The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

Presentation information

ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PE51] 小学生向け防災教育デジタル教材の開発

災害発生時の主体的な行動力の育成を目的として

豊沢純子1, 元吉忠寛2, 竹橋洋毅3, 野田理世4, 宮本真希子#5, 土本純平#6, 井上洋#7, 眞田巧#8, 藤田大輔9 (1.大阪教育大学, 2.関西大学, 3.関西福祉科学大学, 4.金城学院大学, 5.大阪教育大学附属池田小学校, 6.大阪教育大学附属池田小学校, 7.大阪教育大学附属池田小学校, 8.大阪教育大学附属池田小学校, 9.大阪教育大学)

Keywords:防災教育, デジタル教材, 小学生

背景と目的
 東日本大震災後,学校における防災教育の重要性が再認識された。しかし現状では,多くの学校では避難訓練を中心とした学習にとどまっており,防災教育のための時間や教材の不足が指摘されている。既存の教材においても,知識形成を目的としたものが多く,災害発生時の行動の仕方に焦点をあてたものは少ない。特に小学生では,知識が行動につながらない可能性が指摘されており,子どもが接する具体的な日常場面を対象とした学習が求められている。
 そこで本研究は,典型的な避難訓練の状況の「授業中」に加え,「給食中」「下校中」「就寝中」に地震が起きた時の行動の仕方を学習するための教材を作成する。発生から避難終了までの行動の流れをスクリプトとして理解することにより,実際に被災した際に主体的に行動する力の育成を目指す。
 また別の問題として,家庭と連携した学習が少ないことが指摘されている。そこで家庭学習を組み込み,保護者にも学習に参加してもらった。
 本研究はHATOプロジェクト「安全・防災教育のプログラム開発プロジェクト」の中で実施した。
方   法
対象:小学生85名(2年生,3年生,5年生)。
教材:危険-概念(1),安全-概念(1),危険-具体(1),危険-具体(4)の全7教材をPowerPointで作成した。
手続き:45分の授業を2回行い,間に家庭学習を行った。使用する教材は授業担当者が選択した。
質問紙調査:災害発生時の対処可能性(3項目),保護者と協力した防災行動意図(3項目),授業評価(3項目)についてたずねた。
結   果
(紙面の都合から5年生のみ記載,検定値は省略)
災害発生時の対処可能性 学習前後の回答を比較したところ,問2は期待した方向,問3は逆方向に変化していた。尺度中央値(=2.5)との比較では,学習前は問2と問3,学習後は全ての設問の対処可能性の認知が高かった。
保護者と協力した防災行動の意図 問4のみ期待した方向に変化していた。尺度中央値との比較では,学習前は問6,学習後は問4と問6の意図が高かった。
授業評価 全て尺度中央値よりも高かった。
保護者コメント いずれも学習に対する肯定的な評価や更なる学習への期待が書かれていた。
考   察
 本研究で作成した教材は,概ね災害発生時の対処可能性や保護者と協力した防災行動意図を高しうるものであり,児童や保護者による授業評価も肯定的であった。期待とは逆方向に変化した設問や変化しなかった設問は,質問紙の設計と実施時間に問題があった可能性がある。この点は,問題点を修正した上でさらなる検討が必要である。