい知識によるリスク回避(21)」「教員の役割(21)」「性教育の重要性(19)」「子供の未来に関わること(5)」「社会的課題(5)」「その他(5)」の8つに分類された (表3参照,理由の表記は省略した)。
 表1•2からわかる通り,教員志望度及び取得予定の教員免許の種類にかかわらず,ほとんどの学生が性教育について「とても関係がある」「少し関係がある」の項目を選択しており,将来の性教育指導が自分ごとであると認識する回答を行った。
 そのように回答した理由について,保健体育科や養護教諭の免許を取得志望の学生は「保健体育の授業で必須だと思うから」「養護(教諭志望)であるから」といったように取得免許の専門性と関連付けて記述する回答が多かった。一方で社会科や国語科,小学校教諭の免許を取得志望の学生は「思春期の生徒なのでそういうことに多感だと思うから」「子供の成長ととても関係あると思うから」といったように子供の発達段階を考慮し,生徒指導の観点から記述する回答が多かった。
 こうした学生の性教育の指導に対する認識差は,教員間の指導観の差と同様に,指導の際の多様な資源となりうる。今後,かれらの多様性を活用した性教育の指導スキルに関する授業を展開していく必要があるだろう。こうした教員養成段階での指導のあり方は,実際の教育現場で養護教諭・保健体育科教員だけでなく,すべての教員が連携して性教育を実施していくための文化作りの一助となることが期待される。