[PF87] 教師の指導態度が児童の学級適応に与える影響
学級雰囲気の違いに着目して
キーワード:指導態度, 学級適応, 学級雰囲気
問題と目的
昨今では,教師の威圧感や権威的な姿勢は社会的に容認されにくく,「先生のいうことをきくのは当たり前」という前提が崩れつつある(山田・林,2008)。このような社会情勢の中で,教師は学級運営に困難さを抱える場合が少なくない。
本研究では,威圧感や権威的な姿勢によらない指導の教育的効果について検討し,今後の学級運営の方向性を探ることを目的とした。具体的には,「説得的統制・自律促進」「親近・受容」「公正・客観」の3側面による指導を今日求められる教師像と規定し,この指導が児童の学級適応に与える影響を検討した。教師が児童に与える影響は,学級雰囲気の違いによって異なる可能性が考えられる。そこで,学級雰囲気をポジティブに認識している群とネガティブに認識している群との2群間において,その差異について検討した。
方 法
調査対象者
地方都市の公立小学校3校の5,6年生11学級の児童286名を調査対象とした。
調査時期及び調査手続き
2015年7月下旬から10月上旬に,担任教師により学級ごとに無記名の質問紙調査を実施した。
調査内容
以下の内容について全て4件法で回答を求めた。(1)児童が認知する教師の指導態度の測定:三島・宇野(2004)の教師認知尺度,遠山(2005)の教師の威厳ある指導態度尺度,河村(2013)の教育的相互作用の高い学級集団の発達過程における特徴的な教師の指導行動の研究から得られた知見を参考に作成した19項目。
(2)外的適応(児童が学校からの要請に応える態度)の測定:田邉・織田(2001)の学校生活尺度,船木・熊谷(2005)の学校環境適応感尺度から該当する質問項目を抜き出し作成した12項目。
(3)内的適応の測定:江村・大久保(2012)の小学生用学級適応感尺度の12項目。
(4)学級雰囲気の測定:日景・石田(2012)の学級雰囲気尺度の11項目。
結果と考察
まず,学級雰囲気尺度で得られた2因子に対してクラスタ分析を行い,学級雰囲気ポジティブ群(n=160),ネガティブ群(n=126)に分けた。その後,2群間に影響の違いがみられるかを,多母集団同時分析によって検討した(Figure1,GFI=.974,AGFI=.907,CFI=.986,RMSEA=.044)。
分析の結果,(1)児童が学級雰囲気をポジティブに認識している場合は,「公正・客観」の指導が,児童の規則を守る態度と学校行事への積極性を促進する影響を与えていた。(2)児童が学級雰囲気をネガティブに認識している場合は,「説得的統制・自律促進」の指導が,児童の規則を守る態度を促進する影響を与えていた。児童の規則を守る態度は,児童の学習に取り組む態度や学校行事への積極性を促進していた。(3)児童が学級雰囲気をポジティブに認識している場合は,「親近・受容」の指導と児童の学校行事への積極性が,内的適応を促進する影響を与えていた。児童が学級雰囲気をネガティブに認識している場合は,「親近・受容」と「公正・客観」の指導が,内的適応を促進させていた。
以上のことから,威圧感や権威的な姿勢によらず指導を行う場合,内的適応を向上させる効果を示す「親近・受容」の指導と併せ,外的適応を向上させる指導を行うことで児童の学級適応を促進し,学級運営を円滑に行える可能性が示唆された。具体的には,学級雰囲気が良好である場合は,「公正・客観」の指導が児童の外的適応を促進する一方で,「説得的統制・自律促進」の指導は児童の行事参加を抑制することが示された。学級雰囲気がネガティブに認識され,学級崩壊が懸念される状況では,教師が児童に対して規則を守るよう促す指導を重点的に行うことにより,児童が学校側の要請に応える態度を向上させることが示唆された。
昨今では,教師の威圧感や権威的な姿勢は社会的に容認されにくく,「先生のいうことをきくのは当たり前」という前提が崩れつつある(山田・林,2008)。このような社会情勢の中で,教師は学級運営に困難さを抱える場合が少なくない。
本研究では,威圧感や権威的な姿勢によらない指導の教育的効果について検討し,今後の学級運営の方向性を探ることを目的とした。具体的には,「説得的統制・自律促進」「親近・受容」「公正・客観」の3側面による指導を今日求められる教師像と規定し,この指導が児童の学級適応に与える影響を検討した。教師が児童に与える影響は,学級雰囲気の違いによって異なる可能性が考えられる。そこで,学級雰囲気をポジティブに認識している群とネガティブに認識している群との2群間において,その差異について検討した。
方 法
調査対象者
地方都市の公立小学校3校の5,6年生11学級の児童286名を調査対象とした。
調査時期及び調査手続き
2015年7月下旬から10月上旬に,担任教師により学級ごとに無記名の質問紙調査を実施した。
調査内容
以下の内容について全て4件法で回答を求めた。(1)児童が認知する教師の指導態度の測定:三島・宇野(2004)の教師認知尺度,遠山(2005)の教師の威厳ある指導態度尺度,河村(2013)の教育的相互作用の高い学級集団の発達過程における特徴的な教師の指導行動の研究から得られた知見を参考に作成した19項目。
(2)外的適応(児童が学校からの要請に応える態度)の測定:田邉・織田(2001)の学校生活尺度,船木・熊谷(2005)の学校環境適応感尺度から該当する質問項目を抜き出し作成した12項目。
(3)内的適応の測定:江村・大久保(2012)の小学生用学級適応感尺度の12項目。
(4)学級雰囲気の測定:日景・石田(2012)の学級雰囲気尺度の11項目。
結果と考察
まず,学級雰囲気尺度で得られた2因子に対してクラスタ分析を行い,学級雰囲気ポジティブ群(n=160),ネガティブ群(n=126)に分けた。その後,2群間に影響の違いがみられるかを,多母集団同時分析によって検討した(Figure1,GFI=.974,AGFI=.907,CFI=.986,RMSEA=.044)。
分析の結果,(1)児童が学級雰囲気をポジティブに認識している場合は,「公正・客観」の指導が,児童の規則を守る態度と学校行事への積極性を促進する影響を与えていた。(2)児童が学級雰囲気をネガティブに認識している場合は,「説得的統制・自律促進」の指導が,児童の規則を守る態度を促進する影響を与えていた。児童の規則を守る態度は,児童の学習に取り組む態度や学校行事への積極性を促進していた。(3)児童が学級雰囲気をポジティブに認識している場合は,「親近・受容」の指導と児童の学校行事への積極性が,内的適応を促進する影響を与えていた。児童が学級雰囲気をネガティブに認識している場合は,「親近・受容」と「公正・客観」の指導が,内的適応を促進させていた。
以上のことから,威圧感や権威的な姿勢によらず指導を行う場合,内的適応を向上させる効果を示す「親近・受容」の指導と併せ,外的適応を向上させる指導を行うことで児童の学級適応を促進し,学級運営を円滑に行える可能性が示唆された。具体的には,学級雰囲気が良好である場合は,「公正・客観」の指導が児童の外的適応を促進する一方で,「説得的統制・自律促進」の指導は児童の行事参加を抑制することが示された。学級雰囲気がネガティブに認識され,学級崩壊が懸念される状況では,教師が児童に対して規則を守るよう促す指導を重点的に行うことにより,児童が学校側の要請に応える態度を向上させることが示唆された。