[PE80] 学校主導による学校予防教育(短縮版)の実施と効果
トップ・セルフ「感情の理解と対処の育成」プログラムの実施を通して
Keywords:予防教育, 児童, 感情
目 的
学校におけるいじめや不登校などの問題は,年々深刻化している。問題が起こってからの事後対応のみならず,抜本的な対応が急務となる。
山崎他(2011)は,ユニバーサル予防教育「『いのちと友情』の学校予防教育」トップ・セルフ(TOP SELF: Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)を開発した。この教育は,ベース総合教育とオプショナル教育から成り,前者は健康や適応の問題の総合的な予防を,後者はいじめなどの特定の問題に特化した教育内容となる。
さて,ベース総合教育はさらに細分化され,4つのプログラム群で構成されるが,その一つに「感情の理解と対処の育成」がある。このプログラムは,内田・山崎(2012)により理論的枠組みが構成され,内田・山崎(2013,2015)を中心にプログラム内容が構築後,学校における実証的な介入研究データが蓄積されつつある。
このうち,心理学に精通し,訓練を積んだ授業者が実施した場合では,一部を除き,その効果が確認されている(賀屋他,2014;福田他,2013;安田他,2012;横嶋他2013,2014)。また,実施訓練を積んだ者が授業補助につき,学校主導で行った場合(Uchida & Yamasaki,2015)や,補助はつかず,学校主導で行った場合(未発表)においても,同様の効果を確認している。上記は,いずれも各学年全8回(または7回)からなるプログラムを実施した結果である。しかし,現場では学校カリキュラムにあわせ,より簡便に実施可能なプログラムが求められている。本研究では,6年生を対象に,プログラムの短縮版を作成ならびに実施し,その教育効果検証の実施を目的とした。なお,実施は学校主導の形を取り,検証を行った。
方 法
教育対象者と時期 A小学校6年生4クラスを対象に実施した。最終の分析対象者は120名(男児44名,女児76名)であった。
教育効果測定ツール 児童用感情調整尺度(The Understanding and Regulating Emotions Scale for Children(URES-C))の他者感情対応方略版を使用した。この尺度は効果評価測定用に開発され,学習目標を反映した項目となっている。他者感情の同定,理解,対応の3下位尺度,各3項目で構成され,5件法(1 まったくあてはまらない〜5 とてもよくあてはまる)で回答を求めた。標準化過程においては高い信頼性と内容的妥当性の検証が完了している(たとえば福田他,2013)。
手続き 6年生では,他者感情をターゲットとし,教育を実施した。通常版の内容を抜粋する形で,他者感情の同定,理解,対応の順に教育内容を構成し,学校主導で実施した。また,教育効果検証のため,プログラム実施前後1週間以内に,上記の測度を加えた計4尺度を実施した。なお,他の尺度は別の研究目的のため,実施された。
結果と考察
教育効果検証のため,時期(2)×性(2)の二要因分散分析を行った(Table 1)。その結果,総合得点と他者感情の理解では,時期の有意な主効果が確認された。しかし,他者感情の同定と他者感情への対応では,有意な教育効果は確認されなかった。以上のように,教育効果は部分に示された。すべてに確認されなかった原因が,実施期間の短さによるものなのか,教育内容の伝達不足からなるものなのか,検証が必要であろう。今後は,学校現場における円滑な実施と教育内容の質の高さを両立したプログラムへ高める作業が求められる。
学校におけるいじめや不登校などの問題は,年々深刻化している。問題が起こってからの事後対応のみならず,抜本的な対応が急務となる。
山崎他(2011)は,ユニバーサル予防教育「『いのちと友情』の学校予防教育」トップ・セルフ(TOP SELF: Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)を開発した。この教育は,ベース総合教育とオプショナル教育から成り,前者は健康や適応の問題の総合的な予防を,後者はいじめなどの特定の問題に特化した教育内容となる。
さて,ベース総合教育はさらに細分化され,4つのプログラム群で構成されるが,その一つに「感情の理解と対処の育成」がある。このプログラムは,内田・山崎(2012)により理論的枠組みが構成され,内田・山崎(2013,2015)を中心にプログラム内容が構築後,学校における実証的な介入研究データが蓄積されつつある。
このうち,心理学に精通し,訓練を積んだ授業者が実施した場合では,一部を除き,その効果が確認されている(賀屋他,2014;福田他,2013;安田他,2012;横嶋他2013,2014)。また,実施訓練を積んだ者が授業補助につき,学校主導で行った場合(Uchida & Yamasaki,2015)や,補助はつかず,学校主導で行った場合(未発表)においても,同様の効果を確認している。上記は,いずれも各学年全8回(または7回)からなるプログラムを実施した結果である。しかし,現場では学校カリキュラムにあわせ,より簡便に実施可能なプログラムが求められている。本研究では,6年生を対象に,プログラムの短縮版を作成ならびに実施し,その教育効果検証の実施を目的とした。なお,実施は学校主導の形を取り,検証を行った。
方 法
教育対象者と時期 A小学校6年生4クラスを対象に実施した。最終の分析対象者は120名(男児44名,女児76名)であった。
教育効果測定ツール 児童用感情調整尺度(The Understanding and Regulating Emotions Scale for Children(URES-C))の他者感情対応方略版を使用した。この尺度は効果評価測定用に開発され,学習目標を反映した項目となっている。他者感情の同定,理解,対応の3下位尺度,各3項目で構成され,5件法(1 まったくあてはまらない〜5 とてもよくあてはまる)で回答を求めた。標準化過程においては高い信頼性と内容的妥当性の検証が完了している(たとえば福田他,2013)。
手続き 6年生では,他者感情をターゲットとし,教育を実施した。通常版の内容を抜粋する形で,他者感情の同定,理解,対応の順に教育内容を構成し,学校主導で実施した。また,教育効果検証のため,プログラム実施前後1週間以内に,上記の測度を加えた計4尺度を実施した。なお,他の尺度は別の研究目的のため,実施された。
結果と考察
教育効果検証のため,時期(2)×性(2)の二要因分散分析を行った(Table 1)。その結果,総合得点と他者感情の理解では,時期の有意な主効果が確認された。しかし,他者感情の同定と他者感情への対応では,有意な教育効果は確認されなかった。以上のように,教育効果は部分に示された。すべてに確認されなかった原因が,実施期間の短さによるものなのか,教育内容の伝達不足からなるものなのか,検証が必要であろう。今後は,学校現場における円滑な実施と教育内容の質の高さを両立したプログラムへ高める作業が求められる。