[PF73] スキル実行にかかわる要因に配慮したソーシャルスキル教育の実践的研究
Keywords:ソーシャルスキル教育, ソーシャルスキル実行, 対人関係ゲーム
目 的
ソーシャルスキル教育(SSE)の実施による効果は報告されてきているが,金山ら(2004)はSSEの効果には個人差があり,SSEによりソーシャルスキルに関する知識や技術を獲得しても,実行しない子どもがいると指摘している。そこで本研究では,小学生のソーシャルスキル実行の実態を把握した上で,スキル実行にかかわる要因について検討し,それらの要因に配慮したSSEを行うことで,その効果を実践的に検証することとした。
研究Ⅰ 児童のスキル実行にかかわる要因の検討
方 法
対象 A小学校3~6年生,8クラス,220名。学級担任8名。
時期 2015年6月下旬~8月初旬。
介入 学級単位で1回15分のSSEを2回ずつ実施した。ターゲットスキルは「あたたかいメッセージ」のスキルとした。
調査 ①スキル実行尺度:藤枝(2012)の目標スキルに対応した児童用評定用紙の4つの目標スキル領域から,「あたたかいメッセージ」のスキルの領域4項目。5件法。研究Ⅰでは,「感謝」と「気づかい」のメッセージの得点のみ使用した。②親和動機尺度:藤枝・新井(2009)の児童用親和動機尺度(14項目)。5件法。③楽しい学校生活を送るためのアンケート(Q-U)4件法。
結果及び考察
分析対象は,調査回答に不備のない児童183名。
SSE果の効:まず,スキル実行,親和傾向,拒否不安」のSSE前後の平均値間に差があるかどうか,対応のあるt検定を行った。その結果,スキル実行では有意差が認められず,効果量も極めて小さかった(t=.70,p=.487,r=.05)。しかし,親和傾向(t=2.78,p=.006,r=.20)」では有意差が認められ,小~中程度の効果が認められた。また,拒否不安(t=1.94,p=.054,r=.14)では有意傾向が認められ,小程度の効果が認められた。
スキル実行の要因分析:スキル実行の要因を明らかにするために,獲得したスキルを実行する「実行群」とスキルを獲得していても実行しない「実行欠如群」に2群に分類した。「スキル実行」に影響を与える要因として,親和傾向」,拒否不安と「友人との関係」,「学習意欲」,「学級雰囲気」,学級満足度尺度の下位尺度である「承認」,「被侵害」について,「実行群」と「実行欠如群」の間に差がみられるかどうか,対応のないt検定を行った。その結果,親和傾向(t(146.05)=2.80,p=.006,r=.23),拒否不安(t(123.78)=2.48,p=.015,r=.22),学習意欲(t(145.31)=3.52,p=.001,r=.28)」において,有意差と小~中程度の効果がみられた。
研究Ⅱ 親和傾向と学習意欲に配慮して行うSSEの効果の検証
方 法
対象 研究Ⅰと同様。
時期 2015年10月初旬~12月初旬。
介入 学級単位で1回15分の対人関係ゲームを2回1回15分のSSEを2回実施した。
調査 ①実行尺度:研究Ⅰと同様のものを用いたが,SSE3・4回目のターゲットスキル「はげます」と「ほめる」のメッセージの得点のみ使用した。②親和動機尺度
結果及び考察
分析対象は,調査回答に不備のない児童173名。
親和傾向を高める対人関係ゲームと学習意欲に配慮したSSEを組み合わせた介入の効果を検証するため,スキル実行,親和傾向,拒否不安について,介入前後の平均値間に差があるかどうか,対応のあるt検定を行った。その結果,スキル実行においては有意差が認められ,中程度の効果も認められた(t=4.62,p<.001,r=.33)。また,親和傾向においても,有意差が認められ,小~中程度の効果が認められた(t=2.94,p=.004,r=.22)。しかし,拒否不安については,有意差は認められず,効果も極めて小さかった(t=.84,p=.404,r=.06)。親和傾向と学習意欲に配慮してSSEを実施した結果,通常のSSEを行った場合と比較すると,「スキル実行」が有意に高まり,効果も大きいことが明らかになった。
