The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PE35] 自己調整学習方略の利用に対する「解釈レベル理論」からの考察

寺田未来 (大手前大学)

Keywords:メタ認知方略, 有効性, コスト

本研究の背景
 さまざまな学習方略(認知方略,動機づけ方略)のなかでも理解度をモニタリングする,つまずきを明確にする,プランニングするなどメタ認知方略の利用を促す必要性は高い。メタ認知トレーニングやメタ認知方略指導に関する効果検証も数多くなされてきた (e.g., 市原・新井, 2006; 佐藤, 1998; 瀬尾, 2007; 植木, 2004; 植阪, 2010)。しかしメタ認知方略に対し,コストが高く認知され利用が少ないこと (佐藤,1998),学習方略への有効性認知が的確でないこと (村山・吉田, 2013) も指摘される。
 本研究ではメタ認知方略の利用に加え,その有効性とコスト認知に影響を与える要因に着目する。学習者は,課題を解決するために手続きを適用し課題を遂行しようとする解決志向と,手続きをふまえて知識を関連付け一般化しようとする学習志向をもつ (三輪他, 2012)。この目標志向の違いは学習方略の利用や学業成績に影響を与える (三木・山内, 2005; 田中・山内, 2000)。しかし,目標志向の違いと有効性・コストの認知という認知レベルの関連はこれまで検討されていない。本研究ではこれらの関連について検討を行う。
方   法
調査協力者:株式会社ジャストシステム社の調査サービスFastaskに登録しているモニタのうち18~23歳の学生336名(平均19.45歳:男性169名,女性167名)の協力を得た。
質問項目:①学習方略の利用頻度14項目「1: まったく利用しない~5: よく利用する」で回答を求めた。②学習方略の有効性認知14項目「1: まったく有効でない~5: ものすごく有効である」で回答を求めた。③学習方略のコスト認知14項目「1: まったく (時間が) かからない~5: ものすごくかかる」で回答を求めた。④目標志向性計22項目学習目標,遂行目標,回避目標について,「1; まったくあてはまらない~5: とてもあてはまる」で回答を求めた。
結   果
 目標志向 (学習/遂行/回避),有効性・コスト認知,利用頻度の相関係数を算出した (Fig1)。その結果,学習目標志向と有効性認知に中程度の相関,回避目標志向とコスト認知に中程度の相関がみられた。遂行目標志向について有効性・コストともに中程度の相関が認められた。
 次に,目標志向についてクラスター分析を実施した。その結果,すべての目標志向が低い低クラスター (N=115),回避目標志向が高い回避クラスター (N=129),学習目標志向が高い学習クラスター (N=92) に分類された。クラスターごとに各変数間の相関を求めた結果,回避クラスターにおいて,コスト認知と利用頻度の相関が有意傾向であった。また利用頻度に対しクラスター (3: 低/回避/学習) ×有効性認知 (2: 低/高)のANOVAを実施した。その結果,有意な各主効果がみられ,交互作用効果が有意傾向であった。学習クラスターかつ有効性認知高群において利用頻度が高かった (Fig 2)。
考   察
 目標志向の違いがメタ認知方略の利用頻度のみならず,有効性・コスト認知と次のように関連することがわかった。1)学習目標をもつ者において有効性を認知することで利用頻度も高まる,およびコストを認知する一方で利用頻度も高まる,2)回避目標をもつ者において有効性を認知することで利用頻度も高まる,しかしコスト認知が利用頻度に関連する傾向は弱い,3)学習目標をもつ者において有効性認知が低ければ利用頻度が低い。
 本結果は,目標志向によりメタ認知方略の利用プロセスに認知レベルの違いがみられることを示唆する。今後,目標志向に応じて異なる認知のプロセスがみられることをふまえたメタ認知方略指導が必要になる。