[PE61] 看護学生の就業動機と自己調整
将来の仕事における目標との関連性
Keywords:動機づけ, 自己調整, 看護学生
目 的
本研究では,学生の将来の仕事に対する動機づけおよび自己調整機能の傾向を探るとともに,将来仕事をする上でどのような目標を重視しているかを明らかにする。さらに,目標の性質による動機づけや自己調整機能の差異についても検討を行なう。
方 法
調査対象と時期 A短期大学看護学科の女子看護学生3回生25名(平均年齢21.2歳)を対象に,2016年1月に質問紙調査を実施した。
質問紙 1.就業動機尺度 安達(1998,2001)の自己向上志向(21項目),上位志向(10項目),対人志向(10項目)について5段階評定で回答を求めた。下位尺度ごとの項目の合計を項目数で除したものを下位尺度得点とした。
2.自己調整尺度 五十嵐(2013)の「最適化」(6項目),「選択的一次統制」(4項目),「補償的一次統制」(4項目),「選択的二次統制」(4項目),「補償的二次統制」(4項目)について5段階評定で回答を求めた。下位尺度ごとの項目の得点を合計し,下位尺度得点とした。
3.将来の仕事における目標 将来看護師として仕事をしていく上で,必要と思われる目標を自由記述として記入させた。
結果と考察
将来の仕事に対する動機づけと自己調整機能の程度を把握するため,就業動機および自己調整の各下位尺度について1要因の分散分析を行なった。その結果,就業動機の下位尺度「自己向上志向」と「対人志向」の得点が「上位志向」の得点よりも有意に高かった。自己調整では「最適化」の得点がすべての下位尺度の中で最も高く,「補償的二次統制」の得点は最も低かった(Table 1)。
次に,就業動機と自己調整の下位尺度間の関連性を検討するために,相関係数を算出した。その結果,「自己向上志向」と「対人志向」が「最適化」に有意な正の相関(r=.80, p<.01;r=.53,p<.01),「自己向上志向」と「選択的二次統制」に有意な正の相関が認められた(r=.57,p<.01)。また,就業動機のすべての下位尺度と「選択的一次統制」に有意な正の相関が認められた(自己向上志向:r=.79, p<.01;上位志向:r=.43,p<.05;対人志向:r=.43,p<.05)。
これらのことから,学生は看護師という職業に興味や関心を示し,仕事で人と深く関わろうとする動機やさまざまなことに柔軟に対応しようとする意識が高いと推察される。また,自身が選択した職業や仕事を通して自己成長しようとする高い動機は,目的達成のための選択を肯定的に捉え,困難なことでも取り組んでいこうとする意識や行動と関連することがわかった。
次に,将来看護師として働く上での目標のうち,一番目に記述された25件の目標に着目し,分類を行なった。その結果,知識・技術・能力重視群(n=9),優しさ・思いやり重視群(n=8),自覚・人間的成長重視群(n=8)に分類された。続いて,目標のタイプによる就業動機および自己調整の違いを検討するため,一元配置分散分析を行なった。その結果,就業動機の下位尺度には有意な差は認められなかった。一方,自己調整の下位尺度「補償的一次統制」と「選択的二次統制」において,自覚・人間的成長重視群の得点が知識・技術・能力重視群の得点よりも有意に高かった(F(2,22)=3.79, p<.05; F(2,22)=3.89, p<.05)。結果をFigure 1に示す。
これらのことから,将来の仕事における目標のうち,看護師という職業に対する自覚や人間的成長に価値を置いた目標をもつ学生は,仕事における目的達成のための手段を探索したり,その選択を肯定的に捉える傾向が示された。
本研究では,学生の将来の仕事に対する動機づけおよび自己調整機能の傾向を探るとともに,将来仕事をする上でどのような目標を重視しているかを明らかにする。さらに,目標の性質による動機づけや自己調整機能の差異についても検討を行なう。
方 法
調査対象と時期 A短期大学看護学科の女子看護学生3回生25名(平均年齢21.2歳)を対象に,2016年1月に質問紙調査を実施した。
質問紙 1.就業動機尺度 安達(1998,2001)の自己向上志向(21項目),上位志向(10項目),対人志向(10項目)について5段階評定で回答を求めた。下位尺度ごとの項目の合計を項目数で除したものを下位尺度得点とした。
2.自己調整尺度 五十嵐(2013)の「最適化」(6項目),「選択的一次統制」(4項目),「補償的一次統制」(4項目),「選択的二次統制」(4項目),「補償的二次統制」(4項目)について5段階評定で回答を求めた。下位尺度ごとの項目の得点を合計し,下位尺度得点とした。
3.将来の仕事における目標 将来看護師として仕事をしていく上で,必要と思われる目標を自由記述として記入させた。
結果と考察
将来の仕事に対する動機づけと自己調整機能の程度を把握するため,就業動機および自己調整の各下位尺度について1要因の分散分析を行なった。その結果,就業動機の下位尺度「自己向上志向」と「対人志向」の得点が「上位志向」の得点よりも有意に高かった。自己調整では「最適化」の得点がすべての下位尺度の中で最も高く,「補償的二次統制」の得点は最も低かった(Table 1)。
次に,就業動機と自己調整の下位尺度間の関連性を検討するために,相関係数を算出した。その結果,「自己向上志向」と「対人志向」が「最適化」に有意な正の相関(r=.80, p<.01;r=.53,p<.01),「自己向上志向」と「選択的二次統制」に有意な正の相関が認められた(r=.57,p<.01)。また,就業動機のすべての下位尺度と「選択的一次統制」に有意な正の相関が認められた(自己向上志向:r=.79, p<.01;上位志向:r=.43,p<.05;対人志向:r=.43,p<.05)。
これらのことから,学生は看護師という職業に興味や関心を示し,仕事で人と深く関わろうとする動機やさまざまなことに柔軟に対応しようとする意識が高いと推察される。また,自身が選択した職業や仕事を通して自己成長しようとする高い動機は,目的達成のための選択を肯定的に捉え,困難なことでも取り組んでいこうとする意識や行動と関連することがわかった。
次に,将来看護師として働く上での目標のうち,一番目に記述された25件の目標に着目し,分類を行なった。その結果,知識・技術・能力重視群(n=9),優しさ・思いやり重視群(n=8),自覚・人間的成長重視群(n=8)に分類された。続いて,目標のタイプによる就業動機および自己調整の違いを検討するため,一元配置分散分析を行なった。その結果,就業動機の下位尺度には有意な差は認められなかった。一方,自己調整の下位尺度「補償的一次統制」と「選択的二次統制」において,自覚・人間的成長重視群の得点が知識・技術・能力重視群の得点よりも有意に高かった(F(2,22)=3.79, p<.05; F(2,22)=3.89, p<.05)。結果をFigure 1に示す。
これらのことから,将来の仕事における目標のうち,看護師という職業に対する自覚や人間的成長に価値を置いた目標をもつ学生は,仕事における目的達成のための手段を探索したり,その選択を肯定的に捉える傾向が示された。