[PE56] イヌの存在が公共財ゲームにおける寄付行動に及ぼす影響
動物介在教育場面を想定して
キーワード:イヌ, 公共財ゲーム, 動物介在教育
目 的
動物とのふれあいや相互作用により様々な効果が期待されている動物介在教育(Animal Assisted Education: AAE)は,教育現場で活用される機会が増えてきている。AAEの期待される効果の一つとして,学習者間の社会的相互作用の促進があげられる。本研究では,社会的相互作用について検討するため社会的ジレンマの一つである公共財ゲームを用い,イヌの存在が公共財ゲームにおける寄付行動に及ぼす影響について検討した。また,一緒にゲームを実施した他の参加者の印象が寄付額に及ぼす影響についても併せて検討を行った。
方 法
実験参加者は都内の大学に在籍する学生40名であった(男性15名,女性25名,18~24歳)。実験中にイヌと接触するイヌ条件,および植物と接触する植物条件にランダムに割り当てた。募集時には実験中にイヌと接触する可能性があることを伝え,イヌが苦手な人やアレルギー反応が生じる人は参加を控えてもらった。実験開始前に実験内容の説明を文書および口頭で行うとともに,実験参加承諾書に署名を求めた。本研究は日本獣医生命科学大学生命倫理委員会の承認を得て実施している(承認番号S26S-49)。
公共財ゲームは4名もしくは3名一組で実施した。最初に200円を参加者全員に配布した。参加者はその中から,いくらかを寄付するように教示された。寄付金額は0円から200円までの間であり,10円単位で寄付を行うことができた。実験者は参加者から集めた寄付金を2倍にし,参加者に等しく還付した。参加者は還付金と寄付しなかった金額の合計を獲得することができた。公共財ゲームでは参加者全員の寄付金が増えるほど獲得金も増えるが,一人だけが寄付をしないという行動を選択すると,その人の獲得金が最も増加することになる。参加者はより多くの金額を獲得するよう考慮することが求められた。
公共財ゲームの前半(1~5試行)が終了した後に,イヌ(ミックス,オス,2歳)もしくは植物(鉢植えのポトス)を実験室に入れた。イヌもしくは植物に対する参加者のイメージを測定し,その際に参加者は対象に接触した。イメージ測定終了後,公共財ゲームの後半(6~10試行)を実施した。イヌと植物は実験終了まで実験室に留置した。さらに,同じ組でゲームを実施した他の参加者の印象評定をSD法(6項目)により3回(ゲーム開始前・前半終了後・後半終了後)実施した。
結果と考察
条件ごとの平均寄付額をFigure 1に示す。条件(イヌ・植物)×試行(前半・後半)の分散分析を実施した結果,交互作用が有意傾向であった(F(1,38)=3.66,p<.10)。単純主効果について分析を実施した結果,イヌ条件で前半より後半の寄付額が減少しており(p<.05),後半において植物条件よりイヌ条件の寄付額が少なかった(p<.10)。イヌ条件の参加者は,より戦略的にゲームに取り組んでいた。
一緒にゲームを実施した他の参加者の印象と後半の寄付額との関係について検討するために,相関係数を算出した。イヌ条件においては,後半の寄付額と3回目の印象評定2項目が正の相関(r=.38~.38,p.<.05)を示していた。植物条件においては,後半の寄付額と2回目の印象評定2項目(r=.40~.42,p<.05)および3回目の印象評定5項目(r=.38~.47,p<.05)が正の相関を示していた。他の参加者の印象が良いほど後半の寄付額が多くなっているが,その傾向は植物条件でより顕著であった。
イヌ条件においては,参加者の注意が他の参加者ではなくイヌに向いており,そのために他の参加者の印象が寄付額に影響を与えにくくなっていたと考えられる。イヌと触れ合うことで実験の緊張感が緩和し,余裕が生まれ合理的な判断が可能になった結果,より戦略的な行動が生じた可能性が考えられる。
動物とのふれあいや相互作用により様々な効果が期待されている動物介在教育(Animal Assisted Education: AAE)は,教育現場で活用される機会が増えてきている。AAEの期待される効果の一つとして,学習者間の社会的相互作用の促進があげられる。本研究では,社会的相互作用について検討するため社会的ジレンマの一つである公共財ゲームを用い,イヌの存在が公共財ゲームにおける寄付行動に及ぼす影響について検討した。また,一緒にゲームを実施した他の参加者の印象が寄付額に及ぼす影響についても併せて検討を行った。
方 法
実験参加者は都内の大学に在籍する学生40名であった(男性15名,女性25名,18~24歳)。実験中にイヌと接触するイヌ条件,および植物と接触する植物条件にランダムに割り当てた。募集時には実験中にイヌと接触する可能性があることを伝え,イヌが苦手な人やアレルギー反応が生じる人は参加を控えてもらった。実験開始前に実験内容の説明を文書および口頭で行うとともに,実験参加承諾書に署名を求めた。本研究は日本獣医生命科学大学生命倫理委員会の承認を得て実施している(承認番号S26S-49)。
公共財ゲームは4名もしくは3名一組で実施した。最初に200円を参加者全員に配布した。参加者はその中から,いくらかを寄付するように教示された。寄付金額は0円から200円までの間であり,10円単位で寄付を行うことができた。実験者は参加者から集めた寄付金を2倍にし,参加者に等しく還付した。参加者は還付金と寄付しなかった金額の合計を獲得することができた。公共財ゲームでは参加者全員の寄付金が増えるほど獲得金も増えるが,一人だけが寄付をしないという行動を選択すると,その人の獲得金が最も増加することになる。参加者はより多くの金額を獲得するよう考慮することが求められた。
公共財ゲームの前半(1~5試行)が終了した後に,イヌ(ミックス,オス,2歳)もしくは植物(鉢植えのポトス)を実験室に入れた。イヌもしくは植物に対する参加者のイメージを測定し,その際に参加者は対象に接触した。イメージ測定終了後,公共財ゲームの後半(6~10試行)を実施した。イヌと植物は実験終了まで実験室に留置した。さらに,同じ組でゲームを実施した他の参加者の印象評定をSD法(6項目)により3回(ゲーム開始前・前半終了後・後半終了後)実施した。
結果と考察
条件ごとの平均寄付額をFigure 1に示す。条件(イヌ・植物)×試行(前半・後半)の分散分析を実施した結果,交互作用が有意傾向であった(F(1,38)=3.66,p<.10)。単純主効果について分析を実施した結果,イヌ条件で前半より後半の寄付額が減少しており(p<.05),後半において植物条件よりイヌ条件の寄付額が少なかった(p<.10)。イヌ条件の参加者は,より戦略的にゲームに取り組んでいた。
一緒にゲームを実施した他の参加者の印象と後半の寄付額との関係について検討するために,相関係数を算出した。イヌ条件においては,後半の寄付額と3回目の印象評定2項目が正の相関(r=.38~.38,p.<.05)を示していた。植物条件においては,後半の寄付額と2回目の印象評定2項目(r=.40~.42,p<.05)および3回目の印象評定5項目(r=.38~.47,p<.05)が正の相関を示していた。他の参加者の印象が良いほど後半の寄付額が多くなっているが,その傾向は植物条件でより顕著であった。
イヌ条件においては,参加者の注意が他の参加者ではなくイヌに向いており,そのために他の参加者の印象が寄付額に影響を与えにくくなっていたと考えられる。イヌと触れ合うことで実験の緊張感が緩和し,余裕が生まれ合理的な判断が可能になった結果,より戦略的な行動が生じた可能性が考えられる。