日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PF(65-90)

ポスター発表 PF(65-90)

2016年10月9日(日) 16:00 〜 18:00 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PF70] デジタルリーディングの基礎的研究

表示形式と文字サイズが読書速度に与える影響

氏間和仁 (広島大学)

キーワード:低視力, ロービジョン, 視覚障害

目   的
 デジタルリーディング(以下,DR)は,コンピュータ等のデジタル技術によって表示された文字を読むことを指し,インク等で印刷された文字が書かれた用紙等の媒体を取り替えて読むのではなく,表示する媒体を取り替えずに,文字を電子的に取り替えながら読むことが一般的である。DRはデジタル教科書,Kindleなどのデジタル書籍,メール,ホームページ等で普及しており,その表示形式や文字サイズが読書に与える影響を明らかにしておくことが望まれる。
 DRの表示形式はPDFのように拡大に伴って縦横に引き伸ばされるZoom形式,ホームページのように拡大に伴って画面幅で文字が折り返すReflow形式,新幹線車内の電光掲示板のように横一直線に表示されるLinear形式,自分のペースで数文字ずつを切り出して表示するEP(Elicited sequential presentation)形式がある。
方   法
 晴眼大学生4名に,4つの表示形式(4)×と文字サイズ(0.7°,1.7°,4.2°)(3)×5試行(5)=60試行実施した。実験時間は90分であった。1回目は練習試行とした。刺激文は227文字の小学6年生用で,カウントダウン後提示され,音読後,実験協力者が握ったボタンを押すと刺激は消え,刺激提示中の時間が計測された。読書速度は,音読文字数/刺激提示時間(s)×60(単位は,文字 / 分)で,従属変数とした。刺激は9.7inchのタブレット端末に専用ソフトで提示され,Zoom条件では1行40文字とした。これは文字サイズ0.7°で提示した際,画面幅と行長が同程度になる値であった。全協力者から署名を得た。本研究科倫理審査を受けた。
結   果
 交互作用は4名全員で有意であった(Table 1)。全ての文字サイズ条件における表示形式要因の単純主効果と,Zoom形式・Linear形式における文字サイズ要因の単純主効果が4名全員で一貫して有意であった(5%)。多重比較(HSD)の結果,Zoom形式では0.7 > 1.7°,0.7°> 4.2°,Linear形式では0.7°= 1.7°> 4.2°であった。
考   察
 Zoom形式とLinear形式において読書速度は文字サイズの拡大により抑制的な効果を受け,Reflow形式とEP形式は文字サイズ拡大の影響を受けにくいことが明らかとなった。DRにおいて文字を拡大して提示する場合,読書速度の点から,Reflowが最も適当である。
謝辞
 本研究は,文部科学省科学研究費補助金,基盤(C),課題番号:15K04560及び,基盤(A),課題番号:16H02072の助成を受けた。