日本教育心理学会第58回総会

講演情報

ポスター発表 PF(65-90)

ポスター発表 PF(65-90)

2016年10月9日(日) 16:00 〜 18:00 市民ギャラリー (1階市民ギャラリー)

[PF89] 新入学生の自己管理能力と修学適応リスクとの関連

蔵本信比古 (北海道情報大学)

キーワード:修学適応リスク, 自己管理能力

目   的
 大学のユニバーサル化の中で,大学にはこれまで以上に多様な学生が入学してきている。これに伴い,新たな修学適応上のリスクを抱える学生も増えつつある。このため,入学後できるだけ早期から修学指導を開始することが求められるが,それには新入学生の修学適応を支える自己管理能力を把握することが欠かせない。しかしながら,現在までのところこれを把握する適切な尺度等は得られていない。このため本研究では,新入学生の自己管理能力に関する尺度を作成し,修学適応リスクとの関連を検討することを目的とする。
方   法
尺度および調査票の作成
 予備的調査(蔵本,2015)をもとに,a)睡眠・起床・就寝,b)時間管理,c)友人関係,d)生活規律,e)登校・出席,f)大学適応の6つの下位尺度,各5項目,計30項目からなる自己管理能力尺度を作成した。評定は5件法(大きいほど傾向が強い)とし,各下位尺度得点および全体得点(以下,「自己管理得点」という。)を算出した。
対象者,実施時期等
 2015年度入学の新1年生を対象に同年4~5月の授業時間内に実施し,262名から回答を得た(男225名,女37名;平均年齢19.1歳,SD 0.55)。
修学適応リスク
 本学には,学生相談室やクラス担任とは別に,学生からの何でも相談や欠席学生への出席督励等を行う「ふらっとルーム」が設置されており,ここでの取り扱いの有無を修学適応リスクの指標とした。入学後から1年次終了までの間に,そこでの相談,出席督励等の関与があった修学適応リスク「有」の学生は47名(17.9%)であった。
結   果
修学適応リスクと自己管理得点との関連
 修学適応リスクの有無により2群に分け,t検定により自己管理得点の平均を比較したところ,Table 1のとおり合計得点,下位尺度得点のいずれにも有意な違いが見られた。
自己管理得点の修学適応リスクへの寄与
 自己管理得点を説明変数,修学適応リスクを目的変数として重回帰分析を行ったところ,「登校出席」の寄与が有意(β =.240, p<.01)であったが,他の下位尺度の寄与は認められなかった。
ハイリスク学生の抽出
 「ふらっとルーム」対象学生を自己管理得点の中央値(114点)により修学指導上のハイリスク学生として抽出した。Table 2のとおり修学適応リスクのある学生47名のうち,35名(74.5%)が抽出された(χ(1)=14.59, p<.01)。
考   察
 入学後ほぼ1ヶ月時点で得られた自己管理合計得点により,その後の修学適応のハイリスク学生を高い割合で見出すことができた。修学適応リスクを抱える学生をあらかじめ抽出することで,早期から効果的に修学指導を開始することが期待される。