ソーシャルスキル教育(SSE)の実施による効果は報告されてきているが,金山ら(2004)はSSEの効果には個人差があり,SSEによりソーシャルスキルに関する知識や技術を獲得しても,実行しない子どもがいると指摘している。そこで本研究では,小学生のソーシャルスキル実行の実態を把握した上で,スキル実行にかかわる要因について検討し,それらの要因に配慮したSSEを行うことで,その効果を実践的に検証することとした。
研究Ⅰ 児童のスキル実行にかかわる要因の検討
方 法
対象 A小学校3~6年生,8クラス,220名。学級担任8名。
時期 2015年6月下旬~8月初旬。
介入 学級単位で1回15分のSSEを2回ずつ実施した。ターゲットスキルは「あたたかいメッセージ」のスキルとした。
調査 ①スキル実行尺度:藤枝(2012)の目標スキルに対応した児童用評定用紙の4つの目標スキル領域から,「あたたかいメッセージ」のスキルの領域4項目。5件法。研究Ⅰでは,「感謝」と「気づかい」のメッセージの得点のみ使用した。②親和動機尺度:藤枝・新井(2009)の児童用親和動機尺度(14項目)。5件法。③楽しい学校生活を送るためのアンケート(Q-U)4件法。
結果及び考察
分析対象は,調査回答に不備のない児童183名。
SSE果の効:まず,スキル実行,親和傾向,拒否不安」のSSE前後の平均値間に差があるかどうか,対応のあるt検定を行った。その結果,スキル実行では有意差が認められず,効果量も極めて小さかった(t=.70,p=.487,r=.05)。しかし,親和傾向(t=2.78,p=.006,r=.20)」では有意差が認められ,小~中程度の効果が認められた。また,拒否不安(t=1.94,p=.054,r=.14)では有意傾向が認められ,小程度の効果が認められた。
スキル実行の要因分析:スキル実行の要因を明らかにするために,獲得したスキルを実行する「実行群」とスキルを獲得していても実行しない「実行欠如群」に2群に分類した。「スキル実行」に影響を与える要因として,親和傾向」,拒否不安と「友人との関係」,「学習意欲」,「学級雰囲気」,学級満足度尺度の下位尺度である「承認」,「被侵害」について,「実行群」と「実行欠如群」の間に差がみられるかどうか,対応のないt検定を行った。その結果,親和傾向(t(146.05)=2.80,p=.006,r=.23),拒否不安(t(123.78)=2.48,p=.015,r=.22),学習意欲(t(145.31)=3.52,p=.001,r=.28)」において,有意差と小~中程度の効果がみられた。
研究Ⅱ 親和傾向と学習意欲に配慮して行うSSEの効果の検証
方 法
対象 研究Ⅰと同様。
時期 2015年10月初旬~12月初旬。
介入 学級単位で1回15分の対人関係ゲームを2回1回15分のSSEを2回実施した。
調査 ①実行尺度:研究Ⅰと同様のものを用いたが,SSE3・4回目のターゲットスキル「はげます」と「ほめる」のメッセージの得点のみ使用した。②親和動機尺度
結果及び考察
分析対象は,調査回答に不備のない児童173名。
親和傾向を高める対人関係ゲームと学習意欲に配慮したSSEを組み合わせた介入の効果を検証するため,スキル実行,親和傾向,拒否不安について,介入前後の平均値間に差があるかどうか,対応のあるt検定を行った。その結果,スキル実行においては有意差が認められ,中程度の効果も認められた(t=4.62,p<.001,r=.33)。また,親和傾向においても,有意差が認められ,小~中程度の効果が認められた(t=2.94,p=.004,r=.22)。しかし,拒否不安については,有意差は認められず,効果も極めて小さかった(t=.84,p=.404,r=.06)。親和傾向と学習意欲に配慮してSSEを実施した結果,通常のSSEを行った場合と比較すると,「スキル実行」が有意に高まり,効果も大きいことが明らかになった。