[PF66] 集団社会的スキル訓練と学校行事,特別活動,総合的な学習の時間,道徳を関連づけた実践的研究
キーワード:集団社会的スキル訓練, 教育課程, 中学校
問題と目的
集団社会的スキル訓練(以下,集団SST)は,学級を単位として道徳や特別活動等教科外の学習に位置づけられ実践されている。これまでに,孤独感の低減や自尊感情を高める等の効果が確認されている(e.g., 金山・佐藤・前田, 2004; 渡辺・山本, 2003)。しかし,いずれの研究も単発的に集団SSTを行っており,集団SSTを年間計画として教育課程に位置づけていないものが多い。
そこで本研究では,中学校において学校行事,特別活動,総合的な学習の時間,道徳と集団SSTを関連づけて教育課程に位置づけ,学習に対する動機づけと般化を促し,社会的スキルの変容と主観的適応感への効果を検討することを目的とした。
方 法
研究協力者 公立中学校1年生3学級120名(男子62名,女子58名)の生徒であった。
実施者 集団SSTは,第一著者がティームティーチングのT1として,1年生120名全員を対象に一斉に授業を行い,1年団教員全員が適宜T2として関わった。
目標スキル 従来の「上手な聴き方」,「上手な断り方」等の基本的な社会的スキルを組み合わせた「協力のスキル」,「正義のスキル」,「自己尊重のスキル」を目標スキルとした。
実践 学校行事を核として,特別活動,総合的な学習の時間,道徳と集団SSTを関連づけて教育課程に位置づけた。そうすることで,教員は実践に取り組みやすくなると考えた。また,子どもたちにとっては,学校行事と関連を持たせることは,集団SSTに取り組む動機づけや般化を促すことになると推測した。
道具 「認知,行動,情動的側面に着目した社会的スキル尺度」(上枝・宮前, 2010),「学校生活の質チェックリスト(小学生版)」(表・繪内・宮前, 2008)を中学生用に一部修正した上で用いた。
調査の時期 第1回調査は第1回集団SSTの実施前(X年9月)に行い,第2回調査は第3回集団SSTの後(X+1年1月)に実施した。第3回調査は,集団SSTの2ヶ月後(X+1年3月)に実施した。
結果と考察
第1回調査,第2回調査,第3回調査にかけて社会的スキル尺度得点について,調査の時期の要因の分散分析を行った。「対処」,「主張」,「他者への配慮」について,第1回調査から第2回,第3回調査にかけて有意に得点が向上し,本実践の効果があったと考えられる(Table 1)。学校生活の質チェックリストの得点についても同様の分析を行った。「生活と環境」について調査の時期の主効果が有意であり,主観的適応感についても,本実践の効果があったと思われる。生徒の関心が高い学校行事の円滑な遂行や学校生活を楽しくおくることを目標に,道徳等と関連づけた集団SSTを教育課程に位置づけて実施し,効果が見られたことは,今後の集団SSTを考える上で示唆に富む結果であった。
集団社会的スキル訓練(以下,集団SST)は,学級を単位として道徳や特別活動等教科外の学習に位置づけられ実践されている。これまでに,孤独感の低減や自尊感情を高める等の効果が確認されている(e.g., 金山・佐藤・前田, 2004; 渡辺・山本, 2003)。しかし,いずれの研究も単発的に集団SSTを行っており,集団SSTを年間計画として教育課程に位置づけていないものが多い。
そこで本研究では,中学校において学校行事,特別活動,総合的な学習の時間,道徳と集団SSTを関連づけて教育課程に位置づけ,学習に対する動機づけと般化を促し,社会的スキルの変容と主観的適応感への効果を検討することを目的とした。
方 法
研究協力者 公立中学校1年生3学級120名(男子62名,女子58名)の生徒であった。
実施者 集団SSTは,第一著者がティームティーチングのT1として,1年生120名全員を対象に一斉に授業を行い,1年団教員全員が適宜T2として関わった。
目標スキル 従来の「上手な聴き方」,「上手な断り方」等の基本的な社会的スキルを組み合わせた「協力のスキル」,「正義のスキル」,「自己尊重のスキル」を目標スキルとした。
実践 学校行事を核として,特別活動,総合的な学習の時間,道徳と集団SSTを関連づけて教育課程に位置づけた。そうすることで,教員は実践に取り組みやすくなると考えた。また,子どもたちにとっては,学校行事と関連を持たせることは,集団SSTに取り組む動機づけや般化を促すことになると推測した。
道具 「認知,行動,情動的側面に着目した社会的スキル尺度」(上枝・宮前, 2010),「学校生活の質チェックリスト(小学生版)」(表・繪内・宮前, 2008)を中学生用に一部修正した上で用いた。
調査の時期 第1回調査は第1回集団SSTの実施前(X年9月)に行い,第2回調査は第3回集団SSTの後(X+1年1月)に実施した。第3回調査は,集団SSTの2ヶ月後(X+1年3月)に実施した。
結果と考察
第1回調査,第2回調査,第3回調査にかけて社会的スキル尺度得点について,調査の時期の要因の分散分析を行った。「対処」,「主張」,「他者への配慮」について,第1回調査から第2回,第3回調査にかけて有意に得点が向上し,本実践の効果があったと考えられる(Table 1)。学校生活の質チェックリストの得点についても同様の分析を行った。「生活と環境」について調査の時期の主効果が有意であり,主観的適応感についても,本実践の効果があったと思われる。生徒の関心が高い学校行事の円滑な遂行や学校生活を楽しくおくることを目標に,道徳等と関連づけた集団SSTを教育課程に位置づけて実施し,効果が見られたことは,今後の集団SSTを考える上で示唆に富む結果であった。