[PF68] 大学生の本来感に影響を及ぼす要因の検討(2)
自閉症スペクトラム傾向の高さによる影響の比較
キーワード:自閉症スペクトラム傾向, 本来感, レジリエンス
問題と目的
自閉症スペクトラム(以降ASD)傾向の高い大学生が学校不適応に陥ることなく学生生活を送ることが出来る要因として,自己要因である認知としての「肯定的自動思考」,「エゴ・レジリエンス」,スキルとしての「コーピング」,環境要因としてのソーシャルサポートである「家族サポート」「友人サポート」「先生サポート」がそれぞれ有意に働いていることが示された。だが,上記で示された要因が自閉症スペクトラム傾向の高い大学生のwell-beingとしての「本来感」にどのような影響を及ぼし,不適応を回避しているのかは不明確である。そこで,AQの値がカットオフポイント(7点)未満の大学生とそれ以上の大学生とにおける各要因の影響を明確にすることを目的とし,臨床的介入の一助としたい。
研究方法
(1)調査協力者:首都圏の大学に在学する1~4年生147名,中国圏の大学生174名1~4年生で合計321名(男子176名,女子131名),年齢は18歳~25歳,実施時期は平成27年6月上旬~7月中旬であった。
(2)調査内容
①本来感尺度(伊藤・小玉,2005)(5件法7項目)
②AQ-J-10: 栗田ら(2005)のAQ-Jの10項目短縮版(4件法10項目)③Ego-Resiliency 尺度(ER89)(畑・小野寺,2013)(4件法14項目)④大学生用ストレス自己評価尺度におけるコーピング尺度(尾関,1993)(4件法14項目)⑤ソーシャルサポート尺度(菊島,1999)(5件法6項目)⑥ATQ・RP(肯定的自動思考:Kendall et al.,1989; 児玉他,1994)(4件法10項目)
(3)倫理的配慮:質問紙配布の際,研究参加は自由意思による同意に基づき,質問紙への回答をもって調査参加への同意意思があると判断する,個人の特定が出来る形で内容を公表しない旨を伝え,同内容をフェースシートにも明記した。
結 果
① 重回帰分析(AQ6以下:271名)
本来感を従属変数とし,家族サポート得点,友人サポート得点,先生サポート得点,エゴ・レジリエンス得点,肯定的自動思考得点,コーピング得点を独立変数とする重回帰分析(強制投入)を行った。決定係数をみたところR2=.519(p<.001)となり0.1%水準で有意であった。偏回帰係数はエゴ・レジリエンス(β=.276,p<.001)から正のパス,肯定的自動思考(β=.689,p<.001)から正のパスが見られた(Table)。
② 重回帰分析(AQ7以上:37名)
本来感を従属変数とし,家族サポート得点,友人サポート得点,先生サポート得点,エゴ・レジリエンス得点,肯定的自動思考得点,コーピング得点を独立変数とする重回帰分析(強制投入)を行った。決定係数をみたところR2=.701(p<.001)となり0.1%水準で有意であった。偏回帰係数は友人サポート(β=.344,p<.05)から正のパス,エゴ・レジリエンス(β=.390,p<.05)から正のパス,肯定的自動思考(β=.440,p<.05)から正のパス,コーピング(β=-.493,p<.01)から負のパスが見られた(Table)。
考 察
①,②の結果より,ASD傾向の高い大学生が学校生活において不適応を回避出来てきた要因として,健常大学生におけるエゴ・レジリエンスと肯定的自動思考の他に,友人サポートとコーピングとが有意な影響を与えていることが明らかとなった。したがって,介入するポイントとしてエゴ・レジリエンスと肯定的自動思考を高めるとともに,友人サポートが得られるスキルを高めること,自分の心理的状態に応じて使用できるコーピングスキルを高めることが必要であることが示唆された。
自閉症スペクトラム(以降ASD)傾向の高い大学生が学校不適応に陥ることなく学生生活を送ることが出来る要因として,自己要因である認知としての「肯定的自動思考」,「エゴ・レジリエンス」,スキルとしての「コーピング」,環境要因としてのソーシャルサポートである「家族サポート」「友人サポート」「先生サポート」がそれぞれ有意に働いていることが示された。だが,上記で示された要因が自閉症スペクトラム傾向の高い大学生のwell-beingとしての「本来感」にどのような影響を及ぼし,不適応を回避しているのかは不明確である。そこで,AQの値がカットオフポイント(7点)未満の大学生とそれ以上の大学生とにおける各要因の影響を明確にすることを目的とし,臨床的介入の一助としたい。
研究方法
(1)調査協力者:首都圏の大学に在学する1~4年生147名,中国圏の大学生174名1~4年生で合計321名(男子176名,女子131名),年齢は18歳~25歳,実施時期は平成27年6月上旬~7月中旬であった。
(2)調査内容
①本来感尺度(伊藤・小玉,2005)(5件法7項目)
②AQ-J-10: 栗田ら(2005)のAQ-Jの10項目短縮版(4件法10項目)③Ego-Resiliency 尺度(ER89)(畑・小野寺,2013)(4件法14項目)④大学生用ストレス自己評価尺度におけるコーピング尺度(尾関,1993)(4件法14項目)⑤ソーシャルサポート尺度(菊島,1999)(5件法6項目)⑥ATQ・RP(肯定的自動思考:Kendall et al.,1989; 児玉他,1994)(4件法10項目)
(3)倫理的配慮:質問紙配布の際,研究参加は自由意思による同意に基づき,質問紙への回答をもって調査参加への同意意思があると判断する,個人の特定が出来る形で内容を公表しない旨を伝え,同内容をフェースシートにも明記した。
結 果
① 重回帰分析(AQ6以下:271名)
本来感を従属変数とし,家族サポート得点,友人サポート得点,先生サポート得点,エゴ・レジリエンス得点,肯定的自動思考得点,コーピング得点を独立変数とする重回帰分析(強制投入)を行った。決定係数をみたところR2=.519(p<.001)となり0.1%水準で有意であった。偏回帰係数はエゴ・レジリエンス(β=.276,p<.001)から正のパス,肯定的自動思考(β=.689,p<.001)から正のパスが見られた(Table)。
② 重回帰分析(AQ7以上:37名)
本来感を従属変数とし,家族サポート得点,友人サポート得点,先生サポート得点,エゴ・レジリエンス得点,肯定的自動思考得点,コーピング得点を独立変数とする重回帰分析(強制投入)を行った。決定係数をみたところR2=.701(p<.001)となり0.1%水準で有意であった。偏回帰係数は友人サポート(β=.344,p<.05)から正のパス,エゴ・レジリエンス(β=.390,p<.05)から正のパス,肯定的自動思考(β=.440,p<.05)から正のパス,コーピング(β=-.493,p<.01)から負のパスが見られた(Table)。
考 察
①,②の結果より,ASD傾向の高い大学生が学校生活において不適応を回避出来てきた要因として,健常大学生におけるエゴ・レジリエンスと肯定的自動思考の他に,友人サポートとコーピングとが有意な影響を与えていることが明らかとなった。したがって,介入するポイントとしてエゴ・レジリエンスと肯定的自動思考を高めるとともに,友人サポートが得られるスキルを高めること,自分の心理的状態に応じて使用できるコーピングスキルを高めることが必要であることが示唆された。