[PF77] 小学校授業における児童同士の相互作用と学級集団内地位との関連
Keywords:児童同士の相互作用, 学級集団内地位, 小学校
問題と目的
思考力,判断力,表現力等をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組む態度を養うための言語活動の充実(文部科学省,2008)に向けて,多くの学校で取り入れられている学習の一つとして小グループを活用した協同学習が挙げられる。協同学習において様々な効果が生み出される要因として注目されているのが,学習場面における児童同士の相互作用である(O’Donnell, 2006)。一方,単にグループを構成して学習をさせるだけでは,相互作用が十分に促進されず,学習が保証されないことが指摘されている(大黒・稲垣,2006)。
協同学習場面における相互作用の質を規定する要因の一つとして,地位特性が挙げられる。Cohen & Lotan(1995)は,学級内での評価などの地位特性によって,発話が支持されたり却下されたりするという問題を指摘している。また,Bianchini(1999)は,高い学力や人気のある地位の高い学生はグループ内での影響力が大きい傾向があるとともに,地位の低い学生は自己主張が弱く心配性で,高地位の学生より提案が少ない傾向にあることを報告している。しかし,小学校授業における児童同士の相互作用と学級集団内地位との関連を量的に検討した研究は少ない。そこで,本研究では先行研究で相互作用の規定因の一つとして挙げられている学級集団内地位とともに学力と授業における児童同士の相互作用について質問紙調査を行い,その関連について検討する。
方 法
調査対象:大阪市内の公立小学校に在籍する6年生124名(男子72名,女子52名)とその学級担任3名を分析の対象とした。
調査内容:①相互作用尺度(牧野・神山,2009)のうち7項目を使用。4件法による回答を求めた。②ソシオメトリック・テスト 学習場面における協力者と遊び相手は異なる(石黒,1951; 田中,1975)という指摘があるため,肯定的指名によるソシオメトリック・テストを用いて,学習と遊びの両場面における児童の学級集団内地位を把握した。「あなたはクラスで勉強をしていてわからないことがあったとき,誰に聞きたいですか?何人でもいいですから,ききたい順に友達の名前を書いてください。」(学習場面),「あなたは休み時間に誰と一緒に遊びたいですか?何人でもいいですから,遊びたい順に友だちの名前を書いてください。」(遊び場面)のように尋ね,それぞれに該当する児童の名前の記入を求めた。③学力の教師評定 授業で実施したテストの得点を参考に,児童の算数および国語の学力を3段階で評定を求めた。
調査時期:2015年11月
結果と考察
はじめに,学級集団内地位(学習場面),学級集団内地位(遊び場面),学力と児童同士の相互作用の各変数間の相関係数を算出した。その結果をTable 1に示す。
各変数間の相関係数から,学力や遊び場面における学級集団内地位が高い児童ほど,学習場面における学級集団内地位が高く,学習場面における学級集団内地位が高い児童ほど授業において相互作用を行うことができていると感じていることが示された。一方,学力と授業における児童同士の相互作用に直接的な相関関係は認められなかった。
次に,相互作用に有意に相関していた学習場面での学級集団内地位の得点について平均値を算出し,その数値に基づき,得点の平均値±1/2SDで3群に分けた。その群分けに基づいて,相互作用得点について1元配置分散分析を実施したところ有意差がみられたため(F(2,109)=5.15,p<.01),引き続き多重比較を行ったところ,低群<中群・高群で授業における相互作用が有意に高くなっていた。
本研究の結果から,学級集団内地位の程度が授業における児童同士の相互作用に関係することがわかった。協同学習を成立させるためには,地位特性に関係なく児童同士の相互作用が促進される必要がある。そのための教師の指導方法とともに,相互作用と地位特性以外の規定因の関係について今後さらに検討していく必要があるだろう。
思考力,判断力,表現力等をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組む態度を養うための言語活動の充実(文部科学省,2008)に向けて,多くの学校で取り入れられている学習の一つとして小グループを活用した協同学習が挙げられる。協同学習において様々な効果が生み出される要因として注目されているのが,学習場面における児童同士の相互作用である(O’Donnell, 2006)。一方,単にグループを構成して学習をさせるだけでは,相互作用が十分に促進されず,学習が保証されないことが指摘されている(大黒・稲垣,2006)。
協同学習場面における相互作用の質を規定する要因の一つとして,地位特性が挙げられる。Cohen & Lotan(1995)は,学級内での評価などの地位特性によって,発話が支持されたり却下されたりするという問題を指摘している。また,Bianchini(1999)は,高い学力や人気のある地位の高い学生はグループ内での影響力が大きい傾向があるとともに,地位の低い学生は自己主張が弱く心配性で,高地位の学生より提案が少ない傾向にあることを報告している。しかし,小学校授業における児童同士の相互作用と学級集団内地位との関連を量的に検討した研究は少ない。そこで,本研究では先行研究で相互作用の規定因の一つとして挙げられている学級集団内地位とともに学力と授業における児童同士の相互作用について質問紙調査を行い,その関連について検討する。
方 法
調査対象:大阪市内の公立小学校に在籍する6年生124名(男子72名,女子52名)とその学級担任3名を分析の対象とした。
調査内容:①相互作用尺度(牧野・神山,2009)のうち7項目を使用。4件法による回答を求めた。②ソシオメトリック・テスト 学習場面における協力者と遊び相手は異なる(石黒,1951; 田中,1975)という指摘があるため,肯定的指名によるソシオメトリック・テストを用いて,学習と遊びの両場面における児童の学級集団内地位を把握した。「あなたはクラスで勉強をしていてわからないことがあったとき,誰に聞きたいですか?何人でもいいですから,ききたい順に友達の名前を書いてください。」(学習場面),「あなたは休み時間に誰と一緒に遊びたいですか?何人でもいいですから,遊びたい順に友だちの名前を書いてください。」(遊び場面)のように尋ね,それぞれに該当する児童の名前の記入を求めた。③学力の教師評定 授業で実施したテストの得点を参考に,児童の算数および国語の学力を3段階で評定を求めた。
調査時期:2015年11月
結果と考察
はじめに,学級集団内地位(学習場面),学級集団内地位(遊び場面),学力と児童同士の相互作用の各変数間の相関係数を算出した。その結果をTable 1に示す。
各変数間の相関係数から,学力や遊び場面における学級集団内地位が高い児童ほど,学習場面における学級集団内地位が高く,学習場面における学級集団内地位が高い児童ほど授業において相互作用を行うことができていると感じていることが示された。一方,学力と授業における児童同士の相互作用に直接的な相関関係は認められなかった。
次に,相互作用に有意に相関していた学習場面での学級集団内地位の得点について平均値を算出し,その数値に基づき,得点の平均値±1/2SDで3群に分けた。その群分けに基づいて,相互作用得点について1元配置分散分析を実施したところ有意差がみられたため(F(2,109)=5.15,p<.01),引き続き多重比較を行ったところ,低群<中群・高群で授業における相互作用が有意に高くなっていた。
本研究の結果から,学級集団内地位の程度が授業における児童同士の相互作用に関係することがわかった。協同学習を成立させるためには,地位特性に関係なく児童同士の相互作用が促進される必要がある。そのための教師の指導方法とともに,相互作用と地位特性以外の規定因の関係について今後さらに検討していく必要があるだろう。