The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PE(01-64)

ポスター発表 PE(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 1:30 PM - 3:30 PM 展示場 (1階展示場)

[PE64] 小中学生版セルフモニタリング尺度の作成

臨床的介入における活用を目指して

吉橋由香1, 田倉さやか, 谷伊織3, 永田雅子4 (1.南山大学, 3.東海学園大学, 4.名古屋大学)

Keywords:セルフモニタリング尺度, 小中学生

問題と目的
 近年,発達障害児を対象とした,集団による認知行動療法的なアプローチの有効性が示されてきている(吉橋・宮地他,2008; 神谷・吉橋他,2010; 林・吉橋他,2010; 明翫・飯田他,2011)。
 認知行動療法的アプローチでは,①自分の行動や思考の特徴とその時の感情をセルフモニタリングし,②適応的でない認知を変容させ,③すでに獲得している・もしくは心理教育で身に着けたスキルを日常生活で活用することをサポートする。
 発達障害児は,セルフモニタリングに苦手さを持つため,介入の際には配慮と工夫が必要とされる。セルフモニタリング機能の向上に着目することは,介入の効果を上げるとともに,日常生活での応用にもつながる可能性が高い。支援者も客観的な指標を用いてセルフモニタリングの段階が把握できることは,個人の状態に合わせた介入につながると考えられる。
 これまで小中学生を対象としたセルフモニタリングに関する研究がなされてきており,桜井(1993)など客観的指標として活用が期待される尺度の作成もなされてきてはいるが,その内容が学習や対人関係に限定される。
 以上より,本研究では,桜井(1993)と同様に,セルフモニタリングを「社会的場面からの社会的な適切さに関する情報に基づいて,自分の行動を管理統制すること」というSnyder(1974)の定義を用いるが,モニタリングの対象を,社会的場面のうち対人場面の事象に限定せず,時間感覚,感情,身体感覚まで範囲を広げ,新たに質問内容を構成し,臨床的介入でのアセスメントツールとしての活用を考慮に入れた小中学生版セルフモニタリング尺度を作成することを目的とする。
研 究 1
方法 同市内の小学校2校に在籍する3年生から6年生までの小学生のうち,保護者より研究の趣旨に同意を得た児童948名(3年生245名,4年生251名,5年生215名,6年生237名,男子465名,女子482名,性別不明1名)を調査対象とした。
 セルフモニタリング尺度の構成は,「時間感覚」「感情」「身体感覚」「社会的場面」の4つを上位カテゴリとし,それぞれ①気づき・観察②評価(社会的情報との照合)③行動(管理・統制行動)の3段階を想定した。カテゴリ別に各段階5項目ずつ,合計60項目を作成し,4件法で回答を求めた。なお,「社会的場面」のうち1項目は桜井(1993)から採用をした。
結果 作成した尺度について,因子分析を行ったところ,一次元性が推測され,一因子構造の尺度として扱うこととした。また,因子負荷量と項目内容から,項目数34項目が妥当と考えられた。採用された項目の内容は,「時間感覚」5項目,「感情」9項目,「身体感覚」6項目,「社会的場面」14項目,全体で,「気づき・観察」9項目,「評価」13項目,「行動」12項目だった。α係数は.94であり,十分な信頼性が認められた。
 次に,項目精選後の34項目をピックアップして尺度合計点を算出した。さらに,妥当性検討のため,吉橋・田倉他(2013)が桜井(1992)の自己意識尺度を検討し,採用した13項目を用いて公的自己意識と私的自己意識との相関を検討した。結果,セルフモニタリング尺度と公的・私的自己意識の間に,いずれも有意な正の相関がみられた(r=.30,r=.60,いずれもp<.01)。
研 究 2
方法 中学校1校に在籍する,1年生から3年生のうち,保護者より研究の趣旨に同意を得た生徒552名(1年生178名,2年生190名,3年生182名,学年不明2名,男子268名,女子281名,性別不明3名)を調査対象とした。
 研究1で採用された34項目を用い,内容に影響しない程度に一部項目の表現を変更し,調査を実施した。
結果 因子分析を行ったところ,一次元性が推測され,一因子構造の尺度として扱う妥当性が確認された。α係数は.92であり,十分な信頼性が認められた。
考   察
 本研究で作成したセルフモニタリング尺度は,自己意識尺度とも高い相関を示しており,自己に対する関心を測る尺度として有用と考えられた。
今後は,作成した尺度を用いてセルフモニタリングの発達的変化の検討を行い,発達段階に合わせた尺度の活用方法や,臨床的な有用性の検討を行っていきたい。
付   記
 本研究は,JSPS科研費(研究課題番号:24730600)の助成を受けて行った。