[PG06] 保育カンファレンスにおける保育者の語りのプロセス
Keywords:保育カンファレンス, 保育者の専門性, 省察
問 題
保育者の専門性を高めるためには,保育実践を振り返る省察が重要視されている。秋田(2013)によれば,個人の専門性向上はもちろんだが,それ以上に相互に補って園の特性を生かして保育を行っていくチームとしての専門性が求められている。チームで専門性を高める場の一つとして保育カンファレンスがある。
保育カンファレンスでは,保育者は自らの保育を他者に向けて語ることが求められる(吉村・吉岡,2008)。また,保育カンファレンスでの語りは,保育者自身が自分の問題に気づいたり,自分の考えを再構築したりするなど省察に有効である(木全,2008:中坪,2013)。しかし,保育カンファレンスで交わされる保育者同士の語りにより,どのような省察が行われているのか,語りのプロセスを明らかにした研究はなされていない。
そこで本研究では,保育カンファレンスで保育者は,保育について語り合う中で,どのような省察を行っているのか,省察の基盤である保育カンファレンスで交わされる語りのプロセスを探索的に検討することを目的とする。
方 法
保育カンファレンス 秋田ら(2010)の「子どもの経験から振り返る保育プロセス」(以下日本版SICS)
参加者 A幼稚園保育者8~10名
実施期間 2015年10月から2016年5月までの計7回実施。
手続き 午前中筆者が撮影した子どもの様子について,日本版SICSを参考に作成したFormA,FormBを使用し,午後保育カンファレンス(約1時間)を行った。
分析方法 保育カンファレンスを逐語化し,当該の逐語録を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下M-GTAと記す)により分析を行った。M-GTAの分析手順に沿って分析ワークシートを作成した。
結果及び考察
M-GTAによる分析の結果,17の概念と9のカテゴリーが抽出された。保育カンファレンスにおける,保育者の語りのプロセスをFigure 1に示した。
(1)保育カンファレンスにおける保育者の語りのプロセス
全体のプロセスを,概念やカテゴリーを用いて説明する。保育カンファレンスで保育者は,【子どもの思いを推察】したり,【保育を考察】したりしながら,《保育の捉え》をしている。時には,《保育者の葛藤》がありながらも,《多様な視点からの子ども理解》や《子どもへの共感》を行っている。子どもに対する理解を深める中,今日の保育を振り返り,《明日からの保育につなげる提案》や,《保育の再構築》を行っている。
(2)保育カンファレンスでの語りと省察の不可分の関係
保育カンファレンスでの語りは,保育者の省察を促していることがプロセス図により示された。他の保育者との語り合いにより,今まで持っていなかった保育を見取る新たな視点を獲得していた。新たな《見取る視点の獲得》により,自分の保育を見直し,自らの保育の枠組みや,枠組みの多様さに気づくことで,《保育の再構築》を行うことができる。また,新たな《見取る視点の獲得》により生まれた気づきは,具体的な保育の提言にもつながる。これらのことから,保育カンファレンスでの語りと省察が不可分であることが,プロセス図により改めて示されたと言える。
(3)保育を省察する思考のスタイルの必要性
《保育の再構築》が困難となる《枠組みをはめた子ども理解》や,《保育考察の固定化》も見出された。それぞれの経験知を基にした保育カンファレンスは,学習として機能する一方で,保育者の振り返りや新たな気づきが生まれにくい状況となる可能性もある。そこで,保育カンファレンスにおいて《保育の再構築》を行うために,保育者自身が保育を省察する思考のスタイルを身に付ける必要性がある。省察の思考のスタイルを身に付けるために,保育カンファレンスにおける語りのプロセスを示すことは有効だと考える。
保育者の専門性を高めるためには,保育実践を振り返る省察が重要視されている。秋田(2013)によれば,個人の専門性向上はもちろんだが,それ以上に相互に補って園の特性を生かして保育を行っていくチームとしての専門性が求められている。チームで専門性を高める場の一つとして保育カンファレンスがある。
保育カンファレンスでは,保育者は自らの保育を他者に向けて語ることが求められる(吉村・吉岡,2008)。また,保育カンファレンスでの語りは,保育者自身が自分の問題に気づいたり,自分の考えを再構築したりするなど省察に有効である(木全,2008:中坪,2013)。しかし,保育カンファレンスで交わされる保育者同士の語りにより,どのような省察が行われているのか,語りのプロセスを明らかにした研究はなされていない。
そこで本研究では,保育カンファレンスで保育者は,保育について語り合う中で,どのような省察を行っているのか,省察の基盤である保育カンファレンスで交わされる語りのプロセスを探索的に検討することを目的とする。
方 法
保育カンファレンス 秋田ら(2010)の「子どもの経験から振り返る保育プロセス」(以下日本版SICS)
参加者 A幼稚園保育者8~10名
実施期間 2015年10月から2016年5月までの計7回実施。
手続き 午前中筆者が撮影した子どもの様子について,日本版SICSを参考に作成したFormA,FormBを使用し,午後保育カンファレンス(約1時間)を行った。
分析方法 保育カンファレンスを逐語化し,当該の逐語録を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(以下M-GTAと記す)により分析を行った。M-GTAの分析手順に沿って分析ワークシートを作成した。
結果及び考察
M-GTAによる分析の結果,17の概念と9のカテゴリーが抽出された。保育カンファレンスにおける,保育者の語りのプロセスをFigure 1に示した。
(1)保育カンファレンスにおける保育者の語りのプロセス
全体のプロセスを,概念やカテゴリーを用いて説明する。保育カンファレンスで保育者は,【子どもの思いを推察】したり,【保育を考察】したりしながら,《保育の捉え》をしている。時には,《保育者の葛藤》がありながらも,《多様な視点からの子ども理解》や《子どもへの共感》を行っている。子どもに対する理解を深める中,今日の保育を振り返り,《明日からの保育につなげる提案》や,《保育の再構築》を行っている。
(2)保育カンファレンスでの語りと省察の不可分の関係
保育カンファレンスでの語りは,保育者の省察を促していることがプロセス図により示された。他の保育者との語り合いにより,今まで持っていなかった保育を見取る新たな視点を獲得していた。新たな《見取る視点の獲得》により,自分の保育を見直し,自らの保育の枠組みや,枠組みの多様さに気づくことで,《保育の再構築》を行うことができる。また,新たな《見取る視点の獲得》により生まれた気づきは,具体的な保育の提言にもつながる。これらのことから,保育カンファレンスでの語りと省察が不可分であることが,プロセス図により改めて示されたと言える。
(3)保育を省察する思考のスタイルの必要性
《保育の再構築》が困難となる《枠組みをはめた子ども理解》や,《保育考察の固定化》も見出された。それぞれの経験知を基にした保育カンファレンスは,学習として機能する一方で,保育者の振り返りや新たな気づきが生まれにくい状況となる可能性もある。そこで,保育カンファレンスにおいて《保育の再構築》を行うために,保育者自身が保育を省察する思考のスタイルを身に付ける必要性がある。省察の思考のスタイルを身に付けるために,保育カンファレンスにおける語りのプロセスを示すことは有効だと考える。