[PE59] 短大生の学校生活満足度に対する性格因子影響度の推定
hyper-QU(大学版)とNEO-FFIとの分析
Keywords:QU, NEO-FFI, 学校生活満足度
問題と目的
昨今,大学等の学校生活満足度を調査する方法として,hyper-QU大学版(以下,QU)が活用されつつある。片瀬(2015)は,学校生活満足度(以下,満足度)を検討する場合,性格因子の影響を検討する必要性を指摘している。そこで本研究では,“性格因子が満足度に影響を及ぼす”と仮定し,その仮説を検証するとともに影響度を推定することを目的とする。
調査方法
調査対象者は,A短大B学科に平成X年度に入学した女子学生85名である。A校は,2年制2学科構成からなる女子短期大学である。調査時期は,入学年度7月である。調査内容は,QUとNEO-FFIを実施した。NEO-FFIは,神経症傾向,外向性,開放性,調和性,誠実性の5因子性格検査である。
結 果
調査対象者85名の内,全データに欠損がない82名について,QUの所属群間(1満足群,2侵害認知群,3非承認群,4不満足群)について,各性格因子平均値に差があるか分散分析を実施した。各性格因子データは,82名の母集団において,T得点に変換してから分析した。結果をTable 1に示す。それによると,所属群差の主効果が有意となったのは,外向性,開放性,誠実性の因子であった。次にTukey-Kramer法による多重比較を行った結果,“4不満足群”について得点差が有意となる所属群が存在した。そこで,“1満足群”と“4不満足群”のみに着目し,その影響度を検討するため判別分析を行った。結果として,判別モデルは有意(F[2, 55]=17.1***)となり,標準化判別係数は,外向性(0.78***)と誠実性(0.64**)が両群の判別に寄与していることが明らかになった。また,判別的中率については,75.9%と高い数値を示し,さらに判別モデルの相関比(η2)が0.38であったことから,両群を分ける性格因子の具体的な影響度を推定できた。
考 察
本結果は,“性格因子が満足度に影響を及ぼす”という仮説を支持するものである。一方,本結果の適用は,現在のところA短大B学科に限定される。今後,調査対象者を他校の短大生及び大学生等に拡大し,一般化の議論が可能なのか精査する必要がある。
また,女子短大で行われているFD・SD関連の満足度調査については,それらの結果に性格因子的バイアスが存在する可能性を示唆している。したがって,満足度調査の結果解釈には調査対象者の性格集団特性を考慮した検討が必要であると考える。
引用文献
片瀬拓弥 (2015). 学級満足度に対する性格因子の影響度推定:Q-UとBig Fiveを活用して,日本教育心理学会総会発表論文集(57),pp.685
昨今,大学等の学校生活満足度を調査する方法として,hyper-QU大学版(以下,QU)が活用されつつある。片瀬(2015)は,学校生活満足度(以下,満足度)を検討する場合,性格因子の影響を検討する必要性を指摘している。そこで本研究では,“性格因子が満足度に影響を及ぼす”と仮定し,その仮説を検証するとともに影響度を推定することを目的とする。
調査方法
調査対象者は,A短大B学科に平成X年度に入学した女子学生85名である。A校は,2年制2学科構成からなる女子短期大学である。調査時期は,入学年度7月である。調査内容は,QUとNEO-FFIを実施した。NEO-FFIは,神経症傾向,外向性,開放性,調和性,誠実性の5因子性格検査である。
結 果
調査対象者85名の内,全データに欠損がない82名について,QUの所属群間(1満足群,2侵害認知群,3非承認群,4不満足群)について,各性格因子平均値に差があるか分散分析を実施した。各性格因子データは,82名の母集団において,T得点に変換してから分析した。結果をTable 1に示す。それによると,所属群差の主効果が有意となったのは,外向性,開放性,誠実性の因子であった。次にTukey-Kramer法による多重比較を行った結果,“4不満足群”について得点差が有意となる所属群が存在した。そこで,“1満足群”と“4不満足群”のみに着目し,その影響度を検討するため判別分析を行った。結果として,判別モデルは有意(F[2, 55]=17.1***)となり,標準化判別係数は,外向性(0.78***)と誠実性(0.64**)が両群の判別に寄与していることが明らかになった。また,判別的中率については,75.9%と高い数値を示し,さらに判別モデルの相関比(η2)が0.38であったことから,両群を分ける性格因子の具体的な影響度を推定できた。
考 察
本結果は,“性格因子が満足度に影響を及ぼす”という仮説を支持するものである。一方,本結果の適用は,現在のところA短大B学科に限定される。今後,調査対象者を他校の短大生及び大学生等に拡大し,一般化の議論が可能なのか精査する必要がある。
また,女子短大で行われているFD・SD関連の満足度調査については,それらの結果に性格因子的バイアスが存在する可能性を示唆している。したがって,満足度調査の結果解釈には調査対象者の性格集団特性を考慮した検討が必要であると考える。
引用文献
片瀬拓弥 (2015). 学級満足度に対する性格因子の影響度推定:Q-UとBig Fiveを活用して,日本教育心理学会総会発表論文集(57),pp.685