[PF69] 予防的支援のための簡易的な支援ニーズ把握の試み
クラス全員の読み書き・行動面の支援ニーズをどう把握し活かすか
キーワード:予防的支援, 読み書き支援, 通常学級
問題・研究目的
学校における支援は,問題にどう対応をするかという「対症療法」が主であるが,こうした対応では,読み書きや行動面にリスクを抱えている児童に予防的に介入し,支援することが難しい。
予防的な介入を実現するためには,クラス全体に対するアセスメントの実施,アセスメントに基づく全体への介入・支援,その効果検証が必要である。しかし日本では,クラス全体にアセスメントを実施することへの抵抗感,全員に実施することが可能な簡易なアセスメントが十分に浸透していないため,予防的介入の実施は難しい。
本研究の目的は,学校において予防的な介入を実施するための,支援ニーズの簡易的なアセスメント方法,介入方法について検討することである。
研究方法
調査協力者は,関東にある私立A小学校の2年生約100人の児童とA小学校の教員である。調査の実施にあたり,学校長,保護者から承諾を得ている。調査や介入は発表者,A小学校の学習支援員が教員と共同して実施した。
読み書きのアセスメントは河野らが開発したURAWSSを利用した。URAWSSとは小学生の読み書き関する評価ツールで,読み書きに関する支援ニーズをA,B,Cの3段階で評価することができる。
行動面のアセスメント・介入(以下,行動改善実践とする)についてはPBIS(Positive Behavioral Intervention & Supports)を参照し実施した。PBISはバーンズ亀山(2013)によると,アメリカで注目を集め多数の学校区で取り入れられており,暴力の防止やソーシャルスキルの向上において高い効果があることが確認されている。
今回の研究では,PBISを参考にした行動改善実践を実施し,その結果から児童の行動面の支援ニーズについて検討した。
研究結果・考察
URAWSS2年生用を106名に実施し,支援ニーズついて把握した。その結果,支援を必要とする児童の存在か明らかとなった。また,支援ニーズの認められた児童のうち同意が得られた13名に,個別の読み書きのトレーニングを実施し,数名のURAWSSのスコアが改善した。
・書き課題(有意味文,無意味文合計)
A:101名 B:3名 C:2名
・読み課題
A:89名 B:8名 C:9名
・読み課題内容理解
6問中正解が2問以下 16名
行動改善実践は以下の手順で実施した。
1. クラスで「良い行動」を話し合いにおいて決定し,行動ルールを作成した。作成されたルールは教室などに掲示し,内容について周知を徹底した。
2. 行動ルールを守っていた児童に対して,教員や支援員から行動が出来ていたことを示すカードがその都度配布された。カードは放課後までに回収し枚数を集計し、児童のその日の行動を示すデータとして利用した。定期的に集計されたデータを検討し,児童への対応や支援を検討する検討会議を実施した。
3. 一定の期間ごとに,カードの枚数が多い児童,カードの枚数が大幅に増加した児童を表彰した。その際、どうしたらカードがもらえるかについて、児童同士で話し合う機会を設けた。
行動改善実践は第1期〜第3期に分けて18回実施した。期が変わる際には,児童への配付状況について検討し,カードが増えるように再度規則などの説明を実施し,よい行動の定着を促した。第1期から第3期までの児童が得たカードの枚数の結果は以下の通りである。
1人あたりが1日に得たカードの枚数の平均値を比較するために分散分析を行った結果,F(2,200)=61.9,p<.01となり,枚数に主効果が認められた。Bonferroni法による多重比較の結果,第1期の枚数は,第2期と第3期の枚数に対し,有意に多いことが認められた(p<.05)。
これらの実践の結果,カードの枚数が少ない児童のなかに行動面の支援ニーズのある児童がいる可能性があること,介入によりその状況が改善する可能性があることが示唆された。
学校における支援は,問題にどう対応をするかという「対症療法」が主であるが,こうした対応では,読み書きや行動面にリスクを抱えている児童に予防的に介入し,支援することが難しい。
予防的な介入を実現するためには,クラス全体に対するアセスメントの実施,アセスメントに基づく全体への介入・支援,その効果検証が必要である。しかし日本では,クラス全体にアセスメントを実施することへの抵抗感,全員に実施することが可能な簡易なアセスメントが十分に浸透していないため,予防的介入の実施は難しい。
本研究の目的は,学校において予防的な介入を実施するための,支援ニーズの簡易的なアセスメント方法,介入方法について検討することである。
研究方法
調査協力者は,関東にある私立A小学校の2年生約100人の児童とA小学校の教員である。調査の実施にあたり,学校長,保護者から承諾を得ている。調査や介入は発表者,A小学校の学習支援員が教員と共同して実施した。
読み書きのアセスメントは河野らが開発したURAWSSを利用した。URAWSSとは小学生の読み書き関する評価ツールで,読み書きに関する支援ニーズをA,B,Cの3段階で評価することができる。
行動面のアセスメント・介入(以下,行動改善実践とする)についてはPBIS(Positive Behavioral Intervention & Supports)を参照し実施した。PBISはバーンズ亀山(2013)によると,アメリカで注目を集め多数の学校区で取り入れられており,暴力の防止やソーシャルスキルの向上において高い効果があることが確認されている。
今回の研究では,PBISを参考にした行動改善実践を実施し,その結果から児童の行動面の支援ニーズについて検討した。
研究結果・考察
URAWSS2年生用を106名に実施し,支援ニーズついて把握した。その結果,支援を必要とする児童の存在か明らかとなった。また,支援ニーズの認められた児童のうち同意が得られた13名に,個別の読み書きのトレーニングを実施し,数名のURAWSSのスコアが改善した。
・書き課題(有意味文,無意味文合計)
A:101名 B:3名 C:2名
・読み課題
A:89名 B:8名 C:9名
・読み課題内容理解
6問中正解が2問以下 16名
行動改善実践は以下の手順で実施した。
1. クラスで「良い行動」を話し合いにおいて決定し,行動ルールを作成した。作成されたルールは教室などに掲示し,内容について周知を徹底した。
2. 行動ルールを守っていた児童に対して,教員や支援員から行動が出来ていたことを示すカードがその都度配布された。カードは放課後までに回収し枚数を集計し、児童のその日の行動を示すデータとして利用した。定期的に集計されたデータを検討し,児童への対応や支援を検討する検討会議を実施した。
3. 一定の期間ごとに,カードの枚数が多い児童,カードの枚数が大幅に増加した児童を表彰した。その際、どうしたらカードがもらえるかについて、児童同士で話し合う機会を設けた。
行動改善実践は第1期〜第3期に分けて18回実施した。期が変わる際には,児童への配付状況について検討し,カードが増えるように再度規則などの説明を実施し,よい行動の定着を促した。第1期から第3期までの児童が得たカードの枚数の結果は以下の通りである。
1人あたりが1日に得たカードの枚数の平均値を比較するために分散分析を行った結果,F(2,200)=61.9,p<.01となり,枚数に主効果が認められた。Bonferroni法による多重比較の結果,第1期の枚数は,第2期と第3期の枚数に対し,有意に多いことが認められた(p<.05)。
これらの実践の結果,カードの枚数が少ない児童のなかに行動面の支援ニーズのある児童がいる可能性があること,介入によりその状況が改善する可能性があることが示唆された。