[PF78] 新任教師の教科指導学習動機と授業力の自己認知,学習時間との関連の短期縦断的検討
キーワード:教師, 教科指導学習動機, 授業力
問題と目的
中央教育審議会(2012)の答申では,“学び続ける教員像”の確立が,これからの教師に必要であると述べられている。このように,教員の資質能力向上のためには,教師が学び続けることが必要不可欠であると考えられる。
教師の学びに関して,三和・外山(2015)は,動機づけの側面に着目し検討を行った。この研究では,教師が教科指導に関して学ぶ理由(以下,教科指導学習動機)を興味や楽しさに動機づけられる“内発的動機づけ”,子どものためという思いに動機づけられる“子ども志向”,教師としての成長や自分に対する価値に動機づけられる“熟達志向”,他者からの承認や他者との比較に動機づけられる“承認・比較志向”,義務によって動機づけられる“義務感”,自分とは無関係と感じている“無関心”に分類した。
三和・外山(印刷中)では,これらの動機づけと新任教師の教職における自己有能感や健康状態との関連について検討し,上記の動機づけの中でも“内発的動機づけ”や“子ども志向”が教師にとってより良い動機づけであることを示した。
しかし,この調査は一時点における検討であったため,因果関係の検討が困難である。そこで,本研究では縦断調査を行い,教科指導学習動機が授業力の自己認知および学習時間に与える影響について検討した。
方 法
調査対象者 関東地方で実施された初任者研修に参加した教師のうち,6月(Time 1)と12月(Time 2)の2時点において回答を得られた教師128名(小学校67名,中学校30名,高等学校30名,不明1名;男性61名,女性67名;平均年齢26.12歳,標準偏差4.36)。
調査内容 教科指導学習動機尺度(三和・外山, 2015):29項目4件法,授業力自己診断シート(東京都教職員研修センター,2005):30項目4件法,平日及び休日の学習時間:30分単位で回答。
結果と考察
まず,授業力自己診断シートの項目に関して主成分分析を行い,第一主成分に.40以上の負荷量を示さなかった6項目を削除し,残りの24項目を合計したものを授業力の自己認知得点とした。
次に,教科指導学習動機と授業力の自己認知および学習時間がどのような関係にあるのか検討するために,回答に欠損のなかった113名を対象に交差遅延モデルによる検討を行った。分析を行うにあたり,Figure 1のような因果を仮定した。このモデルに従い,Time 1における教科指導学習動機がTime 2における授業力の自己認知や学習時間に与える影響についてはパスaの値を検討し,Time 1における授業力の自己認知や学習時間がTime 2における教科指導学習動機に与える影響についてはパスbの値を検討した。
パスaについてみていくと,授業力の自己認知には,子ども志向(β=.18, p<.05)や熟達志向(β=.14, p<.10)がポジティブな影響を与えていることが示された。また,平日の学習時間には子ども志向(β=.15, p<.10)が,休日の学習時間には内発的動機づけ(β=.16, p<.05),熟達志向(β=.15, p<.10)がポジティブな影響を与えていることが示された(Table 1)。
以上より,熟達志向といった学習そのものに価値を感じて学ぶことや,子どものためを思って学ぶことが授業力向上にとって重要であることが示された。
中央教育審議会(2012)の答申では,“学び続ける教員像”の確立が,これからの教師に必要であると述べられている。このように,教員の資質能力向上のためには,教師が学び続けることが必要不可欠であると考えられる。
教師の学びに関して,三和・外山(2015)は,動機づけの側面に着目し検討を行った。この研究では,教師が教科指導に関して学ぶ理由(以下,教科指導学習動機)を興味や楽しさに動機づけられる“内発的動機づけ”,子どものためという思いに動機づけられる“子ども志向”,教師としての成長や自分に対する価値に動機づけられる“熟達志向”,他者からの承認や他者との比較に動機づけられる“承認・比較志向”,義務によって動機づけられる“義務感”,自分とは無関係と感じている“無関心”に分類した。
三和・外山(印刷中)では,これらの動機づけと新任教師の教職における自己有能感や健康状態との関連について検討し,上記の動機づけの中でも“内発的動機づけ”や“子ども志向”が教師にとってより良い動機づけであることを示した。
しかし,この調査は一時点における検討であったため,因果関係の検討が困難である。そこで,本研究では縦断調査を行い,教科指導学習動機が授業力の自己認知および学習時間に与える影響について検討した。
方 法
調査対象者 関東地方で実施された初任者研修に参加した教師のうち,6月(Time 1)と12月(Time 2)の2時点において回答を得られた教師128名(小学校67名,中学校30名,高等学校30名,不明1名;男性61名,女性67名;平均年齢26.12歳,標準偏差4.36)。
調査内容 教科指導学習動機尺度(三和・外山, 2015):29項目4件法,授業力自己診断シート(東京都教職員研修センター,2005):30項目4件法,平日及び休日の学習時間:30分単位で回答。
結果と考察
まず,授業力自己診断シートの項目に関して主成分分析を行い,第一主成分に.40以上の負荷量を示さなかった6項目を削除し,残りの24項目を合計したものを授業力の自己認知得点とした。
次に,教科指導学習動機と授業力の自己認知および学習時間がどのような関係にあるのか検討するために,回答に欠損のなかった113名を対象に交差遅延モデルによる検討を行った。分析を行うにあたり,Figure 1のような因果を仮定した。このモデルに従い,Time 1における教科指導学習動機がTime 2における授業力の自己認知や学習時間に与える影響についてはパスaの値を検討し,Time 1における授業力の自己認知や学習時間がTime 2における教科指導学習動機に与える影響についてはパスbの値を検討した。
パスaについてみていくと,授業力の自己認知には,子ども志向(β=.18, p<.05)や熟達志向(β=.14, p<.10)がポジティブな影響を与えていることが示された。また,平日の学習時間には子ども志向(β=.15, p<.10)が,休日の学習時間には内発的動機づけ(β=.16, p<.05),熟達志向(β=.15, p<.10)がポジティブな影響を与えていることが示された(Table 1)。
以上より,熟達志向といった学習そのものに価値を感じて学ぶことや,子どものためを思って学ぶことが授業力向上にとって重要であることが示された。