[PF84] 遊びが児童の学級適応に与える影響
外的適応と内的適応に着目して
Keywords:遊び, プレイフルネス, 学級適応
問題と目的
近年,いじめや不登校,非行などの予防のため外的・内的学級適応に注目が集まっている(弓削,2013; 大久保,2015)。従来,遊びは協調性などの社会的能力,規範意識を育むとされており(倉智,1976; 白石,1988; 夏秋・有働,1997; 堀野・濱口・宮下,2000; 野間,2001),遊び仲間は,社会性を学ぶ際の動機づけやモデリングの対象として重要な役割をもっていると言われてきた(浜崎,1995)。一方,集団遊びにおける仲間関係は,児童の居場所感,安心感を高めるとされている(深谷,1976; 黒沢・有本・森,2003)。このように遊びは外的・内的学級適応を高めるとされてきた。しかし,これらを実証的に検討した研究は少ない。そこで,本研究では遊んでいる子ども自身が充分遊んでいると知覚している主観的量を測定するプレイフルネス尺度を使用し,遊びが学級適応に与える影響を実証的に検討することを目的とした。
方 法
調査協力者・調査時期 関東・近畿地方(1府3県)に存在する小学校10校(中核都市1校,衛星都市2校,都市と自然が混在した地域2校,自然豊かな地域5校)に在籍する5・6年生の児童889名を対象とし2015年10月に調査を行った。このうち記入ミスのなかった児童869名(5年生:男児192名,女児217名,6年生:男児233名,女児227名)を分析の対象とした。
調査項目 プレイフルネス尺度(木下,2015)17項目,外的適応尺度(学校生活適応尺度(田邊・織田,2001)と学校環境適応感尺度(船木・熊谷,2005)を参考に作成)12項目,内的適応尺度(江村・大久保,2012)12項目。全て4件法で評定を求めた。
結果と考察
プレイフルネス尺度,外的適応尺度,内的適応尺度について因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った(.35以下の負荷量を示した項目を除外)。固有値の減衰状況と解釈可能性に基づき,以下の結果を抽出した。プレイフルネス:遊び感情(6項目:遊んでいるとスカッとする),在来遊び(8項目:友達に相談する(相談にのる)),ゲーム遊び(3項目:ゲームで協力して遊ぶ)。α=.71~α=.78であった。外的適応:規範遵守(4項目:私は学校のきまりを守らなければならないと思っている),学業(4項目:私は勉強に積極的である),行事参加(3項目:私は学級活動や行事などに進んで参加している)。α=.77~α=.81であった。内的適応:居場所・充実感(8項目:このクラスにいると安心する),被信頼・受容感(4項目:このクラスでは先生や友だちから頼られている)。α=.88~α=.92であった。プレイフルネスが内的適応を媒介し外的適応に与える影響を検討するため共分散構造分析を行った(Figure 1)。その結果,在来遊びは行事に参加する態度を強くし,ゲーム遊びは勉強する態度や行事に参加する態度を弱めることが明らかになった。また,遊びの中で感じる感情は学級内での居場所・充実感や被信頼・受容感を高めることが示された。居場所・充実感や被信頼・受容感は規範を守る態度,勉強する態度や行事に参加する態度を強くすることが認められた。そのため,遊びの中で感じる感情は居場所・充実感や被信頼・受容感を媒介し規範を守る態度,勉強する態度や行事に参加する態度を強くすることが示唆された。この結果は従来言われていた在来遊びはポジティブな影響があり,ゲーム遊びはネガティブな影響があるという仮説を裏付けるものとなった。また,遊ぶこと自体よりも,遊びの中で感じる感情が外的適応・内的適応ともに重要であることが明らかになった。しかし,内的適応には遊び仲間との関係が関係していると思われることから,今後は遊び仲間を考慮した研究が必要であると考えられる。
近年,いじめや不登校,非行などの予防のため外的・内的学級適応に注目が集まっている(弓削,2013; 大久保,2015)。従来,遊びは協調性などの社会的能力,規範意識を育むとされており(倉智,1976; 白石,1988; 夏秋・有働,1997; 堀野・濱口・宮下,2000; 野間,2001),遊び仲間は,社会性を学ぶ際の動機づけやモデリングの対象として重要な役割をもっていると言われてきた(浜崎,1995)。一方,集団遊びにおける仲間関係は,児童の居場所感,安心感を高めるとされている(深谷,1976; 黒沢・有本・森,2003)。このように遊びは外的・内的学級適応を高めるとされてきた。しかし,これらを実証的に検討した研究は少ない。そこで,本研究では遊んでいる子ども自身が充分遊んでいると知覚している主観的量を測定するプレイフルネス尺度を使用し,遊びが学級適応に与える影響を実証的に検討することを目的とした。
方 法
調査協力者・調査時期 関東・近畿地方(1府3県)に存在する小学校10校(中核都市1校,衛星都市2校,都市と自然が混在した地域2校,自然豊かな地域5校)に在籍する5・6年生の児童889名を対象とし2015年10月に調査を行った。このうち記入ミスのなかった児童869名(5年生:男児192名,女児217名,6年生:男児233名,女児227名)を分析の対象とした。
調査項目 プレイフルネス尺度(木下,2015)17項目,外的適応尺度(学校生活適応尺度(田邊・織田,2001)と学校環境適応感尺度(船木・熊谷,2005)を参考に作成)12項目,内的適応尺度(江村・大久保,2012)12項目。全て4件法で評定を求めた。
結果と考察
プレイフルネス尺度,外的適応尺度,内的適応尺度について因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行った(.35以下の負荷量を示した項目を除外)。固有値の減衰状況と解釈可能性に基づき,以下の結果を抽出した。プレイフルネス:遊び感情(6項目:遊んでいるとスカッとする),在来遊び(8項目:友達に相談する(相談にのる)),ゲーム遊び(3項目:ゲームで協力して遊ぶ)。α=.71~α=.78であった。外的適応:規範遵守(4項目:私は学校のきまりを守らなければならないと思っている),学業(4項目:私は勉強に積極的である),行事参加(3項目:私は学級活動や行事などに進んで参加している)。α=.77~α=.81であった。内的適応:居場所・充実感(8項目:このクラスにいると安心する),被信頼・受容感(4項目:このクラスでは先生や友だちから頼られている)。α=.88~α=.92であった。プレイフルネスが内的適応を媒介し外的適応に与える影響を検討するため共分散構造分析を行った(Figure 1)。その結果,在来遊びは行事に参加する態度を強くし,ゲーム遊びは勉強する態度や行事に参加する態度を弱めることが明らかになった。また,遊びの中で感じる感情は学級内での居場所・充実感や被信頼・受容感を高めることが示された。居場所・充実感や被信頼・受容感は規範を守る態度,勉強する態度や行事に参加する態度を強くすることが認められた。そのため,遊びの中で感じる感情は居場所・充実感や被信頼・受容感を媒介し規範を守る態度,勉強する態度や行事に参加する態度を強くすることが示唆された。この結果は従来言われていた在来遊びはポジティブな影響があり,ゲーム遊びはネガティブな影響があるという仮説を裏付けるものとなった。また,遊ぶこと自体よりも,遊びの中で感じる感情が外的適応・内的適応ともに重要であることが明らかになった。しかし,内的適応には遊び仲間との関係が関係していると思われることから,今後は遊び仲間を考慮した研究が必要であると考えられる。