The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 4:00 PM - 6:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PF01] 一般青年が日常生活で感じるモラル・ジレンマ

予備的検討

本間優子 (新潟青陵大学)

Keywords:モラル・ジレンマ, 日常生活, 青年

目   的
 近年,若者のモラルの低下が問題として取り上げられている。具体的には,モラルの欠如したSNSへの投稿,違法ドラッグの摂取などを挙げることができる。長尾・相賀(2015)は,少年院入所中の非行少年に対し,生活場面(学校,家庭,職場),交友関係,院内生活で感じるモラル・ジレンマについて自由記述を求めた。記述された内容について,モラル・ジレンマが成立しているものは生活場面(学校,家庭,職場)では全体の34.38%(n=64のうち22名),交友関係については22.7%(n=66のうち15名),院内生活については23.9%(n=67のうち16名)であり,残りはジレンマは成立していても,道徳的価値に疑問が残る内容や,内容が複雑すぎる等,モラル・ジレンマとして成立しておらず,非行少年の過半数以上がモラル・ジレンマをきちんと認識できていない可能性を示唆している。
 大学生を対象としたモラルに関する研究は数多くあるが(e.g., 佐藤, 2014; 藤田,2013; 広田,2012; 林,2005),モラル・ジレンマを適切に感じることができない一般青年は,実態としてどれくらい存在するかについてはこれまで検討されていない。様々なニュース報道により,一般青年においてもモラルの低下から,本来ジレンマを感じるべき事柄にモラル・ジレンマを感じていない可能性を指摘できる。そこで,本研究は長尾・相賀(2015)を参考に,予備的検討として,一般青年が日常生活でどのくらいの割合でモラル・ジレンマを感じているのか,その出現率について非行少年と比較を行うことを目的とした。
方   法
対象者 調査対象は大学2年生66名であった。
調査内容
 モラル・ジレンマについて 長尾・相賀(2015)に基づき,①「学校・家庭・アルバイト先註(どれか1つを選択)」,②「交友関係」という場面を指定し,①,②それぞれの場面において,これまでモラル・ジレンマを感じた経験が「ある」か「ない」かにそれぞれ丸をつけてもらい,「ある」に丸をつけた場合は,その内容について自由記述をしてもらった。なお,モラル・ジレンマについて理解していない被験者もいると思われるため,モラル・ジレンマとはどういうものか,その具体例を調査開始前に説明を行った上で調査を行った。
倫理的配慮 本研究は,新潟青陵大学倫理審査委員会において審査を受け,承認を得ている。
結   果
 長尾・相賀(2015)の被験者は全員男性であるため,分析は男女込みにして行った。①「学校・家庭・アルバイト先(どれか1つを選択)」,②「交友関係」の両方にモラル・ジレンマを感じたことがあると回答し,自由記述もなされている被験者は24名(36.4%),①のみ「ある」と回答し,自由記述もなされている被験者は7名(10.6%),①,②ともに「ある」だが,自由記述はなされていない被験者は3名(4.5%),①,②とも「ない」の被験者は29名(43.9%),①については「ない」,②については「ある」で自由記述がなされている被験者が1名(1.5%),「その他」として,①については「ある」で自由記述がなされているが,②については「わからない」,および「ある」に丸をつけるが,内容については忘れた,と記述された被験者が各々1名ずつ(計3.1%)であった。
考   察
 本研究から,①,②とも「ある」と回答し自由記述もなされている一般青年は36.4%であり,長尾・相賀(2015)で示された非行少年におけるパーセンテージ(①については34.38%,②については22.7%),よりは多いものの,①,②とも「ない」の被験者は29名(43.9%)おり,一般青年においてもモラル・ジレンマを適切に感じていない者は数多く存在する可能性を示した。今後は得られた自由記述について,KJ法によるカテゴリー化を行っていきたい。さらに,本研究は非行少年と比較を行うため,同数の被験者を対象としたが,被験者数66名は少ないため,被験者を増やしてもパーセンテージは変化しないかについて,再度確認を行うことが必要である。
文   献
長尾貴志・相賀啓太郎(2015).モラルジレンマ集会の充実化に向けた取り組みについて―資料作りを通して見えてきたもの―. 日本道徳性発達実践学会第15回大会要項.24-25.
謝   辞
 本研究は新潟青陵大学共同研究費の助成を受けた。
註:長尾・相賀(2015)では「アルバイト先」ではなく,「職場」だが,本研究は大学生を対象としているため,「アルバイト先」に修正し,「院内生活」については調査項目から削除した。