The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 4:00 PM - 6:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PF58] 義援金寄付行動に関する探索的研究(5)

掲示物および被災地支援経験の有無の効果についての検討

友野隆成 (宮城学院女子大学)

Keywords:援助行動, 東日本大震災, 義援金

目   的
 友野(2015)は,東北地方の女子大学の大学祭で義援金募集活動を行いながら簡便な実験および調査を実施し,被災地に関する情報の掲示が募金額に影響を与えることを示唆している。そのことを踏まえ,本研究では被害が大きい割に義援金配分が相対的に少ない岩手県に特化した情報を掲示した場合としない場合および,研究協力者の被災地支援経験の有無によって寄付される募金額に違いがみられるかについての検討を目的とする。
方   法
研究協力者
 研究協力者は,2015年10月中旬に開催された,宮城学院女子大学2015年度大学祭来場者のうち,義援金を寄付した244名であった。本研究では,掲示物の効果を検討するために条件設定された時間帯に義援金を寄付し,かつアンケートに回答した68名(男性20名,女性48名;平均年齢=20.62歳,SD=7.14歳)のみを分析対象とした。
実施方法
 友野(2015)同様,大学祭開催中の建物内廊下のスペースに,募金箱および掲示物を設置した。その際,(1)特に何も掲示しない条件(掲示物無条件),(2)岩手県の復興状況および,集まった義援金はすべて岩手県に寄付される旨掲示した条件(掲示物有条件)を,2日間でそれぞれ1時間ずつ,計4時間実施した。通常の義援金募集活動と同様,実験者は大学祭来場者に任意の金額を募金箱に投入してもらうように声掛けを実施した。そして,同意が得られた研究協力者に対し,以下に示す質問項目に対する回答を,アンケート用紙に記入する形式によって求めた。
質問項目
 性別,年齢,職業,出身地,義援金寄付の動機,寄付した募金額,被災地支援の活動経験の有無,感想を尋ねた。
結   果
出身地の度数分布
 出身地の度数分布を算出したところ,宮城県が50名(73.5%)であり,他県は少数であった。
二元配置分散分析
 被災地支援の活動経験の有無および条件の違いによって申告された募金額に差異がみられるかどうか検討するために,被災地支援の活動経験の有無および条件をそれぞれ独立変数,申告された募金額を従属変数とする二元配置分散分析を行った。その結果,1%水準で交互作用が有意であった(F(1, 64)=7.67,p<.01)。単純主効果検定の結果,掲示物無条件において,被災地支援の活動経験の有群と無群との間に1%水準で有意差が認められ,活動経験無群よりも有群の方が,申告募金額が多かった。しかし,掲示物有条件においては群間に有意差は認められなかった。一方,活動経験有群において,掲示物無条件と有条件の間に1%水準で有意差が認められ,有条件よりも無条件の方が,申告募金額が多かった。しかし,活動経験無群においては,条件間に有意差は認められなかった。
考   察
 本研究では,被災地支援の活動経験が有る者に対して,被災地の情報の掲示をするよりも寧ろ何も掲示しない方が寄付を促す可能性があることが示された。今回の掲示物の内容は岩手県に限定された情報であり,寄付先も多くの協力者の出身地と異なる場所に限定されていたため,そのことが却って寄付を抑制してしまったのかもしれない。
 本研究は,友野(2015)同様研究実施環境の特殊性や申告された募金額の虚偽性の問題など,結果の一般化を阻む様々な要因が残存している。これらについて,今後更なる検討が望まれる。
注)本研究は,筆者の指導のもとに宮城学院女子大学学芸学部心理行動科学科の必修科目である「心理行動実践セミナー」(2015年度)の一環として実施されたものである。本研究を遂行するにあたり,実験者として参加した2015年度受講生,および義援金を寄付していただいた研究協力者の皆さまに深謝申し上げる。また,本研究は日本心理学会第5回“東日本大震災からの復興のための実践活動及び研究”助成の補助を受けた。なお,本研究において集まった義援金は,被災3県(岩手県・宮城県・福島県)のうち被害が大きい割に未だ義援金配分の少ない岩手県にすべて寄付された。