[PF64] 大学生の不登校傾向と大学適応感との関連
Keywords:大学生, 不登校傾向, 大学適応感
問題と目的
大学生の不登校は,中途退学や引きこもり,ニートとの関連から注目されてきた。水田他(2009)の全国調査によると,大学生の不登校者数の割合は0.7~2.9%と推定されている。これは,小学校の0.36%,中学校の2.69%,高等学校の1.67%(文部科学省,2015)と比較しても決して少ないとは言えない。大学側も欠席率や単位取得状況等から不登校を早期に発見し,支援に結び付けようとする試みが行われている(最上他,2008)。しかし,支援しようにも連絡が取れない,相談機関に繋いでも来談しない,来談しても中断となる等支援を回避する学生も多い(水田他,2009)。
松原他(2006)は,不登校傾向を規定する要因を検討する中で,「大学へ行きたくない」という気分や意識に大学への不適応感が大きく影響していると述べている。小中学校や高等学校の不登校は,学校適応感との関連で論じられることが多い(野崎他,2012; 佐藤,2013; 石田・吉田,2015他多数)。しかし,大学では,不登校と大学適応感を関連づけた研究はほとんど見当たらない。そこで本研究では,不登校傾向と大学適応感がどのように関連するかを検討する。
方 法
対象者 工科系私立大学の文理融合をテーマとした学科の1年生から3年生を対象とした。研究に先立ち,研究趣旨とプライバシー保護,研究参加の自由について説明を行った。その結果10人が辞退し,さらに欠席や記入漏れを除外したところ,有効回答者数は,1年生37人,2年生56人,3年生42人であった。
質問紙 不登校傾向調査と大学適応感調査の2種類の質問紙を作成した。不登校傾向は,堀井(2013)の大学生不登校傾向尺度を使用した。大学生不登校傾向尺度は,登校回避行動と登校回避感情の二つの要因(計12項目)から構成されており,7件法で評価する。大学適応感については,メンタルヘルス尺度(松原他,2006),高下(2011)の大学適応感に関する質問項目,中村・松田(2012)の就学意欲の尺度と大学生活の意識に関する尺度,大久保・青柳(2003)の大学生用適応感尺度を参考に,大学適応感の要因である対人関係,学業,大学生活ごとに質問項目を収集し,計19項目を5件法で評価した。
手続き 調査はいずれも2016年4月に必修科目の授業の空き時間を利用して行った。
倫理的配慮 研究協力についての同意は,書面と口頭にて行い,途中での辞退も保証されていた。
結果と考察
表1に学年ごとの不登校傾向と大学適応感との相関係数を示した。
不登校傾向と大学適応感との相関係数は,1年生では-.467,2年生では-.458であり,中程度の相関が認められた。しかし,3年生の相関係数は,-.225であった。不登校傾向及び適応感の要因ごとに検討すると,1年生では不登校傾向と対人関係との相関が-.633,登校回避感情と学業との相関が-.578と強い関連がみられた。2年生では,不登校傾向と,学業及び大学生活が中程度の相関を示した(それぞれ-.370,-.419)。中でも登校回避感情と適応感は-.502とこの学年で最も高い数値を示した。3年生では,不登校傾向と適応感との相関係数は小さかったが,その一方で,不登校傾向と学業との相関が-.431と中程度の相関を示した。
以上のことから,大学生の不登校傾向と大学適応感との関連には,1年生,2年生,3年生と学年ごとに特徴があることがわかった。
大学生の不登校は,中途退学や引きこもり,ニートとの関連から注目されてきた。水田他(2009)の全国調査によると,大学生の不登校者数の割合は0.7~2.9%と推定されている。これは,小学校の0.36%,中学校の2.69%,高等学校の1.67%(文部科学省,2015)と比較しても決して少ないとは言えない。大学側も欠席率や単位取得状況等から不登校を早期に発見し,支援に結び付けようとする試みが行われている(最上他,2008)。しかし,支援しようにも連絡が取れない,相談機関に繋いでも来談しない,来談しても中断となる等支援を回避する学生も多い(水田他,2009)。
松原他(2006)は,不登校傾向を規定する要因を検討する中で,「大学へ行きたくない」という気分や意識に大学への不適応感が大きく影響していると述べている。小中学校や高等学校の不登校は,学校適応感との関連で論じられることが多い(野崎他,2012; 佐藤,2013; 石田・吉田,2015他多数)。しかし,大学では,不登校と大学適応感を関連づけた研究はほとんど見当たらない。そこで本研究では,不登校傾向と大学適応感がどのように関連するかを検討する。
方 法
対象者 工科系私立大学の文理融合をテーマとした学科の1年生から3年生を対象とした。研究に先立ち,研究趣旨とプライバシー保護,研究参加の自由について説明を行った。その結果10人が辞退し,さらに欠席や記入漏れを除外したところ,有効回答者数は,1年生37人,2年生56人,3年生42人であった。
質問紙 不登校傾向調査と大学適応感調査の2種類の質問紙を作成した。不登校傾向は,堀井(2013)の大学生不登校傾向尺度を使用した。大学生不登校傾向尺度は,登校回避行動と登校回避感情の二つの要因(計12項目)から構成されており,7件法で評価する。大学適応感については,メンタルヘルス尺度(松原他,2006),高下(2011)の大学適応感に関する質問項目,中村・松田(2012)の就学意欲の尺度と大学生活の意識に関する尺度,大久保・青柳(2003)の大学生用適応感尺度を参考に,大学適応感の要因である対人関係,学業,大学生活ごとに質問項目を収集し,計19項目を5件法で評価した。
手続き 調査はいずれも2016年4月に必修科目の授業の空き時間を利用して行った。
倫理的配慮 研究協力についての同意は,書面と口頭にて行い,途中での辞退も保証されていた。
結果と考察
表1に学年ごとの不登校傾向と大学適応感との相関係数を示した。
不登校傾向と大学適応感との相関係数は,1年生では-.467,2年生では-.458であり,中程度の相関が認められた。しかし,3年生の相関係数は,-.225であった。不登校傾向及び適応感の要因ごとに検討すると,1年生では不登校傾向と対人関係との相関が-.633,登校回避感情と学業との相関が-.578と強い関連がみられた。2年生では,不登校傾向と,学業及び大学生活が中程度の相関を示した(それぞれ-.370,-.419)。中でも登校回避感情と適応感は-.502とこの学年で最も高い数値を示した。3年生では,不登校傾向と適応感との相関係数は小さかったが,その一方で,不登校傾向と学業との相関が-.431と中程度の相関を示した。
以上のことから,大学生の不登校傾向と大学適応感との関連には,1年生,2年生,3年生と学年ごとに特徴があることがわかった。