[PF82] 教員養成大学において教員非志望であること
大学教育における志望職種が就学に与える影響
Keywords:学生調査, 教員養成大学, 教員志望
問 題
教員養成課程において,在籍する学生が教員となることは重要な課題の一つであると言える。文部科学省(2015)における,国立の教員養成大学・学部(教員養成課程)の平成26年度3月卒業者の平均教員就職率は60.4%であり,在学生のほとんどが教員になるという状況にはない。
こうした現状において,教員就職率を向上させるためには,教員養成課程において教員非志望である学生に対して,教員就職という選択に目を向けてもらう必要がある。
他方,教員あるいは教員志望学生には,「ねばならない」「べきである」といったイラショナルビリーフと呼ばれる命令・絶対的考え方があり,それが精神的不健康を招く可能性が指摘されている(土井・橋口,2000; 加藤・平賀・山本,2008)。また教員養成課程では,カリキュラムなども教員を育成することを中心として構成されており,教員を志望しない学生は阻害されやすいのではないかと考えられる。よって本研究では,教員養成課程に在籍する教員非志望学生の特性を明らかにすることを目的とする。
方 法
(質問紙)
新入生学習調査票および大学生学習調査票。これは「教員養成ルネッサンス・HATOプロジェクト」IR部門によって作成された修学や進路希望に関する全179項目(新入生調査票・2014年度4月の入学直後に実施)もしくは全88項目(大学生学習調査票・2015年度7月の第二学年前期終了前に実施)で構成された質問紙。
⑵大学生学習調査。
(対象者および手続き)
大阪教育大学2014年度新入生953名のうち,2014年度および2015年度の質問紙調査に双方回答した学生794名(男性;341名,女性;553名,平均年齢;19.3歳)。
調査対象者を,新入生から第二学年までの間に,教員志望で一貫していた学生群(一貫志望群),教員志望から教員非志望に変更した群(転向非志望群),教員非志望から教員志望に変更した群(転向志望群),一貫して教員以外を志望している群(一貫非志望群)に分けて,質問紙調査の得点およびGPAに差があるかを検討した。
結 果
一貫志望群は406名(51.1%),転向非志望群は112名(14.1%),転向志望群は56名(7.1%),一貫志望群220名(27.7%)であった。次に,この教員志望グループ4群を独立変数とし,第一学年の成績(GPA)を従属変数とした一元配置分散分析を行った(表参照)。この結果,教員志望グループの主効果が見られた(F(730)= 6.53, p<.05, partial η2= 0.02)ため,シェイファーの修正ボンフェローニ法(p< .05)による多重比較を行った結果,一貫志望群のGPAが,転向非志望群および一貫非志望群よりも高いことが明らかとなった。また,大学生調査の項目である,勉強以外に割く時間(アルバイト・友人交際)と大学生活での悩みを従属変数とし,それぞれ上と同様の分散分析を行ったところ,勉強以外に割く時間(F(790)= 8.46, p< .05, partial η2= 0.03)では一貫非志望群が一貫志望および転向非志望群よりも高く,大学生活上の悩み(F(789)= 3.29, p< .05, partial η2= 0.012)では転向非志望群の得点が転向志望群よりも高くなった。
考 察
本研究の結果,教員志望でない学生はGPAが低くなる傾向が分かった。また一貫非志望群の学生では,勉強以外に割く時間が長いことが分かった。これに対して,転向非志望群の学生は,勉強以外に割く時間はそれほど多くないが,大学生活上の悩みを抱えている可能性が示唆された。このことから,それぞれの学生に合わせた教学によって,教員養成大学において,教員を志望・再志望する可能性があると言える。
参考文献
土井・橋口(2000).中学校教師におけるイラショナルビリーフと精神健康との関係,健康心理学研究,13(1),23-30
加藤・平賀・山本(2008).教員を目指す学生における精神的不健康のなりやすさと性格特徴,大阪教育大学紀要,56(2),251-256.
教員養成課程において,在籍する学生が教員となることは重要な課題の一つであると言える。文部科学省(2015)における,国立の教員養成大学・学部(教員養成課程)の平成26年度3月卒業者の平均教員就職率は60.4%であり,在学生のほとんどが教員になるという状況にはない。
こうした現状において,教員就職率を向上させるためには,教員養成課程において教員非志望である学生に対して,教員就職という選択に目を向けてもらう必要がある。
他方,教員あるいは教員志望学生には,「ねばならない」「べきである」といったイラショナルビリーフと呼ばれる命令・絶対的考え方があり,それが精神的不健康を招く可能性が指摘されている(土井・橋口,2000; 加藤・平賀・山本,2008)。また教員養成課程では,カリキュラムなども教員を育成することを中心として構成されており,教員を志望しない学生は阻害されやすいのではないかと考えられる。よって本研究では,教員養成課程に在籍する教員非志望学生の特性を明らかにすることを目的とする。
方 法
(質問紙)
新入生学習調査票および大学生学習調査票。これは「教員養成ルネッサンス・HATOプロジェクト」IR部門によって作成された修学や進路希望に関する全179項目(新入生調査票・2014年度4月の入学直後に実施)もしくは全88項目(大学生学習調査票・2015年度7月の第二学年前期終了前に実施)で構成された質問紙。
⑵大学生学習調査。
(対象者および手続き)
大阪教育大学2014年度新入生953名のうち,2014年度および2015年度の質問紙調査に双方回答した学生794名(男性;341名,女性;553名,平均年齢;19.3歳)。
調査対象者を,新入生から第二学年までの間に,教員志望で一貫していた学生群(一貫志望群),教員志望から教員非志望に変更した群(転向非志望群),教員非志望から教員志望に変更した群(転向志望群),一貫して教員以外を志望している群(一貫非志望群)に分けて,質問紙調査の得点およびGPAに差があるかを検討した。
結 果
一貫志望群は406名(51.1%),転向非志望群は112名(14.1%),転向志望群は56名(7.1%),一貫志望群220名(27.7%)であった。次に,この教員志望グループ4群を独立変数とし,第一学年の成績(GPA)を従属変数とした一元配置分散分析を行った(表参照)。この結果,教員志望グループの主効果が見られた(F(730)= 6.53, p<.05, partial η2= 0.02)ため,シェイファーの修正ボンフェローニ法(p< .05)による多重比較を行った結果,一貫志望群のGPAが,転向非志望群および一貫非志望群よりも高いことが明らかとなった。また,大学生調査の項目である,勉強以外に割く時間(アルバイト・友人交際)と大学生活での悩みを従属変数とし,それぞれ上と同様の分散分析を行ったところ,勉強以外に割く時間(F(790)= 8.46, p< .05, partial η2= 0.03)では一貫非志望群が一貫志望および転向非志望群よりも高く,大学生活上の悩み(F(789)= 3.29, p< .05, partial η2= 0.012)では転向非志望群の得点が転向志望群よりも高くなった。
考 察
本研究の結果,教員志望でない学生はGPAが低くなる傾向が分かった。また一貫非志望群の学生では,勉強以外に割く時間が長いことが分かった。これに対して,転向非志望群の学生は,勉強以外に割く時間はそれほど多くないが,大学生活上の悩みを抱えている可能性が示唆された。このことから,それぞれの学生に合わせた教学によって,教員養成大学において,教員を志望・再志望する可能性があると言える。
参考文献
土井・橋口(2000).中学校教師におけるイラショナルビリーフと精神健康との関係,健康心理学研究,13(1),23-30
加藤・平賀・山本(2008).教員を目指す学生における精神的不健康のなりやすさと性格特徴,大阪教育大学紀要,56(2),251-256.