[PF90] AIミニインタビューにおける実習の振り返りに関する分析
テキストマイニングによる可視化について
キーワード:AIミニインタビュー, テキストマイニング, 振り返り
問 題
保育者養成における実習での学生の学びは,保育現場にて,これまでの学習を有機的に繋げながら総合的な実践力を身につけていく大きな意義がある。保育の場で体験したことを振り返り,解釈し,評価・反省をして,自らの課題を発見し,保育をする力量の向上を図ることは,育ちや保育実践にとっても必要だが,その力は一日で身につかない。そのため,事後指導において,実習中のエピソードを想起しやすく,メンバー間で共有することで,当事者として多くの保育経験について振り返り,考える機会をもつことが,力量を伸ばすため必要であろう。筆者らは,保育者養成課程の授業や実習指導において,ワールド・カフェを用いた実践をおこない,一定の有効性を確認してきている(三浦,2011;上村ら,2010,2011;利根川ら,2011;音山ら,2012)。カフェは,少数のグループで対話を行うことにより,リラックスした雰囲気の中での学びあいが行われる。一方,集団で会話をすることから,一人ひとりの参加者の会話を十分に引き出されにくくなるため,自分の体験を語り,他者の体験を聞きながらも,一人ひとりの学びにつながっていかない可能性もある。そこで,特徴的なインタビュー(以下,AIミニ・インタビュー)を実施して,学生相互の実習中に体験したエピソードをインタビューし合うことで,保育実習中のエピソードを用いた振り返りを行った。
方 法
1)対象 A大学の保育実習を全て終えた3年生149名の参加者を対象とした。この内,分析対象は,141名であった。2)手続き ①AIミニインタビューの実施時期 実習を振り返るカフェを体験し,その後,実習中の事例検討,自己評価,教員との個別面談などを終え,AIミニインタビューに参加した。②実施方法 2人1組にて,「実習において最もわくわくした出来事」を相互にインタビューした。インタビューから語られた内容をストーリー化してまとめた。その後,2人組が3~4組集まった8人程度のグループにて,2人組の相手のストーリーを発表し共有した。そして,グループ内で共通するキーワードを発見する話し合いを行い,全体発表での共有を行った。
結 果
本研究では,分析に際して,KH Coder ver.2を用いた。「実習において最もわくわくした出来事」として,AIミニインタビューによる振り返りを行い,分析を行った。有効回答者数141名(94.6%)であり,記述を読み,頻出語を確認したうえで,語の共起関係を探った。
KH Coderにて前処理を実行し,文書の単純集計を行った結果,277の段落,582の文が確認された。また,総抽出語数は4800,異なり語数825であった。そして,その内使用語は,総抽出語数2074,異なり語数648,出現回数の平均は3.20(SD9.30)が抽出された。頻出語の上位では,「子ども」「保育」「大切」「先生」「遊び」「見る」「実習」などが示された。また,抽出された語の共起の程度が強い語を線で結んだネットワークを描いた。その結果,8つのコミュニティが示された(fig. 1)。分析にあたり,出現数による語の取捨選択を最小出現数5に設定し,描画する共起関係の絞り込みを描画数60に設定した。これにより共起ネットワークが描かれ,学生の記述に関してその全体的傾向が示された。
考 察
これらの結果より,学習に前向きな「気づく」「理解」「学ぶ」「知る」などのキーワードが示された。これらは,「展開=合わせる=発達=理解」「気づく=障害=理解」「好き=知る=興味」「大事=学ぶ=見守る=介入」といった語と共起関係が結ばれており,例えば,「子どもの発達に合わせた遊びの展開は?」といった質問をインタビューにおいて行う事で,より学習の志向性を意図した振り返りが深まることとなると考える。
*本研究はJSPS科研費(16K00740)の助成を受けた。
保育者養成における実習での学生の学びは,保育現場にて,これまでの学習を有機的に繋げながら総合的な実践力を身につけていく大きな意義がある。保育の場で体験したことを振り返り,解釈し,評価・反省をして,自らの課題を発見し,保育をする力量の向上を図ることは,育ちや保育実践にとっても必要だが,その力は一日で身につかない。そのため,事後指導において,実習中のエピソードを想起しやすく,メンバー間で共有することで,当事者として多くの保育経験について振り返り,考える機会をもつことが,力量を伸ばすため必要であろう。筆者らは,保育者養成課程の授業や実習指導において,ワールド・カフェを用いた実践をおこない,一定の有効性を確認してきている(三浦,2011;上村ら,2010,2011;利根川ら,2011;音山ら,2012)。カフェは,少数のグループで対話を行うことにより,リラックスした雰囲気の中での学びあいが行われる。一方,集団で会話をすることから,一人ひとりの参加者の会話を十分に引き出されにくくなるため,自分の体験を語り,他者の体験を聞きながらも,一人ひとりの学びにつながっていかない可能性もある。そこで,特徴的なインタビュー(以下,AIミニ・インタビュー)を実施して,学生相互の実習中に体験したエピソードをインタビューし合うことで,保育実習中のエピソードを用いた振り返りを行った。
方 法
1)対象 A大学の保育実習を全て終えた3年生149名の参加者を対象とした。この内,分析対象は,141名であった。2)手続き ①AIミニインタビューの実施時期 実習を振り返るカフェを体験し,その後,実習中の事例検討,自己評価,教員との個別面談などを終え,AIミニインタビューに参加した。②実施方法 2人1組にて,「実習において最もわくわくした出来事」を相互にインタビューした。インタビューから語られた内容をストーリー化してまとめた。その後,2人組が3~4組集まった8人程度のグループにて,2人組の相手のストーリーを発表し共有した。そして,グループ内で共通するキーワードを発見する話し合いを行い,全体発表での共有を行った。
結 果
本研究では,分析に際して,KH Coder ver.2を用いた。「実習において最もわくわくした出来事」として,AIミニインタビューによる振り返りを行い,分析を行った。有効回答者数141名(94.6%)であり,記述を読み,頻出語を確認したうえで,語の共起関係を探った。
KH Coderにて前処理を実行し,文書の単純集計を行った結果,277の段落,582の文が確認された。また,総抽出語数は4800,異なり語数825であった。そして,その内使用語は,総抽出語数2074,異なり語数648,出現回数の平均は3.20(SD9.30)が抽出された。頻出語の上位では,「子ども」「保育」「大切」「先生」「遊び」「見る」「実習」などが示された。また,抽出された語の共起の程度が強い語を線で結んだネットワークを描いた。その結果,8つのコミュニティが示された(fig. 1)。分析にあたり,出現数による語の取捨選択を最小出現数5に設定し,描画する共起関係の絞り込みを描画数60に設定した。これにより共起ネットワークが描かれ,学生の記述に関してその全体的傾向が示された。
考 察
これらの結果より,学習に前向きな「気づく」「理解」「学ぶ」「知る」などのキーワードが示された。これらは,「展開=合わせる=発達=理解」「気づく=障害=理解」「好き=知る=興味」「大事=学ぶ=見守る=介入」といった語と共起関係が結ばれており,例えば,「子どもの発達に合わせた遊びの展開は?」といった質問をインタビューにおいて行う事で,より学習の志向性を意図した振り返りが深まることとなると考える。
*本研究はJSPS科研費(16K00740)の助成を受けた。