[PE57] ネットへの依存傾向に関する研究(1)
大学生の性格特性との関連を中心に
キーワード:大学生, ネット, 性格
問題と目的
大学生の生活にとってインターネット(以下,ネット)を活用することは必要不可欠となっている。スマートフォン(以下,スマホ)の普及により大学からの学生への連絡はメールを利用したものとなり,Lineによる友達同士の連絡網も日常的なものとなっている。また,大学におけるネットを利用した学習や履修登録の手続きなど大学生活においても大きな役割を果たしている。しかしながら,ネットが日常生活に不可欠になるほどネットを活用できているかどうかが課題となってくる。総務省情報通信政策研究所は2013年6月に「青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査 調査結果報告書」を出している。その中で,キンバリー・ヤングによる「インターネット中毒」(1998)で示された「ネット依存」の概念を示し,広く用いられている「Young20」を試行的に用いて,ウェブによる調査を行い,ネットの利用が日常生活に与える影響について検討している。
本研究では,上記調査との比較を通して,大学生のネットへの依存傾向の現状と性格特性との関連を検討することを目的とする。
方 法
①調査対象者:欠損値のあるものを除外して,大学生554名を分析対象者とした。男性は413名(74.5%),女性は141名(25.5%)であった。平均年齢は19.25歳(SD=1.05)であった。②調査期間:2014年5月から2016年2月までの期間に調査を実施した。③調査手続き:ネットへの依存傾向の調査項目は,総務省(2013)で試行的に用いられた「Young20」の20項目を使用した。「いつもある」から「全くない」の5件法で回答を求めた。性格特性は,村上・村上(2001)の主要5因子性格検査(60項目,「はい」か「いいえ」の2件法)を使用した。調査協力者には統計学的に処理し,研究に利用する旨口頭と文書で了解を得た。
結果と考察
①ネットへの依存傾向に関する分析:「いつもある」の5点から「全くない」の1点まで得点化した。総務省(2013)の結果と比較するため,「ネット依存的傾向」として同様に得点化した。総務省(2013)で示されているヤングの分類に従い,「70点以上(ネット依存的傾向高,以下,高群)」「40-69点(ネット依存的傾向中,以下,中群)」「20-39点(ネット依存的傾向低,以下,低群)」の3区分に分類した。ただし,得点が高いから治療が必要となる訳ではないことが指摘されている。本研究の結果では,「高群」は52名(9.4%)「中群」は302名(54.5%)「低群」は200名(36.1%)であった。総務省(2013)では大学生の結果は「高群」が6.1%,「中群」が45.0%,「低群」が48.9%であった。本研究結果の方が,全体的に得点が高かった。
②ネットへの依存傾向と性格特性との関連:ネット依存的傾向の3つの群ごとに,主要5因子性格特性(外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性)について,一要因の分散分析を行った。その結果,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性の4つの性格特性において有意差が見られた(すべてp<.01)。下位検査(TamhaneのT2)の結果と群別の平均値[SD]を以下に示す。外向性では,高群(15.71 [3.91])<中群(17.24[3.88])<低群(18.24 [3.85])であった。協調性では,高群(18.52[3.05])<中群(19.65[2.74])<低群(20.62[2.61])であった。外向性と協調性では,低群が最も平均値が高く,3つの群間で有意差が見られた。勤勉性では,高群(15.81[2.77])・中群(16.78[3.03])<低群(18.05[2.90])であった。高群と中群の間では有意差は見られず,低群だけ平均値が有意に高かった。情緒安定性では,高群(15.63[3.16])<中群(17.03[3.32])・低群(17.51[3.51])であった。高群だけ平均値が他の2群に比べて有意に低かった。性格特性との関連が見られ,今後,生活環境との関連を検討すべきであると思われる。
大学生の生活にとってインターネット(以下,ネット)を活用することは必要不可欠となっている。スマートフォン(以下,スマホ)の普及により大学からの学生への連絡はメールを利用したものとなり,Lineによる友達同士の連絡網も日常的なものとなっている。また,大学におけるネットを利用した学習や履修登録の手続きなど大学生活においても大きな役割を果たしている。しかしながら,ネットが日常生活に不可欠になるほどネットを活用できているかどうかが課題となってくる。総務省情報通信政策研究所は2013年6月に「青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査 調査結果報告書」を出している。その中で,キンバリー・ヤングによる「インターネット中毒」(1998)で示された「ネット依存」の概念を示し,広く用いられている「Young20」を試行的に用いて,ウェブによる調査を行い,ネットの利用が日常生活に与える影響について検討している。
本研究では,上記調査との比較を通して,大学生のネットへの依存傾向の現状と性格特性との関連を検討することを目的とする。
方 法
①調査対象者:欠損値のあるものを除外して,大学生554名を分析対象者とした。男性は413名(74.5%),女性は141名(25.5%)であった。平均年齢は19.25歳(SD=1.05)であった。②調査期間:2014年5月から2016年2月までの期間に調査を実施した。③調査手続き:ネットへの依存傾向の調査項目は,総務省(2013)で試行的に用いられた「Young20」の20項目を使用した。「いつもある」から「全くない」の5件法で回答を求めた。性格特性は,村上・村上(2001)の主要5因子性格検査(60項目,「はい」か「いいえ」の2件法)を使用した。調査協力者には統計学的に処理し,研究に利用する旨口頭と文書で了解を得た。
結果と考察
①ネットへの依存傾向に関する分析:「いつもある」の5点から「全くない」の1点まで得点化した。総務省(2013)の結果と比較するため,「ネット依存的傾向」として同様に得点化した。総務省(2013)で示されているヤングの分類に従い,「70点以上(ネット依存的傾向高,以下,高群)」「40-69点(ネット依存的傾向中,以下,中群)」「20-39点(ネット依存的傾向低,以下,低群)」の3区分に分類した。ただし,得点が高いから治療が必要となる訳ではないことが指摘されている。本研究の結果では,「高群」は52名(9.4%)「中群」は302名(54.5%)「低群」は200名(36.1%)であった。総務省(2013)では大学生の結果は「高群」が6.1%,「中群」が45.0%,「低群」が48.9%であった。本研究結果の方が,全体的に得点が高かった。
②ネットへの依存傾向と性格特性との関連:ネット依存的傾向の3つの群ごとに,主要5因子性格特性(外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性,知性)について,一要因の分散分析を行った。その結果,外向性,協調性,勤勉性,情緒安定性の4つの性格特性において有意差が見られた(すべてp<.01)。下位検査(TamhaneのT2)の結果と群別の平均値[SD]を以下に示す。外向性では,高群(15.71 [3.91])<中群(17.24[3.88])<低群(18.24 [3.85])であった。協調性では,高群(18.52[3.05])<中群(19.65[2.74])<低群(20.62[2.61])であった。外向性と協調性では,低群が最も平均値が高く,3つの群間で有意差が見られた。勤勉性では,高群(15.81[2.77])・中群(16.78[3.03])<低群(18.05[2.90])であった。高群と中群の間では有意差は見られず,低群だけ平均値が有意に高かった。情緒安定性では,高群(15.63[3.16])<中群(17.03[3.32])・低群(17.51[3.51])であった。高群だけ平均値が他の2群に比べて有意に低かった。性格特性との関連が見られ,今後,生活環境との関連を検討すべきであると思われる。