[PE70] 中国延辺地区の留守家族の子どもの学校適応に及ぼす影響
児童期・思春期の愛着(安心感・親密性)に着目して
Keywords:中国延辺地区, 留守家族, 学校適応
問題と目的
中国延辺地区は朝鮮半島に隣接する地域で,教育への関心が高くその費用を捻出するために多くの保護者が出稼ぎにより生計を立てている。そのために延辺地区の子どもたちの学校不適応傾向が近年懸念されている社会背景がある。親との関係の在り方が学校への不適応傾向と関連している(姜・河内2010,戸ヶ崎・坂野1997)という見解や親への子どもの安心感や信頼感が学習意欲に関係するといった知見も得られている(中井・庄司2008)。そこで,本研究では延辺地区に見られる学校不適について親子の愛着関係(安心感と親密性)からその影響について検討を行う。
方 法
① 調査対象:中国延辺地区に住む小学生(4年:43,6年56)及び中学生(中学2年生:56人)を対象とした。
② 調査企画:2014年12月上旬の2週間
③ 方法:質問紙による調査
対象者の属性等,出稼ぎ状況,学校適応尺度(集団適応,学習適応,仲間適応,教師関係の4因子からなる27項目)愛着尺度(内的帰属安心,親密・表出,回避・非表出,外的帰属安心,分離不安の5因子からなる22項目)を実施
④分析方法:児童生徒の学校適応感と愛着の関連について3要因の分散分析及び,重回帰分析により検討した。
結果及び考察
① 対象者の状況
延辺地区のA小学校4.6年生及びB中学校2年合わせてでは105人(68%)が留守家族の児童で大部分が祖父母との同居であった。
② 学校適応と親との関連
留守家族の児童を対象に学校適応尺度の得点の平均値を項目数で割った数値を従属変数として性別及び学年と出稼ぎに行っている親(父・母・両親)の3要因の分散分析を行った。その結果,出稼ぎに行った親の主効果及び性別×学年の交互作用が有意であった。そこで,出稼ぎに行った親の主効果について多重比較を行ったところ両親が出稼ぎに行った児童生徒の得点が有意に低かった。交互作用につても単純主効果を検討した結果小学校6年と中学2年の男児が女児より有意に学校適応得点が低かった。以上のことから,家族の要である両親が揃って家に居ないという状況と思春期という発達における揺らぎの大きい時期とが複雑に関連して学校適応に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
③ 学校適応と親への愛直との関連
学校適応の下位尺度の因子項目得点を基準変数とし,親への愛着尺度の各下位尺度の因子項目得点を説明変数とする重回帰分析を行った。
その結果,学校適応の「学習適応」と「集団適応」「教師関係」の3因子において母親への愛着尺度の「内的帰属安心」と正の有意な影響があることが分かった。
つまり,母親への内面的帰属意識により得られる安心感を持つことが,学習意欲や集団適応,教師適応といった社会性の発揮や学びへの態度に影響を及ぼすことも明らかになった。
教師へのインタビューから
今回,調査協力を頂いた教師に本調査の結果を延辺地区の学校まで持参して教師からの見解を収集した。その結果,教師は両親と同居している児童生徒の学校適応が良いこと,祖父母と同居している留守家族の児童生徒の学校適応が最も悪いこと指摘していた。また,担任教師たちの留守家族への配慮について回答してもらった結果,「親と関連するテーマ」などはできるだけ題材に用いない工夫をしたり,日常の生活への支援(買い物の手伝など)を時間外で実施している教師もいた。
一方で,児童生徒の方が「教師との関係」に問題を抱えている場合も多いようで,教師の支援もその辺りを事前に把握して,無理はさせないように見守ることも重要なのかもしれない。
中国延辺地区は朝鮮半島に隣接する地域で,教育への関心が高くその費用を捻出するために多くの保護者が出稼ぎにより生計を立てている。そのために延辺地区の子どもたちの学校不適応傾向が近年懸念されている社会背景がある。親との関係の在り方が学校への不適応傾向と関連している(姜・河内2010,戸ヶ崎・坂野1997)という見解や親への子どもの安心感や信頼感が学習意欲に関係するといった知見も得られている(中井・庄司2008)。そこで,本研究では延辺地区に見られる学校不適について親子の愛着関係(安心感と親密性)からその影響について検討を行う。
方 法
① 調査対象:中国延辺地区に住む小学生(4年:43,6年56)及び中学生(中学2年生:56人)を対象とした。
② 調査企画:2014年12月上旬の2週間
③ 方法:質問紙による調査
対象者の属性等,出稼ぎ状況,学校適応尺度(集団適応,学習適応,仲間適応,教師関係の4因子からなる27項目)愛着尺度(内的帰属安心,親密・表出,回避・非表出,外的帰属安心,分離不安の5因子からなる22項目)を実施
④分析方法:児童生徒の学校適応感と愛着の関連について3要因の分散分析及び,重回帰分析により検討した。
結果及び考察
① 対象者の状況
延辺地区のA小学校4.6年生及びB中学校2年合わせてでは105人(68%)が留守家族の児童で大部分が祖父母との同居であった。
② 学校適応と親との関連
留守家族の児童を対象に学校適応尺度の得点の平均値を項目数で割った数値を従属変数として性別及び学年と出稼ぎに行っている親(父・母・両親)の3要因の分散分析を行った。その結果,出稼ぎに行った親の主効果及び性別×学年の交互作用が有意であった。そこで,出稼ぎに行った親の主効果について多重比較を行ったところ両親が出稼ぎに行った児童生徒の得点が有意に低かった。交互作用につても単純主効果を検討した結果小学校6年と中学2年の男児が女児より有意に学校適応得点が低かった。以上のことから,家族の要である両親が揃って家に居ないという状況と思春期という発達における揺らぎの大きい時期とが複雑に関連して学校適応に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
③ 学校適応と親への愛直との関連
学校適応の下位尺度の因子項目得点を基準変数とし,親への愛着尺度の各下位尺度の因子項目得点を説明変数とする重回帰分析を行った。
その結果,学校適応の「学習適応」と「集団適応」「教師関係」の3因子において母親への愛着尺度の「内的帰属安心」と正の有意な影響があることが分かった。
つまり,母親への内面的帰属意識により得られる安心感を持つことが,学習意欲や集団適応,教師適応といった社会性の発揮や学びへの態度に影響を及ぼすことも明らかになった。
教師へのインタビューから
今回,調査協力を頂いた教師に本調査の結果を延辺地区の学校まで持参して教師からの見解を収集した。その結果,教師は両親と同居している児童生徒の学校適応が良いこと,祖父母と同居している留守家族の児童生徒の学校適応が最も悪いこと指摘していた。また,担任教師たちの留守家族への配慮について回答してもらった結果,「親と関連するテーマ」などはできるだけ題材に用いない工夫をしたり,日常の生活への支援(買い物の手伝など)を時間外で実施している教師もいた。
一方で,児童生徒の方が「教師との関係」に問題を抱えている場合も多いようで,教師の支援もその辺りを事前に把握して,無理はさせないように見守ることも重要なのかもしれない。