[PF83] 児童用のRosenberg自尊感情尺度の再作成
項目の修正と教師による児童評定を用いた妥当性の検討
Keywords:自尊感情, 教師評定, 妥当性
目 的
自尊感情(self-esteem)は人の成長や発達,心の健康や適応にとって枢要な心的特性と言われているが,一方で,高い自尊感情に見られる不適応的側面も確認されており,ただ高めれば良いという概念ではないことが指摘されている(中間,2016)。自尊感情研究では,Rosenbergの自尊感情尺度(以下,RSES)が広く使用されており(Schmitt & Allik, 2005),この尺度を用いることは世界レベルで同一基準の研究知見を比較できるというメリットがある。日本でもその成人翻訳版の開発は充実しているが,児童版に至っては妥当性を中心に不十分さが指摘される。また,児童に対しても大人版の尺度が使用されることがあるが,児童が概念を正確に把握できているのか,各項目に対する児童の理解度を検討・報告している論文は見られない。概念に対する正確な測定を行うためには,項目表現を児童の理解しやすいものへと改良する必要がある。本研究では,以上のような観点から,項目表現の修正を中心に児童用RSESの再作成を行い,教師評定を用いた妥当性の検討を行った。
方 法
調査対象および時期 小学校(2校)の4~6年生601名を対象に2016年2月に実施した。
自尊感情尺度 Rosenberg(1965)の原著の翻訳を行い,心理学を専門とする大学教員3名と博士課程の学生1名で文章表現の検討を行った。作成した尺度は,また,事前の児童を対象とした予備調査で各項目の文章表現への理解度や得点傾向を調査し,修正を行った。なお,本調査では同時に児童用紙筆版自尊感情潜在連合テストによる測定も行っているが,本抄録での紹介は割愛した。
教師評定 教師評定の項目は,防衛性を含まない本当の自尊感情の特徴を項目1に,防衛性を含む自尊感情の特徴を項目2に,低い自尊感情の特徴を項目3に設定した。具体的には,項目1は「自分に自信を持っている」「周りの子に対して競争意識が低く,張り合うことが少ない」,項目2は「自分に自信を持っている」「周りの子に対して競争意識が高く,張り合うことが多い」,項目3は「自分に自信がない」とした。また,評定方法は,評定基準に当てはまる児童を学級担任がクラスから複数名選出するノミネート形式を採用した。ノミネートは,項目ごとに2~3人ずつ選出を求めた。項目1および項目2にノミネートされた者は自尊感情得点が高く,項目3ノミネートされた者は自尊感情得点が低いと予想される。
欠損値のある者を除くと,ノミネートされた児童は144名で,評定者は21名であった。
結果と考察
自尊感情尺度の10項目に対して主因子法の因子分析を行った。固有値が1.0以上,因子負荷量が.45以上であることを基準に探索的因子分析を行ったところ,項目2と8を除外した単因子構造が妥当であると判断した。また,信頼性を検討するために,8項目に対してCronbachのα係数を算出したところ,α=.81を示したことから一定の信頼性を有していると判断し,この8項目を用いて自尊感情得点とした。次に,教師評定の3つの項目それぞれにノミネートされた児童の自尊感情得点の平均値の差を求めた。結果,得点には有意な差が見られたため(F(2, 141)17.89, p<.001),Bonferroniの方法を用いて多重比較を行ったところ,すべての項目間において有意な差が確認された(表1)。以上の結果から,尺度の信頼性および妥当性の一部が確認された。
自尊感情(self-esteem)は人の成長や発達,心の健康や適応にとって枢要な心的特性と言われているが,一方で,高い自尊感情に見られる不適応的側面も確認されており,ただ高めれば良いという概念ではないことが指摘されている(中間,2016)。自尊感情研究では,Rosenbergの自尊感情尺度(以下,RSES)が広く使用されており(Schmitt & Allik, 2005),この尺度を用いることは世界レベルで同一基準の研究知見を比較できるというメリットがある。日本でもその成人翻訳版の開発は充実しているが,児童版に至っては妥当性を中心に不十分さが指摘される。また,児童に対しても大人版の尺度が使用されることがあるが,児童が概念を正確に把握できているのか,各項目に対する児童の理解度を検討・報告している論文は見られない。概念に対する正確な測定を行うためには,項目表現を児童の理解しやすいものへと改良する必要がある。本研究では,以上のような観点から,項目表現の修正を中心に児童用RSESの再作成を行い,教師評定を用いた妥当性の検討を行った。
方 法
調査対象および時期 小学校(2校)の4~6年生601名を対象に2016年2月に実施した。
自尊感情尺度 Rosenberg(1965)の原著の翻訳を行い,心理学を専門とする大学教員3名と博士課程の学生1名で文章表現の検討を行った。作成した尺度は,また,事前の児童を対象とした予備調査で各項目の文章表現への理解度や得点傾向を調査し,修正を行った。なお,本調査では同時に児童用紙筆版自尊感情潜在連合テストによる測定も行っているが,本抄録での紹介は割愛した。
教師評定 教師評定の項目は,防衛性を含まない本当の自尊感情の特徴を項目1に,防衛性を含む自尊感情の特徴を項目2に,低い自尊感情の特徴を項目3に設定した。具体的には,項目1は「自分に自信を持っている」「周りの子に対して競争意識が低く,張り合うことが少ない」,項目2は「自分に自信を持っている」「周りの子に対して競争意識が高く,張り合うことが多い」,項目3は「自分に自信がない」とした。また,評定方法は,評定基準に当てはまる児童を学級担任がクラスから複数名選出するノミネート形式を採用した。ノミネートは,項目ごとに2~3人ずつ選出を求めた。項目1および項目2にノミネートされた者は自尊感情得点が高く,項目3ノミネートされた者は自尊感情得点が低いと予想される。
欠損値のある者を除くと,ノミネートされた児童は144名で,評定者は21名であった。
結果と考察
自尊感情尺度の10項目に対して主因子法の因子分析を行った。固有値が1.0以上,因子負荷量が.45以上であることを基準に探索的因子分析を行ったところ,項目2と8を除外した単因子構造が妥当であると判断した。また,信頼性を検討するために,8項目に対してCronbachのα係数を算出したところ,α=.81を示したことから一定の信頼性を有していると判断し,この8項目を用いて自尊感情得点とした。次に,教師評定の3つの項目それぞれにノミネートされた児童の自尊感情得点の平均値の差を求めた。結果,得点には有意な差が見られたため(F(2, 141)17.89, p<.001),Bonferroniの方法を用いて多重比較を行ったところ,すべての項目間において有意な差が確認された(表1)。以上の結果から,尺度の信頼性および妥当性の一部が確認された。