The 58th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表 PF(01-64)

ポスター発表 PF(01-64)

Sun. Oct 9, 2016 4:00 PM - 6:00 PM 展示場 (1階展示場)

[PF60] 大学生の自己観・世界観の好ましさと首尾一貫感覚・抑うつとの関連

20答法を用いた自己観・世界観の好ましさの評定

磯和壮太朗1, 三宮真智子2 (1.大阪大学大学院, 2.大阪大学大学院)

Keywords:首尾一貫感覚, 抑うつ, 自己観・世界観

問題と目的
 一人一人が自律し,安定した人格を備えたうえで,他者と協働しつつ人生を有意義に生きていくための力の候補として,首尾一貫感覚(Sense of Coherence:SOC)が挙げられる。SOCは,自分の内外で起こることは把握可能であり,それに対処することは可能であり,さらに,起こることは心身を投入する価値があるという確信から成る,ストレス対処・健康保持能力である。(Antonovsky, 1987, 山崎・吉井監訳, 2001)。SOCは健康や幸福感,QOLとも関連する概念であり(戸ヶ里, 2008),教育の場でSOCを高めるよう働きかけることは,高い教育的意義を持つと考えられる。
 大学生のSOCと抑うつの間には強い負の相関関係がある(志渡・澤目・上原・佐藤・池森・長谷川, 2011)。SOCは対処資源の動員力であり,他者や環境をエネルギー源とするものであると考えられている(山崎, 2008)が,これは単に単純に自己観や,その人を取り巻く世界観が肯定的(本人にとって好ましいもの)であることを意味している可能性がある。SOCと抑うつとの負の関係を説明するもののうち,自己観や世界観が肯定的であることはどれくらいの相関を説明するのであろうか。本研究では,自己観・世界観の測定に20答法を用いて,本人が意識的にアクセスすることが可能な自己観・世界観と,SOC,抑うつとの関係を検討する。
方   法
 20答法は自己に強く焦点を当て,「私は」に続く文章を作成するものである。回答者の負担と調査項目観の影響を考慮し,2回に分けて調査を実施した。
調査時期 2016年1月上旬・中旬
調査対象者 A外国語大学大学生 183名
分析対象者 2回の質問紙の対応が取れ,回答中断や欠損値がなかった76名(男性21名,女性55名,平均20.75(SD:0.79)歳)
調査内容(本稿で報告しないものは省略)
調査用紙A:心理尺度
1.SOCを測定する尺度として,人生の志向性に関する質問票(Antonovsky,1987 山崎・吉井監訳, 2001)の13項目版を使用した。
2.抑うつを測定する尺度として,CES-D尺度(島・鹿野・北村・浅井, 1985)を使用した。
調査用紙B:20答法
 山田(1989)で用いられた教示文を参考に,「自己」についての20答法,「世界」についての20答法の順で回答を求めた。その後,記述した項目が自分にとって好ましいかどうかについて,5件法での回答を求めた。
結果と考察
 抑うつ,SOC,自己の好ましさ,世界の好ましさの各得点を算出し,相関分析,及び,抑うつとそれぞれの変数に対して,その他の変数を統制した偏相関分析を行った(Table 1)。
 その結果,抑うつとSOC,自己の好ましさ,世界の好ましさそれぞれの間に有意な負の相関が見出された。また,偏相関においても抑うつとSOCの間には強い負の相関関係が,抑うつと自己の好ましさの間には中程度の負の相関関係が見出された。このことから,抑うつとSOCの関係,及び,今回測定された自己の好ましさとの関係は,多くの部分が相互に独立していることが示された。